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Home|シューリヒト(Carl Schuricht)|ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, Op.73

ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, Op.73

カール・シューリヒト指揮:ウィーン・フィルハーモニ管弦楽団 1953年6月4日~7日録音



Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [1.Allegro non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [2.Adagio non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [3.Allegretto grazioso (quasi andantino)]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [4.Allegro con spirito]


ブラームスの「田園交響曲」

ブラームスが最初の交響曲を作曲するのに20年以上も時間を費やしたのは有名な話ですが、それに続く第2番の交響曲はその一年後、実質的には3ヶ月あまりで完成したと言われています。ブラームスにとってベートーベンの影がいかに大きかったかをこれまた物語るエピソードです。

第2番はブラームスの「田園交響曲」と呼ばれることもあります。それは明るいのびやかな雰囲気がベートーベンの6番を思わせるものがあるかです。

ただ、この作品はこれ単独で聞くとあまり違和感を感じないでのですが、同時代の他の作品と聞き比べるとかなり古めかしい装いをまとっています。この10年後にはマーラーが登場して第1番の交響曲を発表することを考えると、ブラームスの古典派回帰の思いが伝わってきます。
オケの編成を見ても昔ながらの二管編成ですから、マーラーとの隔絶ぶりはハッキリしています。
とは言え、最終楽章の圧倒的なフィナーレを聞くと、ちらりと後期ロマン派の顔がのぞいているように思うのは私だけでしょうか。


  1. 第1楽章 Allegro non troppo:冒頭に低弦が奏する音型が全曲を統一する基本動機となっている。静かに消えゆくコーダは「沈みゆく太陽が崇高でしかも真剣な光を投げかける楽しい風景」と表現されることもあります。

  2. 第2楽章 Adagio non troppo - L'istesso tempo,ma grazioso:冒頭の物憂げなチェロの歌がこの楽章を特徴づけています。

  3. 第3楽章 Allegretto grazioso (Quasi andantino) - Presto ma non assai - Tempo I:間奏曲とスケルツォが合体したような構成になっています。

  4. 第4楽章 Allegro con spirito:驀進するコーダに向けて音楽が盛り上がっていきます。もうブラームスを退屈男とは言わせない!と言う雰囲気です。




ブラームスと共鳴する何か

シューリヒトという指揮者はベートーベンであれ何であれ、己の理性というか知性というか、そう言うものの中に取り込んで、その枠の中からはみ出すことなくスッキリと仕上げてしまうと言う印象があります。
それは、シューマンやブルックナーのような癖の強い作品であっても事情は変わりません。
それ故に「偉大な解釈者」と評価され、「作曲家の作品に対して完全に一歩下がった芸術的な謙虚さ」をもった指揮者だと褒め讃えられてきたのです。そして、その事を私は彼の芸術が持っている「軽み」と表現しました。暑苦しさとは一切無縁のスッキリとした彼の表現を好む人は少なくあありません。

ところが、不思議なことに、彼のブラームスの録音を聞いていると、なんだか常とは違うものを感じてしまうのです。
それは、いつもは作品を完璧に解釈してその枠の中でスッキリと構成している彼が、ブラームスの場合はそう言う理性の中に己を押し留めることが耐えかねるようなのです。
結果として、その理性の奥に秘めている主情性のようなものがあちこちでこぼれ出すような雰囲気があるのです。

それは、彼のブラームス録音の中でももっとも有名なコンサートホールでの4番の録音でも感じました。(バイエルン放送交響楽団 1961年9月録音)
シューリヒトにしてみれば最晩年の録音にあたると思うのですが、そこには指揮者としての衰えを指摘されながらも、それでも最後まで戦い続ける「老いたるチャンピオン」の覇気を感じました。

そうして考えてみれば、ブラームスというのは内に強烈なロマン主義的感情を持ちながらも、それを古典派の正統的スタイルの中に押し留めようとした人でした。
そして、その姿勢は、ブラームスとシューリヒトの間に、作曲家と演奏家という違いはあってもどこか互いに共鳴するものがあったのかもしれません。
そして、そう言う共鳴する部分が二人の中で重なり合うような場面にくると、シューリヒトもまた常の己を忘れて奥に秘めていた主情性が前に出てしまったのでしょうか。

面白いのは、それはライブでの演奏だけでなく、スタジオで録音したウィーンフィルとの演奏でも同じ姿を垣間見ることが出来ることです。
シューリヒトにとってブラームスというのは、どこか特別な意味を持たざるを得ない特別な存在だったのかもしれません。

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