Home|
モーリス・ジャンドロン(Maurice Gendron)|シューマン:3つのロマンス, Op.94(Schumann:Drei Romanzen. Op.94)
シューマン:3つのロマンス, Op.94(Schumann:Drei Romanzen. Op.94)
(Cello)モーリス・ジャンドロン (P)ジャン・フランセ 1952年8月18日録音(Maurice Gendron:(P)Jean Francaix Recorded on August 18, 1952)
Schumann:Drei Romanzen. Op.94 [1.Nicht schnell
Schumann:Drei Romanzen. Op.94 [2.Einfach, innig]
Schumann:Drei Romanzen. Op.94 [3.Nicht schnell]
似通ったロマンスでありながら、その音楽がまとっている情緒には大きな違いがある
「3つのロマンス 作品94」は本来はオーボエとピアノのための作品なのですが、ヴァイオリン、クラリネットなどでも演奏できるように書かれています。そして、時にはチェロで演奏されることもあります。しかし、誰もが指摘するように、第3曲冒頭のピアノとオーボエのユニゾン等を聞けば、やはりオーボエが最適だろうと言われます。
そりゃぁ、そうでしょ、作曲家が「ピアノ伴奏によるオーボエのための3つのロマンス」としているのですから、ヴァイオリンやチェロ、クラリネットで演奏しても差がなければ「オーボエ」と指定するはずはないのです。
この作品の特徴は3曲とも形式や構造などが似通ったロマンスでありながら、その音楽がまとっている情緒には大きな違いがあることです。
第1曲の「速くなく"Nicht schnel"」ではマイナーとメジャーの間をたゆたうような、明暗の入り交じった雰囲気が非常に魅力的です。
第2曲の「素朴に、心より"Einfach, innig"」ではオー麻植がその持ち味を生かした歌が切れ目なく紡がれていきます。しかし、その間にいささか素朴ではない嬰ヘ短調の音楽が挟み込まれて一種不思議な雰囲気を醸し出します。
そして最後の3曲目「速くなく"Nicht schnell"」ではテンポの揺れが大きくて、走り出すのを必死に引き留めようとするのですがどこか不思議な気まぐれさが漂う音楽になっています。ある意味ではどこかラプソディ風の音楽とも言えそうです。
美しい旋律を何処までも流麗に歌い上げていく
「フランス・チェロ界の至宝」などと言われるわりには、そのディスコ・グラフィを眺めてみると録音には恵まれていないことに気づかざるを得ません。それは、彼よりは一世代前になるピエール・フルニエなどと比較してみればその違いは一目瞭然です。
そして、そこには第2次大戦の影が色濃く落ちていることに気づかされます。
ジャンドロンは貧しい家庭に生まれました。
音楽を志すものにとっては「貧しい」というのは大きなハンデとならざるを得ないのですが、彼には天賦の才があったようでわずか3歳で楽譜が読めるようになったという逸話が残っています。
そして、彼の転機となったのがフォイアマンの演奏会に連れて行ってもらったことでした。彼はその演奏に大きな感動を覚え、自らもチェリストの道を志すことになるのです。
しかし、そのフォイアマンから弟子入りをすすめられても経済的理由で渡米することはかなわず、辛うじて入学できた地元のニース音楽院でも暖房も入らない部屋で生活を続ける必要がありました。
そして、戦争中はレジスタンス活動に加わって収容所送りになりそうになりながらも己の意志を貫き通し、漸く戦争が終わってから演奏活動を行うことが出来るようになり成功をおさめるようになっていきました。
そして、その活動の中でカザルスと出会ったことが彼の2度めの転機となりました。
つまり、ジャンドロンは音楽家となる人にしては珍しいほどの貧しさの中で学び、音楽的にはフォイアマンやカザルスの影響を強く受けているのです。その経歴はフランスの正統派から見ればかなりの変わり種と言わざるを得ません。
そして、戦前においてすでにチェリストとしての地位を確立していて、戦争下においてもパリを中心に演奏活動を続けることが出来たフルニエと較べればその違いは大きかったと言わざるを得ないのです。
さらに言えば、同じフランス人チェリストとして二人の芸風にはかぶるところが大きかったこともジャンドロンにとっては不幸だったのかもしれません。
何しろ、フルニエはその優雅で洗練された演奏によって「チェロの貴公子」と呼ばれていたのです。
そして、ジャンドロンもまた明るく豊かな音色としなやかなフレージングによって「チェロの貴公子」と呼ばれるのですが、やはり分が悪いことは否めませんでした。
しかし、チェロを歌わせることに関しては特別な才能を持っていたようで、それがこういう深い幻想性を持った作品になるとフルニエにはない強みとなっているように思われるのです。
ジャンドロンのチェロはロストロポーヴィッチやシュタルケルのような豪快さはありません。
そういうヴィルトゥオーソ系の演奏にありがちな力ずくの強引さとは距離を置いて、常にある種の余裕としなやかさを保持しながら、作品に内在する感情の動きに会わせて音楽が紡がれていきます。
音を途切れさせることなく、美しい旋律を何処までも流麗に歌い上げていくスタイルはジャンドロンならではの音楽だと言えます。
それから、ピアニストのジャン・フランセの本業は作曲家でした。ですから、彼もまたジャンドロンのスタイルに寄りそい、シューマンの音楽の持つ幻想性に深みを加えています。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
5265 Rating: 4.7/10 (71 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)