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ユージン・オーマンディ(Eugene Ormandy) |ヨハン・シュトラウス II:ワルツ「ウィーン気質」, Op.354
ヨハン・シュトラウス II:ワルツ「ウィーン気質」, Op.354
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1959年12月27日録音
Johann Strauss II:Vienna Blood, Op.354
社交の音楽から芸術作品へ
1873年4月20日にオーストリア=ハンガリー皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の長女ギーゼラとバイエルン王子レオポルトの結婚式が執り行われました。その結婚式の2日後の22日にそのロイヤル・ウェディングを祝うために「宮廷オペラ舞踏会」が行われました。このワルツは、その祝いの席とも言うべき舞踏会で初演されたのですが、そのタイトルは結婚とはあまり関係のない「ウィーン気質」というものでした。
その背景には、この作品はロイヤル・ウェディングだけでなく、同年に行われる予定のウィーン万博へのお祝いという意味も含まれていたようです。
なお、シュトラウスはその後、このワルツを中心として、旧作をオムニバス形式でつなぎ合わせることで新しいオペレッタを作曲することを思い立ちます。しかしながら、その作品は突然の病によって中断され、やがてシュトラウスの死によって未完のまま残されます。しかし、生前のシュトラウスとの約束によって、彼の良き友であり作品のよき理解者として認められていたアン・デア・ヴィーン劇場の指揮者アドルフ・ミュラーによって未完の部分が補筆されて完成されています。
そのオペレッタは陽気なウィーン子の気質を描きながらも、統一ドイツ帝国から取り残されて斜陽していくオーストリア帝国への郷愁と愛が込められたものとなっていました。
端正であると同時に豊満
オーマンディがどうしても低く見られる要因として「オペラ」を指揮しなかったと言うことがあります。実はミンシュもほぼ同様で、彼もまた「オペラ」との縁は非常に少なかった指揮者でした。
そして、アメリカではまだしも、ヨーロッパではその事は決定的な「弱点」と見なされました。
ただし、ミンシュはそう言うことは殆ど気にしていなかったようです。
それに対して、オーマンディの方はその事に多少の引け目を感じていたのか、唯一、ヨハン・シュトラウスの「こうもり」だけを録音しています。そして、それを「ヨハン・シュトラウスの理想的指揮者」と鼻であしらったのがストラヴィンスキーでした。
しかしながら、そんな風に馬鹿にされながらも、彼が鬼のトレーニングで築き上げた「フィラデルフィア・サウンド」は唯一無二の魅力を持っていました。
例えばリヒャルト・シュトラウスの「薔薇の騎士」組曲を聴いてみれば、それはまさに「薔薇の騎士」のダイジェスト版になっているだけでなく、その響きの豊麗さは誰にも真似の出来ない優れものでした。
ですから、そんなオーマンディが手兵のフィラデルフィア管の豊饒な響きを最大限にフル活用してヨハン・シュトラウスのワルツやポルカを演奏すればどんな音楽になるのかは概ね予想はつきます。
そして、現実はその予想をはるかに上回る面白さと美しさに満ちた音楽を聞かせてくれています。
まず最初に断っておかなければいけないのは、ここには「ウィーンの粋」はありません。基本的にワルツはワルツとしてきちんと3拍子で構成されていますし、ポルカはポルカらしく力強い推進力が強調されています。
つまりは、ウィンナー・ワルツという「伝統」からは自由になって、それらの作品を純粋器楽として端正に構築しているのです。その点ではセル&クリーブランド管によるシュトラウス演奏と方向性は同じです。しかし、セルになくてオーマンディにあったのはフィラデルフィア管の豊麗なサウンドです。
そう言えば、セルのウィンナー・ワルツをまるで士官学校での舞踏会みたいだと書いた事があるのですが、ここにはその様な禁欲的な雰囲気は全くありません。その音楽は端正であると同時に豊満でもあります。
そして、こういう表現というのは、簡単にやれるように見えて意外と難しいものであることに気づかされます。
そして、これが誉め言葉になるのかどうかは分かりませんが、「オーケストラの休日」でも感じたように、こういう小品を扱わせたときのオーマンディの上手さは抜きんでています。
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