クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ギーゼキング(Walter Gieseking)|シューマン:クライスレリアーナ

シューマン:クライスレリアーナ

(P)ギーゼキング:1942年録音



Schumann:クライスレリアーナ


ロマン派のピアノ音楽を代表する傑作

この作品はホフマンの筆になる楽長クライスラーの肖像が下敷きとなっています。そして、そのクライスラーの肖像は言うまでもなくシューマン自身の自画像と重なります。そして、これもまたよく知られたことですが、シューマンはここに愛するクララへの思いとその姿を重ね合わせるという複雑なことを行っています。

「今僕の中にあるこの音楽、何と美しい旋律!・・・きみと、きみへの想いが主役をはたしているのです。ですから、きみに捧げようと思います。自分の姿を見出したら、きみは清らかな微笑みをうかべるでしょう。」

しかし、そういうご託などを全く知らなくても、この作品が持つ強力な感情のほとばしりには誰もが圧倒されるはずです。そして、ところによっては狂乱ともいえるほどの奔放さを発揮しながら、それでも全体が統一した音楽としてのまとまりを保持していることに誰もが驚嘆させられるはずです。
その統一感の根元は、奔放に飛び回っているように見えながらも、もとをたどっていけば動機レベルでの小さな要素を根本に還元されると言うシューマンの得意技がここでも機能しているからであり、さらにもっとマクロ的に見れば、中間の「きわめて遅く」と題された第4曲が全体の沈め石のような働きをしているからです。
美しいもの、偉大なもの、神秘的なもの、そういう何か崇高なものへの憧れとという人間的な感情が、光と影が交錯するように移ろっていく様をこれほど見事に形象化した音楽は他にはちょっと思い当たりません。それ故に、言葉をかえれば毒の強い音楽であり拒絶感を感じる人も少なくないのも事実です。そして、こういう言い方は逆説的ではあるのですが、それ故にこの作品はロマン派のピアノ音楽を代表する傑作だと断言できます。

第1曲 激しく動いて ニ短調/第2曲 心を込めて、早すぎず 変ロ長調/第3曲 激しく駆り立てられて ト短調/第4曲 きわめて遅く 変ロ長調/第5曲 ひじょうに生き生きと ト短調/第6曲 きわめて遅く 変ロ長調/第7曲 非常に速く ハ短調/第8曲 速く、諧謔をもって ト短調


煩悩の中でのたうちまわる演奏・・・?

ギーゼキングといえば即物主義的な演奏の大家です。そのイメージでこの一連のシューマン作品(ダヴィッド同盟舞曲集・クライスレリアーナ・ソナタ第1番・・・以上42年の録音、謝肉祭・・・43年の録音)を聞くと脳天をかち割られます。
これって本当にギーゼキングの演奏?
そうなのです。ギーゼキングといえども最初からあんなにも取り澄ました演奏をしていたわけではないのです。それは、若い人が老人を見るとき、その人は昔からずーっと老人であったかのように見てしまう誤りと共通しています。
今は欲も得も捨てて枯れきったような日常を送っている人でも、かつては欲と煩悩にまみれた若き時代があったということです。そして、凛とした清貧の生活に彼岸の真実があるとすれば、煩悩の中でのたうち回る姿の中にも此岸の真実があると言うことです。
第2次大戦の惨劇の中で、彼はどのような思いでこの作品を弾いたのでしょうか。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



455 Rating: 6.5/10 (311 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2012-07-08:oTetsudai





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-10-13]

ワーグナー;神々の黄昏 第2幕(Wagner:Gotterdammerung Act2)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-12]

ワーグナー;神々の黄昏 第1幕(Wagner:Gotterdammerung Act1)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-11]

ワーグナー;神々の黄昏 プロローグ(Wagner:Gotterdammerung Prologue )
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-08]

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67(Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年8月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on August, 1961)

[2025-10-06]

エルガー:交響的習作「フォルスタッフ」, Op.68(Elgar:Falstaff Symphonic Study, Op.66)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1964年6月1日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 1, 1964)

[2025-10-04]

ブラームス:弦楽四重奏曲 第3番 変ロ長調 Op.67(Brahms:String Quartet No.3 in B-flat major, Op.67)
アマデウス弦楽四重奏団 1957年4月11日録音(Amadeus String Quartet:Recorde in April 11, 1957)

[2025-10-02]

J.S.バッハ:幻想曲 ハ短調 BWV.562(Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 562)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-09-30]

ベートーベン:合唱幻想曲 ハ短調 Op.80(Beethoven:Fantasia in C minor for Piano, Chorus and Orchestra, Op.80)
(P)ハンス・リヒター=ハーザー カール・ベーム指揮 ウィーン交響楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 (S)テレサ・シュティヒ=ランダル (A)ヒルデ・レッセル=マイダン (T)アントン・デルモータ (Br)パウル・シェフラ 1957年6月録音(Hans Richter-Haaser:(Con)Karl Bohm Wiener Wiener Symphoniker Staatsopernchor (S)Teresa Stich-Randall (A)Hilde Rossel-Majdan (T)Anton Dermota (Br)Paul Schoffler Recorded on June, 1957)

[2025-09-28]

エルガー:コケイン序曲 Op.40(Elgar:Cockaigne Overture, Op.40)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年5月9日&8月27日録音(Sir John Barbirolli:The Philharmonia Orchestra Recorded on May 9&August 27, 1962)

[2025-09-26]

ベートーベン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60(Beethoven:Symphony No.4 in Bflat major ,Op.60)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1962年1月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on January, 1962)