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ベートーベン:ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 「大公」, Op.97

(Cell)パブロ・カザルス:(P)アルフレッド・コルトー (Vn)ジャック・ティボー 1928年11月18日~19日録音



Beethoven:Piano Trio No.7, Op.97 in B-flat major, "Archduke" [1.Allegro moderato]

Beethoven:Piano Trio No.7, Op.97 in B-flat major, "Archduke" [2.Scherzo: Allegro]

Beethoven:Piano Trio No.7, Op.97 in B-flat major, "Archduke" [3.Andante cantabile ma pero con moto]

Beethoven:Piano Trio No.7, Op.97 in B-flat major, "Archduke" [4.Allegro moderato - Presto]


謎の多い作品

交響曲の分野で言えばそれは疑いもなく「エロイカ」です。当時の人々は、あんなにも素晴らしい交響曲(第1番・2番)を書いた男がどうしてこんなわけの分からない音楽を書いたのだと訝しく思ったと伝えられています。
そして、その後もこのジャンルでは驚くような作品を次々と生み出していきました。その意味でも、交響曲こそはベートーベンにとっての主戦場だったのでしょう。

事情は室内楽の世界でも同様です。
弦楽四重奏曲ではそれは「ラズモフスキー」であり、ヴァイオリンソナタならば「クロイツェル」です。
ピアノソナタならば、「アパショナータ」や「ワルトシュタイン」が上げられるでしょうか。

そして、ピアノソナタや弦楽四重奏曲の分野では最晩年にもう一度「爆発」をおこすのです。ただし、その「爆発」は外に向かってではなく己の内部に向かって光を投げかけたのでした。

そして、ピアノ三重奏曲の分野ではそれは疑いもなく「大公」でした。
そして、このジャンルほど、爆発以前と以後との落差が大きなジャンルはなかったように思います。
それ以外のジャンルでは、どこか次の爆発を予感させる「予兆」みたいな者がありましたが、このピアノ・トリオにおいてはそれは突然やってきたのです。
そして、そうであったからこそかもしれませんが、この爆発は勇壮なる打ち上げ花火のように夜空を彩りながら、後には幽かな余韻しか残さずに、彼はこのジャンルから去ってしまうのです。

そういう事情があるからでしょうか、この作品は少しばかり謎めいています。
「大公」というあだ名は、これがルドルフ大公に献呈されたことに由来します。そして、献呈されたルドルフ大公はこの作品に深く感動したと伝えられています。しかし、それは当然のことであって、この作品はピアノ三重奏曲という狭いジャンルだけでなく、室内楽作品全体を見回しても屈指の名作であることは疑いがないからです。

作品冒頭のピアノで歌いだされる雄大なテーマが聞き手の心をがっちりととらえます。そして、何よりも魅力的なのはアンダンテ・カンタービレと指定された第3楽章の美しさです。これを聞いて深く感動しない人がいるならば、その事の方が不思議です。

ところが、そのように優れた作品でありながら、公式の初演は作品完成後の3年後なのです。ちなみに、この演奏会ではピアノを作曲者自身が担当しているのですが、ベートーベンがピアニストとして公開演奏を行った最後となったものです。さらに、出版はその2年後の1816年にまでずれ込んでいるのです。
この「遅さ」は他の作品と比べると異例とも言えるもので、作品の素晴らしさを考え合わせると、実に不思議な気がします。

まあ、これはもう全くの想像の域を出ませんが、もしかしたら献呈を受けたルドルフが、その素晴らしさ故に独り占めをしたかったのかもしれません。もちろん、そんなことを示す資料は何一つ残っていないので全くの妄想の域を出ませんが・・・。
しかし、そう言う妄想を逞しくしたくなるほどに、素晴らしい作品だということです。


一つの「奇蹟」

ユーザーの方より、カザルス・トリオの録音が一つもアップされていないようなのですが・・・と言う指摘をいただきました。
そんな馬鹿なことはないだろうと思って確認したところ、本当に一つもアップしていないことに気づきました。いやぁ、穴はあるものですが、ここまでの大穴が開いているとは我ながら感心するというか、呆れるというか、驚かされました。

と言うことで、急遽彼らの録音を探し出してきて準備を始めた次第です。
それにしても、パブロ・カザルス、アルフレッド・コルトー、ジャック・ティボーと言うのは、信じがたいほどの顔ぶれです。まさにそれは一つの「奇蹟」だったと言ってもいいでしょう。

このトリオが結成されたのは1905年という事ですから、最年長のカザルスで32歳、最年少のコルトーは25歳だったはずですから。まさに血気溢れる若者のトリオだったと言えます。そして、この顔ぶれはその後30年近く続いたのですから、強烈な「我」というか、「個性」というか、「我が儘」というか、そう言ういろんなものを持っている超一流のソリストたちがかくも長きにわたって活動を継続したというのもまた奇跡的なことだったと言えます。
一例を挙げれば、100万ドルトリオと言われたハイフェッツ、ルービンシュタイン、フォイアマンの組み合わせではハイフェッツとルービンシュタインの間で諍いが絶えず、チェリストのフォイアマンが必死で間に入ってなだめたと言われています。そして、フォイアマンの急死によって新しく参加したピアティゴルスキーも二人の諍いの仲裁に翻弄されたと言うことです。

しかし、パブロ・カザルス、アルフレッド・コルトー、ジャック・ティボーと言う組み合わせが30年も続いてくれたおかげで、後年の私たちはそれなりのクオリティで彼ら演奏を「録音」という形で聞くことができたのです。そして、そのおかげでこのトリオの凄さを「伝説」としてではなく実際の「音」として経験できると言うことです。
これを「幸せ」と言わずして何といいましょう。ただし、その様な神に感謝したくなるほどの録音を20年以上も放置をしていたのですから、まさに愚かさもきわまりで、何をかいわんやです。

ただし、彼らの録音については多くの人が語り尽くしていますから、今さら何も付け加える必要はないのですが、あらためて彼らの録音を聞き直してみて一つだけ気づいたことがありますのでその事だけを記しておきます。

それは、この組み合わせは年長者のカザルスに敬意を表してなのか「カザルス・トリオ」とよばれるます。そのために、音楽の主導権もまたカザルスにあるように語っている人は少なくありません。
しかし、彼らの録音をあらためて聞き直してみて、私が魅力を感じたのはカザルスではなくて、コルトーの歌心溢れたピアノと、それに対して素晴らしい閃きで絡んでくるティボーの方です。

カザルスはそう言う二人を裏方としてドッシリと支えているというのが私の率直な感想です。そして、この音楽的雰囲気が、つまりはリーダー格のカザルスがコルトーとティボーの自由闊達な演奏をニコニコと眺めながら、音楽面では裏方にまわってそんな二人を支えると言うスタイルこそが、このコンビが長く続いた理由だと確信したのです。とりわけ、コルトーの歌心ふれるピアノが強く心に残ります。もっとも、シューマンのようにヴァイオリンに比重がかかっている場合ではティボーが最高のパフォーマンスを披露してくれています。

おそらく、ナチスの台頭と、それに対するコルトーの融和的な姿勢がなければ、さらに長くこのコンビは活動を続けたはずです。
そう考えれば、ここにも思わぬ戦争の影が差していたと言うことがいえるのかもしれません。

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2022-06-22:さとる





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