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クルト・レーデル(Kurt Redel)|テレマン:ヴィオラ協奏曲 ト長調 TWV 51:G9
テレマン:ヴィオラ協奏曲 ト長調 TWV 51:G9
クルト・レーデル指揮:ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 1962年録音
Telemann:Concerto for Viola, String Orchestra and Continuo in G major [1.Largo]
Telemann:Concerto for Viola, String Orchestra and Continuo in G major [2.Allegro]
Telemann:Concerto for Viola, String Orchestra and Continuo in G major [3.Andante]
Telemann:Concerto for Viola, String Orchestra and Continuo in G major [4.Presto]
親しみやすく、そして美しい旋律に溢れている
今の時代となっては、テレマンと言えば「ターフェルムジーク(食卓の音楽)」くらいしか思い出されることはないのですが、存命中はまさに時代を代表する大作曲家でした。同時代に活躍したヘンデルやバッハとも親交があり、ターフェルムジークの楽譜はヘンデルも注文したと伝えられています。
彼らが活躍した時代は教会だけでなく宮廷での華やかな儀式に音楽が求められるようになり、ヘンデルでおよぞ600曲、ヴィヴァルディで800曲、そしてバッハに至っては1100曲ほどの作品が残されています。つまりは、後の時代と較べれば、誰も彼もが多作だったのです。
しかし、そんな中にあってテレマンは3600曲程度の作品が残されていて、その多作ぶりは群を抜いています。
つまりは、それほどに人気作曲家だったのです。
彼の作品はあらゆる分野を網羅していて、ここで紹介している協奏曲だけでも170曲ほどの残されています。ですから、そこで取り扱われている独奏楽器もまた多種多様にわたり、例えばヴィオラ協奏曲などは、ヴィオラが独奏楽器として扱われた一番最初の作品ではないかと言われています。
ですから、そう言う多様な作品群の中から一つずつ取り上げて解説を加える能力は私にはありません。
しかしながら、取りあえずここで取り上げている作品は全て「緩-急-緩-急」というスタイルの4楽章構成になっています。
この「緩-急-緩-急」という4楽章構成はヴィヴァルディが編み出した「急-緩-急」という3楽章構成の協奏曲よりも古いスタイルです。テレマンとヴィヴァルディはほぼ同時代の人ですから、テレマンにとってヴィヴァルディの新しいスタイルはそれほど興味をひかなかったのでしょう。
その点では、ヴィヴァルディのスタイルに注目して自らの作品にも取り入れたバッハとは見ているものが少し違ったようです。
そして、言うまでもなく、その後の時代の協奏曲はヴィヴァルディが編み出した「急-緩-急」という3楽章構成が基本的なスタイルになっていくのですから、そう言う面でもしだいに時代遅れとなっていったのかもしれません。
とは言え、彼が書いた音楽はどれもこれもが親しみやすく、そして美しい旋律に溢れています。
余り難しいことなどは考えずに、その音楽に耳を傾けるだけで豊かで楽しい時間が過ごせることだけは間違いありません。
悔やんでも悔やみきれない痛恨事
クルト・レーデルという名前を耳にすることは今ではほとんどありません。
1918年に生まれて2013年に亡くなった人ですから、多少は記憶にあってもいいものだと思うのですが、実際にその演奏を耳にする機会はありませんでした。しかし、レコード芸術誌の付録として毎年発行されていた50~60年代の「レコード総目録」を眺めていると彼の名前をよく目にします。
ですから、何となく気にはなっていたのですが、それでも今まで接点はありませんでした。
レーデルは基本的にはフルート奏者であり、50年代にはいると自らミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団というオーケストラを組織して、バロック音楽をメインに指揮活動をはじめます。そう言う意味では、リヒターやミュンヒンガーなどと同じ仲間にはいると思うのですが、知名度という点では大きく差をつけられてしまっています。
実は、そう言うこともあって、未だに悔やんでも悔やみきれない痛恨事があります。
それは、とあるリサイクル・ショップにぶらりと入ったときに、無造作に段ボール箱の中に大量の中古レコードが放り込まれていたのです。その大部分はマックス・ゴバーマンがハイドンの交響曲の全曲録音のために自ら立ち上げたMHS(Musical Heritage Society)レーベルのものでした。
そこには、このレーデルのレコードやゴバーマンのレコードが一枚300円均一で売られていたのです。
当時はアナログの再生システムは維持していましたが、今ほど熱心ではなかったですし、MHSレーベルの価値も全く知らなかったのでほんの数枚ゲットしただけだったのです。もしも、その時に今ほどの知識があれば迷うことなくその数十枚のレコードは全て買い込んでいたことでしょう。
売っていたのが中古レコード屋ではなくリサイクル・ショップだったので、おそらくは世間の中古レコードの最安値の相場として300円均一の値付けをしていたのでしょう。
おまけに、買い込んできた数枚の中古レコードの盤質もそれほど悪くなかったのですから、今でも、悔やんでも悔やみきれない話です。
ただし、その買い込んだ中にレーデルの録音が一枚あったのは幸いでした。
そして、彼がフルート奏者としても一流であったことはフルート協奏曲を聞くだけでもよく分かりましたし、さらにはその穏やかな音楽作りもテレマンには相応しいものでした。
ただし、その穏やかさがリヒターやミュンヒンガーのような強烈な自己主張に乏しいとも受け取られるので、それが少しずつ忘れ去られていく要因となったのかもしれません。
しかしながら、そう言う穏やかさも今のような時代にあっては魅力的で、出来れば、もう少し彼の録音は聞いてみたいなと思わせてくれるものは持っています。
なお、録音年に関してはいろいろ調べたのですが分かりませんでしたので、一番最初のリリース年をクレジットしておきました。
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よせられたコメント
2021-06-01:toshi
- レコードのジャケット見ても不思議な感じがします。ヴィオラ協奏曲と言いながら、ヴィオラのソリストの名前がない・・・何故かな?
レーデルの名前は昔のバロックのレコードでは良く見かけたので懐かしい名前です。日本では実演に接した記憶はありませんが、日本では指揮の講習会などはやっていたようです。
指揮を勉強している(と言っても東京芸大や桐朋などのエリートコースの方ではありませんが)人間の口からレーデル講習会などという言葉を聞いたことあります。
2021-06-01:baroquemusicfan
- むかし、エラートの廉価版LPでもっていました。ヴィオラのソロは「ゲオルク・シュミット」とありましたが、多分?プロアルテ室内Orのヴィオラ奏者ではないでしょうか。
2021-06-01:コタロー
- クルト・レーデルとは懐かしい名前ですね。1972年頃、私は廉価盤でバッハの「管弦楽組曲第2番・第3番」と「ブランデンブルク協奏曲」のレコードを購入しました。
その中では、「管弦楽組曲第2番」がレーデルの古雅なフルート独奏とあいまって、立派な演奏でした。しかし、ほかの曲についてはアンサンブルがいささか緩く、今一つ満足できなかったのが事実です。まあ、廉価盤だから仕方がないかと思って当時は聴いていました。
今回アップされたテレマンの曲は、バッハとは違って音を厳密に構築する必要がないので、バッハで感じた緩さが逆に大らかさにつながって良い結果を出していると思います。
それにしても、レーデルは2013年まで生きていたのですね。70年代以降はあまり目立った音楽活動を行っていなかったのでしょうか。無欲の人だったのですね。
2021-06-06:しょうちゃん
- バッハの「音楽の捧げもの」は、レーデル&ミュンヘン・プロ・アルテの演奏が好きです。テレマンでも懐かしいその響きを聴かせてもらいました。何故かほっこりします。
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