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ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21

(P)アレクサンダー・ブライロフスキー:シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽1954年11月29, 24日録音



Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [1.Maestoso]

Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [2.Larghetto]

Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21 [3.Allegro vivace]


僕は悲しいかな、僕の理想を発見したようだ

ナンバーリングは第2番となっていますが、ショパンにとって最初の協奏曲はこちらの方です。
1829年にウィーンにおいてピアニストデビューをはたしたショパンは、その大成功をうけてこの協奏曲の作曲に着手します。そして、よく知られているようにこの創作の原動力となったのは、ショパンにとっては初恋の女性であったコンスタンティア・グワドコフスカです。

第1番の協奏曲が彼女への追憶の音楽だとすれば、これはまさに彼女への憧れの音楽となっています。
とりわけ第2楽章のラルゲットは若きショパン以外の誰も書き得なかった瑞々しくも純真な憧れに満ちた音楽となっています。

「僕は悲しいかな、僕の理想を発見したようだ。この半年というもの、毎晩彼女を夢見るがまだ彼女とは一言も口をきいていない。あの人のことを想っているあいだに僕は僕の協奏曲のアダージョを書いた」
友人にこう書き送ったおくように、まさにこれこそが青年の初恋の音楽です。


  1. 第1楽章 Maestoso

  2. 第2楽章 Larghetto
    ショパンが恋心を抱いていた、コンスタンツィヤ・グワトコフスカへの想いを表現されている。まさに「初恋」の音楽です。

  3. 第3楽章 Allegro vivace




古き良きサロンの時代の面影

アレクサンダー・ブライロフスキーというピアニストは全く私の視野には入っていなかったのですが、最近、ミンシュの録音を追いかけていて出会いました。
そして、その録音を聞いてみて、あまりの「軽さ」に驚いてしまいました。そして、ミュンシュもまたその様な「軽い」ピアノに合わせて実に上手くフォローしているので、結果としてなかなかに「面白い」演奏に仕上がっています。

そこで、この「アレクサンダー・ブライロフスキー」なるピアニストについて調べてみたのですが、一言で言えば古き良きサロンの時代の演奏様式を受け継いでいるピアニストらしいのです。つまりは、額に皺を寄せて必死に音楽に取り組むような姿は見せず、基本的には汗の後は全く見せないで上品で洒落た雰囲気に仕上げることを自らのスタイルとして課しているようなのです。
言うまでもないことですが、表面上は汗も見せず、上品で洒落た味わいでピアノを鳴らしているからと言って、その裏で汗をかいていないわけではありません。俗なたとえですが、優雅におよぐ白鳥も水の中で必死に足を動かしているのです。

ただし、そう言う演奏スタイルはショパンのピアノ独奏曲を全曲演奏するという前代未聞の「ショパン・チクルス」を実施しようとすると、それは必須の演奏スタイルかもしれません。彼はその前代未聞とも言うべき「ショパン・チクルス」を何度も敢行しているのです。
確かに、眉間に皺を寄せて全力でピアノの鍵盤を叩いていては、全曲(169曲らしいです)を弾ききる前に体力も気力も尽きてダウンしてしまいます。

そして、活動の拠点をアメリカに移したときにも1938年にニュー・ヨークで「ショパン・チクルス」を実施しているのです。
その時に「こうした全曲演奏を成し遂げるために必要な並外れた記憶力、強靭な肉体的スタミナ、そして卓越した技術を兼ね備えたピアニストは何人もいるが、そうした要素に加えて優れた音楽性までを持ち合わせている者は数少ない。ブライロフスキーは間違いなくその数少ないピアニストの一人だ」と賞賛されたのですが、結果としてはそれがアメリカにおける彼の頂点だったようです。

おそらく、それ以後のアメリカを席巻していくのはホロヴィッツやルービンシュタインのような、ショーマン・シップに溢れたピアニストであり、汗をかいていないように見える上品で洒落た味わいのピアニズムは大衆から次第に支持されなくなっていったようなのです。それ故に、ヨーロッパ時代はかなりの名声を勝ち得たピアニストだったらしいのですが、アメリカでの活動は思うにまかせぬものがあったようです。

それでも、こうしてミュンシュ&ボストン響と言う最良のバックアップを得て古き良き時代を懐かしむようなな演奏を良質の音質で残してくれたことは有り難いことでした。
こういう軽さに溢れた上品なショパンやサン=サーンスというのはファースト・チョイスにはならないでしょうが、忘れ去られた時代に思いを馳せるには貴重な録音だと言えます。

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