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ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調, Op.68「田園」

オットー・クレンペラー指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1962年10月20日録音



Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral" [1.Allegro Ma Non Troppo (Apacibles Sentimientos Que Despierta La Contemplacion De Los Campos)]

Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral" [2.Andante Molto Moto (Escena Junto Al Arroyo)]

Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral" [3.Allegro (Animada Reunion De Campesinos) ]

Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral" [4.Allegro (La Tormenta, La Tempestad) ]

Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral" [5.Allegretto (Cancion Pastoril, Gratitud Y Reconocimiento Despues De La Tormenta)]


標題付きの交響曲

よく知られているように、この作品にはベートーベン自身による標題がつけられています。

  1. 第1楽章:「田園に到着したときの朗らかな感情の目覚め」

  2. 第2楽章:「小川のほとりの情景」

  3. 第3楽章:「農民の楽しい集い」

  4. 第4楽章:「雷雨、雨」

  5. 第5楽章:「牧人の歌、嵐のあとの喜ばしい感謝の感情」


また、第3楽章以降は切れ目なしに演奏されるのも今までない趣向です。
これらの特徴は、このあとのロマン派の時代に引き継がれ大きな影響を与えることになります。

しかし、世間にはベートーベンの音楽をこのような標題で理解するのが我慢できない人が多くて、「そのような標題にとらわれることなく純粋に絶対的な音楽として理解するべきだ!」と宣っています。
このような人は何の論証も抜きに標題音楽は絶対音楽に劣る存在と思っているらしくて、偉大にして神聖なるベートーベンの音楽がレベルの低い「標題音楽」として理解されることが我慢できないようです。ご苦労さんな事です。

しかし、そういう頭でっかちな聴き方をしない普通の聞き手なら、ベートーベンが与えた標題が音楽の雰囲気を実にうまく表現していることに気づくはずです。
前作の5番で人間の内面的世界の劇的な葛藤を描いたベートーベンは、自然という外的世界を描いても一流であったと言うことです。同時期に全く正反対と思えるような作品を創作したのがベートーベンの特長であることはよく知られていますが、ここでもその特徴が発揮されたと言うことでしょう。

またあまり知られていないことですが、残されたスケッチから最終楽章に合唱を導入しようとしたことが指摘されています。
もしそれが実現していたならば、第五の「運命」との対比はよりはっきりした物になったでしょうし、年末がくれば第九ばかり聞かされると言う「苦行(^^;」を味わうこともなかったでしょう。
ちょっと残念なことです。


フィラデルフィアのクレンペラー

1962年にクレンペラーはアメリカを訪れてフィラデルフィア管と3回の公演を行っています。オーマンディが招聘してそれをクレンペラーが快諾したという話をどこかで聞いたような気もあるのですが、本当のところは今ひとつよく分かりません。また、クレンペラーはフィラデルフィア以外にもニューヨーク、ワシントン、ボルティモ等で公演を行ったようです。

さて、その3回のフィラデルフィアでの公演なのですが、プログラムは以下の通りです。

1962年10月20日



  1. ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調, Op. 55「英雄」

  2. ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調, Op.68「田園」


1962年10月27日



  1. ベートーヴェン:「エグモント」序曲

  2. ブラームス:交響曲第3番ヘ長調 Op.90

  3. シューマン:交響曲第4番ニ短調 Op.120


1962年11月3日



  1. J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第1番ヘ長調 BWV.1046

  2. モーツァルト:交響曲第41番ハ長調 K.551「ジュピター」

  3. ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 Op.92


面白いのは、全ての公演でヴァイオリンを対向配置にしていることです。
言うまでもないことですが、フィラデルフィア管と言えば戦前のストコフスキーの時代からファーストとセカンドを隣り合わせにする現在的な配置を行ってきたオーケストラです。それだけに、いかにクレンペラーとは言え、よくぞその要求を受け入れたものです。
それだけに、フィラデルフィア管も随分と苦労したと思われるのですが、そのあたりは腕利きのプレーヤーを揃えたオケですから、そう言う「汗」のような部分を微塵も感じさせないのはさすがです。

