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ホロヴィッツ(Vladimir Horowitz)|ムソソルグスキー:展覧会の絵
ムソソルグスキー:展覧会の絵
ホロヴィッツ 1951年4月23日録音
Mussorgsky:展覧会の絵
今までの西洋音楽にはない構成

組曲「展覧会の絵」は作曲者が35歳の作品。親友の画家で建築家のヴィクトール・ガルトマン(1834〜1873)の遺作展が開かれた際に、そのあまりにも早すぎる死を悼んで作曲されたと言われています。
彼は西洋的な音楽語法を模倣するのではなく、むしろそれを拒絶し、ロシア的な精神を音楽の中に取り入れようとしました。
この「展覧会の絵」もガルトマンの絵にインスピレーションを得た10曲の作品の間にプロムナードと呼ばれる間奏曲風の短い曲を挟んで進行するといった、今までの西洋音楽にはない構成となっています。
よく言われることですが、聞き手はまるで展覧会の会場をゆっくりと歩みながら一枚一枚の絵を鑑賞しているような雰囲気が味わえます。
作品の構成は以下のようになっています。
「プロムナード」
1:「グノームス」
2:「古い城」
「プロムナード」
3:「チュイルリー公園」
4:「ヴィドロ」
「プロムナード」
5:「殻をつけたままのヒヨコのバレエ」
6:「ザムエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」
「プロムナード」
7:「リモージュの市場」
8:「カタコムベ(ローマ人の墓地)」
9:「ニワトリの足に立つ小屋(ババヤーガ)」
10:「雄大な門(首都キエフにある)
ホロヴィッツの指は一種のユートピアである
正直に告白しておきますと、この演奏を聴くまではホロヴィッツを少し軽蔑していました。初来日の印象があまりにも悪かったことも一因ですが、何よりも名人芸だけの我が儘ピアニストという先入観がよくなかったようです。
ユング君がこの録音を始めて聞いたのはいつだったのか、いささか記憶は曖昧になっていますが、その時の鳥肌の立つような感覚だけは今も覚えています。
ピアノという楽器はかくも容易く軽々と演奏できるものなのかという驚き、そして自由奔放に弾きこなしているだけなのにそこから紡ぎ出される音楽はたとえようもなく美しい。何よりも、その音楽から発散される爽快感と開放感は他のどのピアニストからも感じ取れないものでした。
それは、伝統と形式の積み重ねの上にがっちりと構築された音楽とは対極にある、ある意味ではエンターテイメントの極みとも言うべき演奏であることは確かです。しかし、芸術というものは右へ行こうが左へ行こうが、突き抜けてしまえば人を沈黙させる凄みを持つと言うことです。
この演奏を評価してください。
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- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
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よせられたコメント
2008-06-24:亜季
- 非常に完成度が高いと思います。
圧倒的な技術、多彩で豊かな表現、録音も悪くなく、これだけ聞いていて特に何の不満もない演奏。
しかし…リヒテルのソフィアリサイタルでの同曲の演奏を聞いてしまうと、どうしてもあちらに魅かれてしまうのです。ミスタッチもあり、観客咳き込みまくりの録音だというのに…。
なぜでしょう…。それは、音楽に対するホロヴィッツの余裕綽々ぶりと、リヒテルのひたむきな情熱との違いなのかなと考えたりします。
ホロヴィッツの演奏を聞くと、自由自在にピアノを操る圧倒的な力量と同時に、不思議な冷静さも感じます。だから、どれだけすごい演奏であっても、そこから音楽への「献身」とか「没頭」は感じられないのです。
それが彼のスタイルであり個性なのだから、いい悪いの問題ではないですけれど…。
逆にバレキレフのイスラメイなど、他のピアニストが青筋立てて弾くような超難曲を余裕綽々でさくーっと弾ききるホロヴィッツは最高にかっこいいです。
2009-09-27:カンソウ人
- 若いホロヴィッツ程の技術の持主でなくとも展覧会の絵の楽譜は、難しくない。現代日本の音大の学生たちは、もっと難しい曲を演奏している。音符の数がロマン派時代の名曲としては少なすぎるのだ。だから難しい。
美術館で絵を見ながら歩いていく。絵に対する感想が表現されている上に絵を見ての感情の動きがプロムナードで表現されている。この設定に本質的に魅力があり、設定そのものに内容があり音楽の形式をも作っている。
