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マーラー:交響曲「大地の歌」 イ短調

ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 (Ms)モーリン・フォレスター (T)リチャード・ルイス 1967年4月21日録音



Mahler:Das Lied von der Erde [1.Schon winkt der Wein im goldnen Pokale]

Mahler:Das Lied von der Erde [2.Herbstnebel wallen blaulich uberm See]

Mahler:Das Lied von der Erde [3.Mitten in dem kleinen Teiche]

Mahler:Das Lied von der Erde [4.Junge Madchen pflucken Blumen]

Mahler:Das Lied von der Erde [5.Wenn nur ein Traum das Leben ist]

Mahler:Das Lied von der Erde [6.Die Sonne scheidet hinter dem Gebirge]


生は暗く、死も亦暗し!

この作品にまつわる「9番のジンクス」に関してはいろんな方が語っていますし、私も別のところでふれていますからあえてここでは取り上げません。
それよりも、始めてこの作品を聴いた方は「これは果たして交響曲なのだろうか?」という疑問をもたれると思います。どう聴いたってこれはオーケストラ伴奏付きの歌曲集のように聞こえる方もおられると思いますし、それは決して誤りではないと思います。

交響曲の起源はおそらくバッハの息子たちにまで遡ることができるのでしょうが、とりあえずはハイドンが橋頭堡を築き、モーツァルトが育て上げ、最終的にベートーベンが完成させた管弦楽の形式だと言っていいと思います。(ハイドンが橋頭堡を築いてから荒野を切り開き、最終的にベートーベンが完成させた管弦楽の形式だと言っていいと思います。おそらく、モーツァルトの交響曲はその系譜から少し離れたところに花開いた世界で、それを引き継げる者はいなかったと見る方が正しいのではないかと最近になって思うようになってきました。)
そして、それ以降の音楽家たちは縦への掘り下げが行き着くところまで行ってしまったためでしょうか、今度は横への広がりを模索していきます。

声楽の導入は言うまでもなく、ソナタ形式に変わる新たな方法論が模索されたり、響きの充実を求めて管弦楽がどんどん肥大化していったりします。マーラーの前作である第8番においてはその肥大化は頂点に達しますし、方法論においてもこの大地の歌によって行き着くところまで行ったと言えます。

つまり、交響曲という形式が多様化と肥大化の果てに明確なフレームを失ってしまって、作曲家が「これは交響曲だ」と言えば、何でも交響曲になってしまうような時代に突入したと言えます。しかし、それは交響曲という形式の終焉を意味しました。
もちろん、マーラー以降も数多くの交響曲は創作されましたが、しかしそれらはハイドン、ベートーベンと受け継がれてきたクラシック音楽の玉座をしめる音楽形式としての交響曲ではなく、どこか傍流の匂いを漂わせます。私は、クラシック音楽の玉座としての交響曲はマーラーのこの作品と続く第9番によって終焉したと思うのですが、いかがなものでしょうか。

なお、大地の歌の楽章構成は以下の通りです。奇数楽章はテノール、偶数楽章はアルトが歌うようになっています。


とにかく整理できるものだけを選ぶ

セルのライブ録音は「出来損ないのスタジオ録音」などと言っていたのですが、例えば1967年1月5日に録音されたブラームスの交響曲第2番のように、スタジオ録音とは全く違う演奏もあったことに気づくと、そうとばかりも言えないなと思うようになりました。
しかしながら、セルのライブ録音を聞く一番の楽しみは、スタジオ録音は行わなかった作品の演奏が聴けるものがあることです。

ここで紹介しているマーラーの「大地の歌」もそう言うライブ録音の一つです。
セルという人の資質とマーラーやブルックナーの交響曲というのはそれほど相性は良くないようです。それは、セルの目から見ればそれらの作品はあまりにも整理し切れていない部分が多すぎるように映ったのでしょう。それ故に、彼が取り上げたマーラーやブルックナーの作品は限定的で、取り上げた回数もそれほど多くはありません。
スタジオ録音に限ればブルックナーでは交響曲第3番と第8番の2曲、マーラーでは交響曲第4番の1曲だけです。そして、ライブで言えば、それ以外にマーラーの6番(これは正規録音という扱いでリリースされている)と9番、そしてこの「大地の歌」の3曲があるだけです。なお、「大地の歌」はセルが亡くなる1970年の2月5日にも取り上げているようです。

つまり、それらのラインナップを見てみると、セルにとって「整理可能」と判断できた作品だけを取り上げているように見えるのです。
ただし、その整理の仕方は、例えばショルティなどとは少しばかり雰囲気が違います。ショルティの場合は鞭を振り回しながら、少し古い話になりますが、鬼軍曹ビリーのブートキャンプみたいなスタイルで作品のダイエットをはかります。
それに対して、セルの場合は実に涼しい顔をして無理なくダイエットをさせてしまいます。

ただし、そのやり方が万人に受け入れられるのかと言えば、そうとも限りません。
何故ならば、マーラーの音楽というのはそう言う無駄な部分こそ愛すべきだという人の方多いですし、ブルックナーに関しても、その理不尽とも思える楽曲の流れにこそに彼の神秘を見る人が多いからです。それを何もかもすっきりと整理してダイエットさせてしまえば、その豊饒に過ぎる愛するべき「おブタちゃん」も、理不尽さの中に潜む「神秘的カリスマ」の姿も消えてしまうからです。

確かに、この「大地の歌」も聞きようによってはオーケストラ伴奏付きの連作歌曲集の様に聞こえなくもありません。もっとも、最後の「告別」だけは演奏時間が30分程度になりますから、歌曲としては些かガタイが大きすぎます。しかし、それでもセルはこの作品に通底する「生は暗く、死もまた暗し!」というイメージよりは、スッキリとした造形によってどこか古典的な佇まいの中にまとめ上げています。
そして、そこには一切の力ずくな面は見られません。
もっとも、それは背景にクリーブランド管の卓越した技術があったからこそ可能になったことなのでしょうが、セルがそう言うやり方を最初から指向していたことも事実です。

ですから、ライブ録音ながら正式にリリースされたマーラーの6番などにはそう言うセルのスタイルが明瞭に刻み込まれています。そして、それが整理されきった音楽であるが故に、最後に下る鉄槌の恐怖は聞くものの心臓を止めかねないほどの恐怖をもたらします。
また、69年にライブで録音された第9番などはまさに白昼夢のような世界を描き出していて、マーラーの音楽が持つ粘着質な側面に壁席とする人には救いとなるような演奏となっていて、そのスタイルをブーレーズなどは完全にパクっていました。

Deccaの名物プロデューサーだったカルショーはマーラーを聴くと本当に体調が悪くなったというエピソードが伝えられていますが、もしもセルと組んでの仕事ならば、意外と頑張れたのかもしれませんね。

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