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チャイコフスキー:交響曲第4番

カンテッリ指揮 NBC交響楽団 1954年2月14日録音



Tchaikovsky:交響曲第4番「第1楽章」

Tchaikovsky:交響曲第4番「第2楽章」

Tchaikovsky:交響曲第4番「第3楽章」

Tchaikovsky:交響曲第4番「第4楽章」


絶望と希望の間で揺れ動く切なさ

今さら言うまでもないことですが、チャイコフスキーの交響曲は基本的には私小説です。それ故に、彼の人生における最大のターニングポイントとも言うべき時期に作曲されたこの作品は大きな意味を持っています。

まず一つ目のターニングポイントは、フォン・メック夫人との出会いです。
もう一つは、アントニーナ・イヴァノヴナ・ミリュコーヴァなる女性との不幸きわまる結婚です。

両方ともあまりにも有名なエピソードですから詳しくはふれませんが、この二つの出来事はチャイコフスキーの人生における大きな転換点だったことは注意しておいていいでしょう。
そして、その様なごたごたの中で作曲されたのがこの第4番の交響曲です。(この時期に作曲されたもう一つの大作が「エフゲニー・オネーギン」です)

チャイコフスキーの特徴を一言で言えば、絶望と希望の間で揺れ動く切なさとでも言えましょうか。

この傾向は晩年になるにつれて色濃くなりますが、そのような特徴がはっきりとあらわれてくるのが、このターニングポイントの時期です。初期の作品がどちらかと言えば古典的な形式感を追求する方向が強かったのに対して、この転換点の時期を前後してスラブ的な憂愁が前面にでてくるようになります。そしてその変化が、印象の薄かった初期作品の限界をうち破って、チャイコフスキーらしい独自の世界を生み出していくことにつながります。

チャイコフスキーはいわゆる「五人組」に対して「西欧派」と呼ばれることがあって、両者は対立関係にあったように言われます。しかし、この転換点以降の作品を聞いてみれば、両者は驚くほど共通する点を持っていることに気づかされます。
例えば、第1楽章を特徴づける「運命の動機」は、明らかに合理主義だけでは解決できない、ロシアならではなの響きです。それ故に、これを「宿命の動機」と呼ぶ人もいます。西欧の「運命」は、ロシアでは「宿命」となるのです。
第2楽章のいびつな舞曲、いらだちと焦燥に満ちた第3楽章、そして終末楽章における馬鹿騒ぎ!!
これを同時期のブラームスの交響曲と比べてみれば、チャイコフスキーのたっている地点はブラームスよりは「五人組」の方に近いことは誰でも納得するでしょう。

それから、これはあまりふれられませんが、チャイコフスキーの作品にはロシアの社会状況も色濃く反映しているのではとユング君は思っています。
1861年の農奴解放令によって西欧化が進むかに思えたロシアは、その後一転して反動化していきます。解放された農奴が都市に流入して労働者へと変わっていく中で、社会主義運動が高まっていったのが反動化の引き金となったようです。
80年代はその様なロシア的不条理が前面に躍り出て、一部の進歩的知識人の幻想を木っ端微塵にうち砕いた時代です。
ユング君がチャイコフスキーの作品から一貫して感じ取る「切なさ」は、その様なロシアと言う民族と国家の有り様を反映しているのではないでしょうか。


度肝を抜かれる演奏

カンテッリという人は、前途を嘱望されながら1956年11月24日、飛行機事故のため36歳で夭折した指揮者です。トスカニーニが彼の才能を激賞し、自らの後継者と目していたことは有名な話ですが、まさか90才を目前にした自分よりも先にこの世を去るとは夢にも思わなかったでしょう。

しかし、その優れた才能は広く世間に喧伝されながらも残された録音はあまりにも少なく、そのほとんどが放送用の録音だということになれば、時の流れの中でやがては忘れ去られてしまうのも仕方のないことでした。ユング君がクラシック音楽などというものを聞き始めた70年代の終わり頃でも、すでに過去の人として忘れ去られた存在になっていました。
しかし、没後50年が近いと言うこともあるんでしょうが、昨年あたりからかなりまとまった形でカンテッリの録音が供給されるようになってきました。残念ながらセット物という形でリリースされたために「おやすい買い物」とはいかなかったためにユング君は見送ってしまったのですが、歴史的録音のコレクター化してきているユング君としてはやはり気になる指揮者の一人ではありました。そんなわけで、この2,3ヶ月は彼の名を見るたびにポツポツと注文を出すようになったわけなのですが、そういう流れの中で出会ったのがこの一連のチャイコフスキーのライブ録音でした。

度肝を抜かれるというのはこういうことを言うのでしょう。
底光りのする鋼鉄の響きが一糸乱れぬ鬼のアンサンブルで驀進していきます。かと思えば、チャイコフスキーらしい叙情性にあふれた場面では実によく歌います。最初に第4番の演奏を聞いたときに思わずムラヴィンスキーの顔が浮かんだのですが、5番・6番と聞き進むうちに、なるほどこれは間違いなく、ムラヴィンスキー&レニングラードフィルの不滅の演奏に迫るものだと確信しました。なるほど、この演奏ならばトスカニーニが激賞したというのもうなずけます。

あー、困った!これではカタログに彼の名前を見るたびにこの手がかってキイボードをたたいて注文を出してしまう・・・。

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