曲の表現しようとしているものが、ピアノの原典版の音符で表現し尽くされていると考えるか、(作曲技術の拙いムソルグスキーに代わって)何らかの付け加えを行うべきと考えるか。善意からだあっても、ムソルグスキーに直接アプローチしたいと考えるのが現代的であるように思う。ラヴェルのアレンジは素晴らしい。オーケストラの貴重なレパートリーだろう。今日アレンジをするならば冨田勲のシンセサイザーまで行かないと、突き詰めたとは言えないように思う。
とにかくこの時代にホロヴィッツは演奏会場にこの曲を持ち出した。「グノ―ムス」が終わった後で観客の叫び声がする。「殻をかぶったヒヨコのダンス」では笑い声が記録されている。演奏者と観客がイメージを交換しあっている。素晴らしい音楽だ。ラヴェルのアレンジがいかに優れていようと、こんなことはありえない。ラヴェルの作品の出来上がりの素晴らしさを認めないわけにはいかないが、ムソルグスキーの音楽の天才的な訴える力の強さに気が付かないのは寂しいように思う。
2010-01-12:笛吹き
- >ピアノという楽器はかくも容易く軽々と演奏できるものなのかという驚き、そして自由奔放に弾きこなしているだけなのにそこから紡ぎ出される音楽はたとえようもなく美しい
と、ユング様はお書きになっていますが、まったく同感です。
恥ずかしながら原典版がピアノ作品ということも最近知ったのですが…
この録音を聞くと、ピアノとはこんなにも動ける楽器だったのか!!と驚きます。
ホロヴィッツが、ピアノの持つバイタリティ、可能性を極限まで突き詰めた作品とでも言いましょうか…
可能性とはまた違うか…?
終盤のババヤーガ〜キエフの大門の持つ高揚感は他の作品には見当たりません。
私の好きな昨今のゲームミュージックにも似通った部分があるような…
例えるならくっきりとした印象派のような…?
情景がありありと浮かんでくるのです
語彙が無さ過ぎて上手くいえませんが、ホントに素晴らしい!!
2010-07-25:たねば
- もし、このホロヴィッツの演奏で原曲の良さに気づき、リヒテルの演奏で奥深さを知ったなら、最後にはエフゲニー・キーシンの演奏を聴いてみて下さい。完璧な技術で弾ききっているうえ、ホロヴィッツのような乱暴な和音の鳴らし方はせず、強大なフォルテから美しいピアノまで天才的なピアニズムにこの上なく感動すると思います。
やはり、ホロヴィッツでは技巧が表現に直結していないように感じてしまいます。
2012-10-17:カコ
- 「展覧会の絵」はいろいろな編曲がありますが、私はピアノソロが一番好きです。この演奏はオリジナルと言うより、さらにホロヴィツ編曲と言ってもいいものです。ホロヴィッツはこのころはすごいテクニックだったんでしょうね。断片的なごつごつした原曲を、リフォームしさらにワックス仕上げしたような名演だと思います。晩年、初来日したときは「ひびの入った骨董品」と評されましたが。全盛期のホロヴィッツはほんとうにすごい。音楽を完全に自分のものにしていて、完璧な技巧と叙情性に圧倒されます。録音もここまで鮮明なら鑑賞に支障を感じません。
2022-05-29:yk
- ロシアによるウクライナ侵攻の重苦しいニュースを見、改めて”ロシアとは何者か?”と言う問いを発っしながら”ロシア音楽”を聴く今日この頃です。
我々が録音で知るホロヴィッツは、初期はヨーロッパ、後に米国でキャリアを積んだ演奏家ですが、ホロヴィッツはウクライナに生まれで、その音楽教育もキャリアの出発点も”ロシア”の演奏家であったことを改めて考えさせられたのがこの「展覧会の絵」でした。
彼が青春時代を過ごしたロシアは帝政の崩壊、第一次大戦、ロシア革命・・・と将に激動の時代であったのと同時に、文化面ではロシア(スラブ)的なものとヨーロッパ的なものの相克がロシアン・モダニズムという形をとり、ピアノでもスクリャービンやラフマニノフが輩出し、ディアギレフ・バレーがストラヴィンスキーの「春の祭典」をパリで初演した・・・と言った時代であったことを思い起こしながら、この”ホロヴィッツの「展覧会の絵」”を改めて聴くと、この一聴異形の演奏も単にアメリカのカーネギー・ホールに集う紳士淑女の喝采を得るためだけのショウピースと言うより、寧ろホロヴィッツのスラブ性の発露で有ったようにも思えます。
この演奏におけるピアノの色彩的な響きは、客受けのためと言うよりホロヴィッツが生涯保ち続けたロシアの響きであり、ネオ・スラブ主義を掲げたハルトマン追悼にムソルグスキーが書いた「展覧会の絵」に対するホロヴィッツなりの深い共感に基づいたものであったことに改めて思い至ります。
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