そして全体的に言えば、華麗なサウンドが持ち味のフィラデルフィア管の魅力は十分に発揮しながら、クレンペラー独特の遅めのテンポ設定と構築性を大事にした情緒過多にならない音楽作りがせめぎ合っているあたりが実に面白いです。
ただし、あくまでも個人的な意見ですが、クレンペラーの持ち味よりはフィラデルフィア管の持ち味が前面に出た演奏の方が面白く聞けました。

その意味で、一番面白かったのはバッハのブランデンブルク協奏曲です。ここでは、クレンペラーのバッハへの保守性ゆえにか、ソロ部分はオケのプレーヤーの好き勝手にさせているようです。それは、クレンペラーがつくり出した美しいフレームの中で、個々のプレーヤーが自分のソロ部分が出てくるたびにそこに喜々として美しい絵を描き込んでいくような雰囲気です。
もっとも、当時のバッハ演奏の流れから言えば「これはバッハじゃない!」と言われても仕方のない演奏なのですが、そんなつまらぬ様式感などを吹き飛ばしてしまうほどの面白さに溢れています。

そして、次に面白いと思ったのはモーツァルトのジュピターです。
これはクレンペラーの頑固さに上手い具合にフィラデルフィアの美しい衣が巻き付いた感じで、同じ年にフィルハーモニア管とスタジオ録音をした演奏と較べてみれば、モーツァルトに必要な微笑みのような物が消えてしまっていないのが魅力的です。スタジオ録音の方はいかにもクレンペラーらしくはあるのですが、何ともいえず無骨で不器用な音楽だなと感じてしまう面もあるので、それをフィラデルフィアのサウンドが適度に中和させています。

さらに、指を折ればブラームスの3番とシューマンの4番に注目します。
ここでも、フィラデルフィア管らしい音色の美しさと歌う本能が上手くクレンペラーの構築性ととけ合っています。また、時々あらわれるソロパートなどでは、「これがフィラデルフィアのサウンドだよ!」と言いたげに美しい音楽を聞かせてくれるあたりも聞きどころでしょうか。
しかし、そこはさすがはクレンペラーで、締めるべきところは締めて、例えばシューマンなどでは終楽章ではぐっと腰を下ろして堂々たる盛り上がりを築いています。

ブラームスに関しても、この第3番は彼がもっとも得意とした作品で、フィルハーモニア管とのスタジオ録音でも情緒にもたれることなくかっちりとしたフォルムの中から寂寞とした雰囲気がにじみ出してくる演奏を聞かせてくれていました。そう言うアプローチはこのライブ演奏でも変わるところはないのですが、それがフィラデルフィアのサウンドで聞けるところは大きな魅力です。

と言うことで、最後はベートーベンだけが残るのですが、一番最初の10月20日の演奏会での第3番「エロイカ」はに関しては初手合わせと言うこともあったのか、お互いが手探り状態で終わってしまったという感じです。しかし、そのあとの第6番はフィラデルフィアのサウンドとクレンペラーの悠然とした音楽作りが上手くマッチングして、57年のフィルハーモニア管とのスタジオ録音とは一時違った魅力が楽しめます。
それから、スタジオ録音の時にプロデューサーのレッグが「いくら何でも遅すぎる」とぼやいた第3楽章の異形はここでも健在で、それがクレンペラーのこの作品に対する確固たる解釈でったことが確認できて興味深かったです。

それから10月27日のエグモント序曲ですが、これはその毅然たる音楽作りに好意的な評価を寄せている人が多いのですが、私はなんだかワンフレーズごとに念押しをされるように感じられて、聞いていて立派だとは思うのですが今ひとつピンと来ません。

それから、最終日の第7番の交響曲も実に立派な演奏ではあるのですが、スタジオ録音の重戦車が驀進して地上のあらゆるものを薙ぎ倒していくような迫力を既に聞いてしまっている身としては物足りなさを感じてしまいます。
やはり、ベートーベンに関してはクレンペラーの指示に完璧に追随しているフィルハーモニア管との録音があまりにも素晴らしすぎるので、どうしてもそれらと比較してしまいます。

なお、音源によっては10月20日が10月19日、11月3日が11月2日とクレジットされているものもあります。
ここでは、取りあえず私が持っている音源の録音クレジットに従いました。

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