Home|
オーマンディ(Eugene Ormandy)|ヴェーベルン:夏風の中で
ヴェーベルン:夏風の中で
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1963年2月17日録音
Webern:In Sommerwind
完璧なまでに後期ロマン派の音楽

おそらく、この作品を聞いてまさかこれがウェーベルンの作品だと思う人は殆どいないでしょう。
この作品はどこからどう見ても大編成オーケストラによる後期ロマン派の音楽です。ウェーベルンと言えば、新ウィーン楽派を代表する3人(シェーンベルク・ベルク・ウェーベルン)の中でも、もっとも凝縮度の高い作品を書いた人として認知されています。そんなウェーベルンにもこんな音楽を書いていた時期があったというのは驚きです。
しかしながら、考えてみれば、シェーンベルクだって若い頃には「グレの歌」を書いていたのですから、あまりにも若くして行き着くところまで行き着いてしまえば、後は新たな道を探るしかなかったと言うことも納得がいきます。
そして、このウェーベルンの「牧歌 風の中で」も彼が19歳の時の作品だと知れば、事情はまたシェーンベルクと同じであり、そして、そのシェーンベルクとの出会いによって音楽の方向性がガラリと転換したのでしたのも納得が出来ます。
若い頃のウェーベルンはワグネリアンでした。
17歳の時に彼は念願の「バイロイト詣」を実現し、どっぷりとワーグナーの音楽にひたっています。そして、その年の秋に父から音楽の道に進むことを許されてウィーン大学に進み、さらにその地で数多くのコンサートやオペラに顔を出しています。
この「牧歌 風の中で」はそんな学生時代の休暇を過ごしたウェーベルン家の領地であった農村で書かれたものです。
しかし、この作品は実際に演奏されることもなく、また出版されることもありませんでした。そう言う意味では「忘れ去られた若書きの作品」のように思えるのですが、ウェーベルン自身は自分の弟子たちによくこの「作品」のスコアを見せては自らの音楽家としての来し方を語っていました。
ですから、「忘れ去られた作品」ではなくて、その作品の存在を知る人は多かったのです。しかしながら、結果的にはウェーベルン存命中には演奏されることはありませんでした。
それは、戦後の不幸な事故によってあまりにも若くしてこの世を去ったことが大きな原因となっていたのでしょう。想像にしか過ぎませんが、戦争も終わって世の中が落ちつけば、ウェーベルンはこの作品を演奏することを決して拒まなかったと思います。
豊麗な響きはこの作品の魅力を十分に引き出している
この作品が初めて世に出たのは、ウェーベルン研究の第一人者と言われていたモルンデハウアーの尽力によるものでした。
1962年にシアトルにおいて、第1回国際ウェーベルン・フェスティバルが行われるのですが、そのフェスティバルにおいてオーマンディ指揮によるフィラデルフィア管弦楽団によって初演が行われたのです。
おそらく、この「牧歌 風の中で」のスコアを見てオーマンディは大いに興味を持ったのでしょう。それは、まさに彼が誇るフィラデルフィア・サウンドの威力を誇示するにはもってこいの作品であり、話題性も十分でした。
そして、オーマンディはその2年後にこの作品の録音も行っています。
つまりは、この作品の初演も初録音も、両方ともにオーマンディがになったのです。
そして、考えてみれば面白い話なのですが、一般的にはウェーベルンの作品とはもっとも相性が悪いように思われるオーマンディ&フィラデルフィア管との組み合わせが、この完璧なまでに後期ロマン派の音楽になっている「牧歌 風の中で」ではドンピシャリと言えるほどの相性の良さなのです。
その豊麗な響きはこの作品の魅力を十分に引き出しています。
しかし、欲を言えば、この作品の中にはすでに芽生えはじめているウェーベルン的な響きがあるように思うのですが、それもまたフィラデルフィア・サウンドによって塗り込められているように思われるのです。
とは言え贅沢は言えません。
この作品にパブリック・ドメインの録音が存在することに感謝あるのみです。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
4541 Rating: 5.4/10 (130 votes cast)
よせられたコメント
2021-03-14:コタロー
- ウェーベルンの初期の作品が取り上げられるのは珍しいですね。曲想としては後期ロマン派の作品に酷似していますね。絵画の世界でいえば、若き日のピカソが写実的な作品を描いていたのを思い起こさせます。
オーマンディの演奏は、彼がこの曲の初演を行ったのですから、悪かろうはずがありません。フィラデルフィア管弦楽団の色彩的な演奏も見事です。
貴重な演奏をアップいただき、ありがとうございました。
2022-09-19:パブりっぅドメイン
- ウェーベルンの作品少ないんですね。私は後期の作品が苦手ではないのですが。なぜか不評なのですね。それとストラビンスキーがないのは意外ですね。ショスタコーヴィチあたりあるとうれしいです。パブりっぅドメイン的には微妙だと思いますが。
【最近の更新(10件)】
[2025-03-28]

ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
シャルル・ミュンシュ指揮:ボストン交響楽団 1950年12月26日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 26, 1950)
[2025-03-24]

モーツァルト:セレナード第6番 ニ長調, K.239「セレナータ・ノットゥルナ」(Mozart:Serenade in D major, K.239)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)
[2025-03-21]

シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D.125(Schubert:Symphony No.2 in B-flat major, D.125)
シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1949年12月20日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 20, 1949)
[2025-03-17]

リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲, Op.34(Rimsky-Korsakov:Capriccio Espagnol, Op.34)
ジャン・マルティノン指揮 ロンドン交響楽団 1958年3月録音(Jean Martinon:London Symphony Orchestra Recorded on March, 1958)
[2025-03-15]

リヒャルト・シュトラウス:ヴァイオリンソナタ 変ホ長調 ,Op.18(Richard Strauss:Violin Sonata in E flat major, Op.18)
(Vn)ジネット・ヌヴー (P)グスタフ・ベッカー 1939年録音(Ginette Neveu:(P)Gustav Becker Recorded on 1939)
[2025-03-12]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第22番 変ロ長調 K.589(プロシャ王第2番)(Mozart:String Quartet No.22 in B-flat major, K.589 "Prussian No.2")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2025-03-09]

ショパン:ノクターン Op.27&Op.37(Chopin:Nocturnes for piano, Op.27&Op.32)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)
[2025-03-07]

モーツァルト:交響曲第36番 ハ長調「リンツ」 K.425(Mozart:Symphony No.36 in C major, K.425)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1960)
[2025-03-03]

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調, Op.68(Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op.68)
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1945年1月8日録音(Artur Rodzinski:New York Philharmonic Recorded on January 8, 1945)
[2025-02-27]

ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調(Debussy:Sonata for Violin and Piano in G minor)
(Vn)ジネット・ヌヴー (P)ジャン・ヌヴー 1948年録音(Ginette Neveu:(P)Jean Neveu Recorded on 1948)