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ブラームス:弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 Op. 18

アマデウス弦楽四重奏団:(Viola)セシル・アーロノヴィッツ (Cello)ウィリアム・プリース 1966年12月16日~18日録音



Brahms:String Sextet No.1 in B-Flat Major, Op.18 [1.Allegro ma non troppo]

Brahms:String Sextet No.1 in B-Flat Major, Op.18 [2.Andante ma moderato]

Brahms:String Sextet No.1 in B-Flat Major, Op.18 [3.Scherzo: Allegro molto]

Brahms:String Sextet No.1 in B-Flat Major, Op.18 [4.Rondo: Poco allegretto e grazioso]


若々しさと情熱にあふれた作品

ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロがそれぞれ二挺という特殊な編成を持った作品です。そして、ブラームスはこの特殊な編成による作品を二つ作っています。
その中で、とりわけ有名なのがこの第1番の第2楽章です。

数あるロマン派音楽の中でももっともロマンティックな音楽の一つであり、一度はどこかで耳にされた方も多いのではないでしょうか。(ルイ・マル監督のフランス映画「恋人たち」に用いられたことは有名です。)

ブラームスがベートーベンの不滅の9曲に対する重圧から第1交響曲を生み出すために20年以上の歳月を必要としたことはよく知られています。そして、室内楽の分野においても、最初の弦楽四重奏曲を生み出すまでに20曲前後の弦楽四重奏曲が破棄されました。
ブラームスにとって、交響曲や弦楽四重奏曲という古典派音楽における王道とも言うべきジャンルにおいては、あまりにもベートーベンの存在は重く大きいものだったようです。

そして、「できれば同じ土俵で勝負はしたくない!」という意識がはたらいたのかどうかは分かりませんが、室内楽の分野では弦楽四重奏という王道の形式で競合することをを避けて、どちらかといえばもう少し編成を大きくした管弦楽的な効果を多用するような作品が数多く生み出されました。
とりわけ、この弦楽六重奏のような分厚い編成であればベートーベンの影をほとんど気にしなくてすんだのか、いつもの気難しい顔はしまいこんで、陽気で明るく、そしてこの上もなくロマンティックな素顔をさらけ出しています。

特に、その第2楽章をピアノ独奏用に編曲して、終生の憧れであったクララの誕生日プレゼントとしたことも、その様な傾向を際だたせている要因かもしれません。
そして、ブラームスはその楽譜にそえた手紙の中で「私の作品について長い手紙をください。汚い音のところ、退屈なところ、バランスの悪いところ感情の冷たいところなど、どうかたくさん書いてください。」などと、後の気難しいブラームスからは想像もできないようなことを書いているのです。
20代の青年ブラームスの若々しい情熱にあふれた作品です。


若い頃に魅了された室内楽作品

若いころはどうにも室内楽というものが苦手でした。その頃と言えば、何よりもゴージャスな響きと雄大な旋律に溢れた管弦楽曲が大好きでした。
それ故に、響きは地味で退屈なだけの室内楽なんてものに対して、「こんな音楽の何が楽しくてみんな聞いているんだろう」と不思議に思ったものです。

ところが、年を重ねるにつれてその好みが180度変わってしまうのですから不思議なものです。
いつの頃からか、管弦楽のゴージャスな響きはただただ五月蝿く感じられるようになり、逆に地味で退屈なだけの室内楽がしみじみと心にしみるようになってきました。それはまあ言葉をかえればパワーが落ちていると言うことでもあるのですが、それでも多少は物事の価値が少しは分かってきたと言うことはいえるのかもしれません。

ただし、若い頃は「室内楽は退屈」といいながらも、それでも片っ端から未遭遇の作品を聞きまくっている中で、「へえ、室内楽にもいい物が有るじゃない!と思えるような作品と出会うこともありました。実は、ここで紹介しているアマデウス弦楽四重奏団によるブラームスの作品は、私が初めて「いい物が有るじゃない!」と思った録音でした。
ただし、その時そう思えたのはこの「弦楽六重奏曲第1番」と「クラリネット五重奏曲」の2曲だけではありましたが・・・。

今から思えば、そんな3枚セットのCDをどうして買おうと思ったのかは不明ですが、それでも一枚目のCDをセットして「弦楽六重奏曲第1番」の第1楽章が流れはじめたときに、「あれっ、これって意外といい感じ」と思い、続く第2楽章のあまりにもロマンティックな旋律と濃厚な響きに、「いやぁ、室内楽にもこんな素晴らしいものがあるんだ!!」とすっかり魅せられてしまったものでした。
今から振り返れば、よくぞ恥ずかしげもなくこんなメロディが書けたものだと思わないのでもないのですが、若い頃はこういうロマンティックな旋律こそがこの上もなく魅力的に思えたのでした。さらに言えば、「弦楽六重奏」という構成が「室内楽」の枠からはみ出した「管弦楽」的な響きに近いことも魅せられた要因だったのかもしれません。

しかしながら、その3枚セットに収録されていた他の作品、弦楽五重奏やピアノ五重奏、それに同じ弦楽六重奏でも第2番の方はあまり好きにはなれませんでした。しかしながら、3枚目に収録されていた「クラリネット五重奏曲」はすぐに好きになり、その流れでモーツァルトの「クラリネット五重奏曲」と出会い、さらにはドヴォルザークの「アメリカ」やシューベルトの「死と乙女」、フランクの「ヴァイオリン・ソナタ」など、「室内楽もいいものだ」と思えるような作品と出会う糸口を作ってくれました。
つまりは旋律ラインの美しい、それも出来る限りロマンティックな感情に溢れた作品がお好みだったのです。

そして、そこから、例えばバルトークの弦楽四重奏曲をしみじみといいなと思えるようになるまでは長い時間がかかったのですが、それが果たして音楽の価値を聞き取る力が少しは身についたのか、ただ単にパワーが落ちてきただけの話なのかは分かりません。
ただし、そう言う「室内楽もいいな」と思えた思えた背景として、アマデウス弦楽四重奏団の果たしてくれた役割は無視できません。

このカルテットも最後は仲間内のごたごたがあったようで(演奏会が終わった後にリーダーのノーバート・ブレイニンが一人で後片付けをしていた姿をよく見かけたようです)、演奏も次第にさえないものとなっていたのですが、この60年代こそは彼らの絶頂期でした。
その重厚な響きと思いっきりルパートをかけてたっぷりと旋律を歌わせる芸風は若いの頃の私にはピッタリの演奏でした。
さらに言えば、クラリネットのカール・ライスターは数え切れないほど(・・・は、言い過ぎか^^;)この作品を録音していると思うのですが、おそらくこのアマデウス弦楽四重奏団との録音が彼にとってのこの作品の初録音ではなかったかと思います。

彼は基本的にはひたすら正確さを追い求める傾向があったと思うのですが、この時の録音では溌剌とした若さが溢れていて、その若さがアマデウス弦楽四重奏団の重厚でロマンティックな音楽と上手く解け合っているように思えるのです。それもまた、若い頃の私にはピッタリだったんだなと思う次第です。

そして、有り難いことに、若い時代に私が魅了されたこの2作品だけが1967年初出で、残りの作品は全て1968年初出であることに気づきました。
もちろん、残りの作品も全て魅力的な録音と演奏なのですが、パブリック・ドメインの世界からはこぼれ落ちてしまったことは残念ではあります。
しかし、若い頃の私を魅了したこの2作品の録音だけがギリギリのところでパブリック・ドメインの世界にすくい上げられたのは、まさに神のはからいとしか言いようがありません。

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