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ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26

(Vn)イダ・ヘンデル:ラファエル・クーベリック指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1948年録音



Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [1.Vorspiel: Allegro moderato]

Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [2.Adagio]

Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [3.Finale: Allegro energico]


ブルッフについて

今日ではヴァイオリン協奏曲とスコットランド幻想曲、そしてコル・ニドライぐらいしか演奏される機会のない人です。ただし、ヴァイオリニストにとってはこの協奏曲はある種の思い入れのある作品のようです。
と言うのは、ヴァイオリンのレッスンをはじめると必ずと言っていいほど取り上げるのがこの協奏曲であり、発表会などでは一度は演奏した経験を持っているからだそうです。ただし、プロのコンサートで演奏される機会は決して多くはありません。
しかし、ロマン派の協奏曲らしくメランコリックでありながら結構ゴージャスな雰囲気もただよい、メンデルスゾーンの協奏曲と比べてもそれほど遜色はないように思います。

第1楽章
序奏に続いて独奏ヴァイオリンの自由なカデンツァが始まるのですが、最低音Gから一気に駆け上がっていくので聴き応え満点、けれん味たっぷりのオープニングです。力強い第一主題と優美な第二主題が展開されながら音楽は進んでいき、いわゆる再現部にはいるところでそれは省略して経過的なフレーズで静かに第2楽章に入っていくという構成になっています。(・・・と、思います^^;)

第2楽章
ここが一番魅力的な楽章でしょう。主に3つの美しいメロディが組み合わされて音楽は展開していきます。息の長い優美なフレーズにいつまでも浸っていたいと思わせるような音楽です。

第3楽章
序奏に続いて,独奏ヴァイオリンが勇壮なメロディを聞かせてくれてこの楽章はスタートします。。前の楽章の対照的な出だしを持ってくるのは定番、そして、展開部・再現部と続いてプレストのコーダで壮麗に終わるというおきまりのエンディングですが良くできています。


追悼 イダ・ヘンデル

イダ・ヘンデルが6月30日に亡くなりました。91歳だったそうです。
彼女は60年代以降はほとんど録音を行わず、さらに長くは来日もしなかったので日本では「幻のヴァイオリニスト」等ともよばれました。そんなヘンデルが初めて来日したのは1998年で、サイモン・ラトル指揮のバーミンガム市交響楽団のソリストとしてでした。そして、それを切っ掛けにその後はたびたび来日し、80歳を過ぎても高いヒールをはいて颯爽と舞台に登場する元気な姿を見せていました。

なお、彼女の年齢には諸説があって長く謎とされていたいました。それは父親が出生証明書を偽造して1923年生まれとしたからです。おそらく、1928年生まれではロンドンでのコンサートに出演するにはあまりにも若すぎたが故の偽造だったようです。
事実は1928年12月15日生まれだったようで、享年91歳というのが本当のようです。
長きにわたって多くの魅力溢れる音楽を残してくれたことに心からの感謝をおくりたいと思います。

そんな彼女への追悼として何を選ぼうかといろいろ考えた結果、ブルッフの協奏曲を選びました。おそらく、いろいろな意味でこの録音には彼女ならではの魅力が詰まっていると考えたからですし、サポートするのがクーベリックだからです。

イダ・ヘンデルはラファエル・クーベリックのことを深く敬愛し信頼していたと伝えられています。
私の手もとにも48年に録音したブルッフの協奏曲と51年に録音したベートーベンの協奏曲があります。両者ともにオーケストラはフィルハーモニア管です。

ラファエル・クーベリックは1948年のチェコスロバキア政変をきっかけにイギリスに亡命していますから、48年録音のブルッフの協奏曲はその亡命直後のものだと思われます。その後、1950年に色々な経緯の末にシカゴ響の音楽監督に就任するのですが、よく知られているように女性評論家クラウディア・キャシディから音楽とは全く関係ないことまで含めて徹底的に批判され、1953年にはその職を辞してヨーロッパに帰ってくることになります。

ですから、1951年のベートーベンの協奏曲はそう言う苦難のシカゴ時代に録音されたものと言うことになります。
なお、イダ・ヘンデルがどうしてクーベリックのことをそこまで信頼し、敬愛していたのかいろいろ調べてみたのですが理由は分かりませんでした。おそらく、1948年にクーベリックが西側に亡命するまでは両者に接点があったとは思えませんから、おそらく切っ掛けは48年に共演したブルッフの協奏曲においてでしょう・・、と、書きかけたのですが、さらに詳しく調べてみると1946年に両者はロイヤル・アルバート・ホールでチャイコフスキーの協奏曲を共演していたようなのです。
おそらくは、その時の共演がイダ・ヘンデルのクーベリックへの信頼と敬愛を生み出したのかもしれません。

この二つの録音で申し分なく聞きごたえがあるのはブルッフの方です。
そういえば、2003年に来日したときに大阪フィルとの共演でこの作品を演奏しています。聞いた人の話によると、さすがに年から来る技術の衰えはあったもののその濃厚な歌い回しは強く印象に残ったようです。その濃厚な歌い回しは「本物の骨董品」としての価値があると強く感じたそうです。間違ってもその骨董品にひびなどは入っていません。(^^;

ここで紹介している録音は、未だ20代の頃の録音です。今の耳からすれば多少荒い部分はあるものの、イダ・ヘンデルならではの天性の「歌心」に溢れた音楽を聞かせてくれます。

それと比べると、ベートーベンの方は残念ながら多少の物足りなさを感じざるをえません。
おそらく、彼女の魅力は、その「本能的に発揮される歌心」が作品の「歌心」とピッタリと同調したときに最大限に発揮されるのだろうと思います。しかし、ベートーベンの音楽では、どうもそう言う「本能的」なものだけでは物足りない部分が残ってしまうのです。
クーベリックのフォローも苦難のシカゴ時代と言うこともあるのか、今ひとつ支え切れていない感じがします。

それとも、もしかしたらイダ・ヘンデルの方が、尊敬するクーベリックと言うことでいつもの「我が儘」を思う存分発揮できずに終わったのかもしれません。
結果としてとてもオーソドックスで破綻のない演奏で終わっているので、そこにクーベリックの方の強い意志が感じられてしまうのです。

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