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モーツァルト:木管楽器のための協奏交響曲 変ホ長調K.297b(Anh.C14.01)

ヘンリー・スウォボダ指揮 ウィーン国立歌劇場室内管弦楽団 ウィーン・フィルハーモニー木管グループ 1949年録音



Mozart:Sinfonia concertante in E-flat major, K.297b/Anh.C 14.01 [1.Allegro]

Mozart:Sinfonia concertante in E-flat major, K.297b/Anh.C 14.01 [2.Adagio]

Mozart:Sinfonia concertante in E-flat major, K.297b/Anh.C 14.01 [3.Andante con Variazioni]


失われた作品

この作品はモーツァルトが母を伴って12年ぶりにパリを訪れたときに作曲されたことは、彼の手紙から明らかです。そこで、彼は「フルートのヴェンドリング、オーボエのラム、ヴァルトホルンのプント、ファゴットのリッターのためにサンフォニー・コンセルタント(協奏交響曲)を1曲作曲しようとしている」と伝えているからです。
作曲を依頼したのは パリのコンセール・スピリチュエルの監督ル・グロという人物です。

しかし、何かの手違いがあったのか、その作品が演奏される予定の演奏会に譜面が届かず演奏されませんでした。
モーツァルトは、それは依頼者の陰謀であり、彼がその素晴らしい作品を独占しようとしたためだと怒りをぶちまけていますが、真相は謎です。

しかし、ザルツブルグに帰郷してから彼はその作品をもう一度思い出して書き起こそうとしたようなのですが、結果として多忙のために放棄されました。
つまり、この「管楽器のための協奏交響曲」は作曲されたことは間違いないものの失われた作品となっていたのです。

ところが、20世紀初頭に、モーツァルトの伝記を書き残したオットー・ヤーンの遺品からこの作品の写譜が発見されたのです。そして、モーツァルトが手紙の中で示唆した楽器編成とは異なる(オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット)ものの、失われた作品と推定され、旧全集でに収録されました。
しかしながら、その後の研究によってその写譜はモーツァルトの真作ではなく、他人の手が加えられているもの(改作)であることが判明してきました。つまりは「偽作」に分類されたのです。
もちろん、今でもこれを真作とする学者も少なくないのですが、とにかく「オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット」ではなくて、「フルート、クラリネット、ホルン、ファゴット」という編成の楽譜が発見されない限り決定的なことは言えないと言うことです。

とは言え、多くの部分にモーツァルトの息吹が感じられることは事実なので、現在も統計的手法などを使って作品を復元しようとする動き(ロバート・レヴィン版)があります。
もちろん、この「改作(もちろん真作の可能性も捨てきれない)」された作品であっても美しいですし、十分にモーツァルトを感じ取れる音楽なので、私などはそれで十分だともうのですが、いかがなものでしょうか。、


気心の知れた者同士の見事なアンサンブル

こういう録音を今まで見落としてきたとは、不覚としか言いようがありません。それほどに、これは魅力的でもあり、面白い演奏です。
まず、注目すべきは、ともにソリストの魅力が存分に発揮されてると言うことです。

ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲はワルター・バリリとパウル・ドクトールがつとめています。バリリは言うまでもなくウィーン、フィルのコンサート・マスターです。
この演奏の主導権はそのバリリが全て握っていて、オーケストラのメンバーも気心の知れた相手なのですから、実に息のあった、そしてバリリの持つ魅力が存分に発揮されています。

面白いのは、ヴィオラにパウル・ドクトールが起用されていることです。
最初は彼もウィーン・フィルのヴィオラ奏者だろうと思ったのですが、調べてみるとオーストリア生まれであるものの活動の拠点はアメリカです。しかし、彼の父親はブッシュ四重奏団のメンバーであり、その父に音楽の手ほどきを受け、ウィーン音楽院を卒業したのですから、音楽的にはこの集団の中に入ってもなんの違和感もなかったことでしょう。

そして、指揮者のフェリックス・プロハスカはウィーン・フォルクスオーパーの指揮者をしていた人物ですから、彼ももしかしたら国立歌劇場の指揮台に立つことがあったのかもしれません。実に気心の知れた雰囲気で、彼らの音楽を邪魔することなく上手くサポートに徹しています。

同じように、管楽器のための協奏交響曲もソリストはウィーン・フィルハーモニー木管グループですから、事情は全く同じで、ウィーンフィルが誇る管楽器奏者の実力と魅力を遺憾なく発揮しています。
そして、指揮者は合わせものが上手いヘンリー・スウォボダなのですから、彼もまた表にしゃしゃり出来ることはなく、ソリストの持ち味を引き出すためのサポート徹しています。

そして、同じウィーンのオケでも指揮者がベームだとこういうふうにはならないことにあらためて気づかされます。指揮者の力が強すぎるのです。
もちろん、それはそれで魅力はあるのですが、どちらが好きかと聞かれれば、今の私なら躊躇うことなくこの古い録音を選びます。

と言うことは、ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲の刷り込みがセル&クリーブランド管による録音だった私も、次第に過去のものになりつつあると言うことなのかもしれません。

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