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アンチェル(Karel Ancerl) |ヤナーチェク:タラス・ブーリバ
ヤナーチェク:タラス・ブーリバ
カレル・アンチェル指揮:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1961年5月22日~24日録音
Janacek:Taras Bulba [1.The Death of Andrei]
Janacek:Taras Bulba [2.The Death of Ostap]
Janacek:Taras Bulba [3.The Prophecy and Death of Taras Bulba]
ヤナーチェクの最も表現力に富んだ作品
狂詩曲「タラス・ブーリバ」はニコライ・ゴーゴリの小説「タラス・ブーリバ(隊長ブーリバ)」に基づいて作曲された標題音楽です。
「タラス・ブーリバ」はウクライナの民族的解放のための自己犠牲的な戦いを鮮明に描き出し作品なのですが、当然の事ながらその背景にはチェコスロバキアがオーストリア=ハンガリー帝国から独立した事が大きく影響しているのでしょう。
作品は「国民を防衛するわれらが軍に」献呈されています。
物語の背景には16世紀にウクライナがポーランドに併合されたことで、ポーランドに対するウクライナ民族の反抗が激化したことがあります。支配者であるポーランド軍とそれに抵抗するコサックの戦いが描かれるのですが、「隊長ブーリバ」はそのコサックの司令官です。
しかし、戦いの中でプーリバの次男のアンドレイがポーランドの将軍令嬢と恋におちて父を裏切ってしまいます。そして、最後はコサックに捕らえられて父の手によって命を断たれます。
また、長男のオスタップもまたポーランド軍の捕虜となって処刑されてしまいます。
二人の息子を失ったプーリバはオスタップの仇討ちのために死に物狂いでポーランド中で転戦します。しかし、ついにタラス・ブーリバもポーランド軍によって捕らえられ火炙りにされるのですが、その直前に挑発的な予言を口にして物語は締めくくられます。
ヤナーチェクはこの印象的な3つの部分を取り出して一つの狂詩曲として仕上げました。
第1曲「アンドレイの死」
第2曲「オスタップの死」
第3曲「タラス・ブーリバの予言と死」
「アンドレイの死」では恋人同士のロマンティックな情感が描かれるのですが、それが次第に不穏な雰囲気に変わっていき、やがてポーランド軍とコサック軍との戦闘を描写されます。そして、父を裏切ったアンドレイは投降し父の手にかかって亡くなるときに愛の場面の音楽が短く回想されます。
第2曲「オスタップの死」はほとんどは無感情で不恰好な行進曲風の音楽になっています。そして、猛々しいマズルカはポーランドの勝利を示唆します。最後のオスタップの断末魔はリヒャルト・シュトラウスの「ティル」の断頭台の場面に比すべきものがあります。
第3曲「タラス・ブーリバの予言と死」では、最初は軍楽やトロンボーンによるタラス・ブーリバの雄叫びの声にあふれています。しかし、彼が捕虜となったことで音楽は一転して静かなパッセージに変わっていきます。
そして、最後の挑発的な予言は金管楽器とオルガンの煽情的なパッセージで描写され、鳴り響く鐘と誇らしげなエピローグによってクライマックスを築いて曲は閉じられます。
これぞチェコフィルの極上のサウンド
この作品は「シンフォニエッタ」と較べると演奏される機会も録音される機会も非常に少ない作品です、しかし、ここには疑いもなくヤナーチェクならでは響きが目一杯詰め込まれています。
ですから、この「タラス・ブーリバ」が「シンフォニエッタ」とカップリングで発売されたのは当然と言えば当然のことでしょう。
そして、それ故に、私がアンチェルの「シンフォニエッタ」に捧げた讃辞はこの「タラス・ブーリバ」にもそのままあてはまります。
私にとってヤナーチェクの刷り込みはセル&クリーブランド管による1965年の「シンフォニエッタ」の録音でした。しかし、あの演奏をヤナーチェクのスタンダードとするのは間違いだと気づかさせてくれたのがアンチェルの録音でした。
もちろん、セルの演奏は素晴らしいもので一手の非の打ち所のないものでしたが、ヤナーチェクの音楽というのは本来は土の香りのするような音楽であり、セルの「小交響曲」のような世界、それは凄まじいまでの意志によって打ち立てられた強固な形式感によってつくり出されたものだったのですが、それこそが異常だった事に気づいたのです。
「刷り込み」とは恐ろしいモノです。
この「タラス・ブーリバ」でも、当時のチェコフィルが持っていた極上の響きを聞くことができます。伝統的な弦楽器群だけでなく金管楽器群の響きも素晴らしく、それは艶やかでありながらもボッテリとした響きにはまることなく、あくまでも引き締まった品のあるものとなっています。
もちろん、セル&クリーブランド管の「シンフォニエッタ」ような冷徹なる「狂気」をはらんだ演奏も悪くはないのですが、それとは全く別の地平線上でこれほどの音の世界を形作れるのだと心底感心させられました。
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