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ビゼー:組曲「美しきパースの娘」

エルネスト・アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1960年10月録音



Bizet:La Jolie Fille de Perth, orchestral suite [1.Prelude]

Bizet:La Jolie Fille de Perth, orchestral suite [2.Serenade]

Bizet:La Jolie Fille de Perth, orchestral suite [3.Marche]

Bizet:La Jolie Fille de Perth, orchestral suite [4.Danse Bohemienne]


ビゼーの若書きの作品

「美しきパースの娘」はフランス語読みでは「美しきペルトの娘」と読むらしいのですが、オペラの舞台となる「Perth」はスコットランドの古い町なので、現在では英語読みの「美しきパースの娘」の方が通りが言いようです。
ビゼーが28歳という若き時代の作品であり、彼が「カルメン」を書く8年ほど前の作品です。

オペラの原作はスコットランドを代表する小説家だったウォルター・スコットの「美しきパースの娘」であり、それに基づいて当時のパリでは有名な劇作家でもあったサン・ジョルジュと台本作家のジュール・アドゥニスが協力をして台本を作りあげました。
なお、このウォルター・スコットの「美しきパースの娘」は日本語訳が存在しないようなので、その内容はこの二人の台本作家による「美しきパースの娘」を頼りにするしかないのですが、サン・ジョルジュの作風は滑稽で軽いものが主であったオペラ・コミックが得意であったので、それがスコットランドの風土を背景とした原作とはかなりかけ離れている可能性は否定できません。

舞台は14世紀のパースの街で、手袋製造業者の娘である美しい娘カトリーヌをめぐって、ドン・ファン的な貴族であるロスセイ公爵と、彼女の恋人である素朴な村の若者ヘンリーが巻き起こすメロドラマ仕立てになっています。そのドラマの中にロスセイ公爵に匿われているジプシー(この前に別の作品でこの言葉を使うと、今は「ロマ」という言葉を使うべきだという指摘をいただきました。ご親切な忠告に感謝いたしますがこういう「言葉狩り」につながるような姿勢に無批判に従う事にはいささか疑問をもっていますので、敢えてこの言葉を尽かせていただきます。ご理解いただければ幸いです)の女王であるマブが、カトリーヌに言い寄る侯爵に嫉妬の炎を燃やすことでお話はいささか悲劇的な雰囲気をまといはじめるのですが、最後は聖バレンタインの祭の日に全ての誤解が解けてハッピー・エンドで終わります。

私が原作とこのオペラの間には乖離があるかもしれないと思うのは、このハッピー・エンドの終わり方にどうしても違和感を感じるからです。だいたいが、同じような物語でも舞台がスコットランドになると、その内容はより陰惨なものになります。その典型が「ロメオとジュリエット」でしょう。あれが、スコットランドをを舞台になると「ランメルモールのルチア」になります。
この「美しきペルトの娘」でも、最後にカトリーヌが正気を失ったままに狂乱すれば極めてスコットランド的だと思うのですが、それはいささか私の偏見に過ぎるのでしょうか。(^^;

なお、このオペラはパリのテアトル・リリック座で初演されそこそこの成功をおさめるのですが、結局は忘れ去られる作品の一つとなってしまいます。全曲版としては、おそらくジョルジュ・プレートルが録音したものくらいしか思いつきません。

しかし、ビゼーはこのオペラから4曲を選び出して管弦楽曲に仕立て直して組曲「美しきパースの娘」を書き上げました。ビゼーの若書きの作品ではあるのですが、幸いにしてこちらの方は今もビゼーを代表する作品として数多く演奏もされ、録音もされています。
そして、そのオーケストレーションの美しさには後のビゼーを思わせる片鱗が散りばめられています。

  1. 前奏曲
    極限ともいえるピアニシモで始まる弦楽器のピッティカートとハープによって奏でられる冒頭部分から最後まで、静かな雰囲気で歌われます。

  2. セレナード
    管楽器の伴奏を得てチェロが美しくセレナードを歌い上げます。

  3. 行進曲
    ファゴットが歌う悲しげな旋律から始まるのですが、そこからクライマックスへと上りつめていく音楽にはスコットランドの荒涼たる大地を思わせる佇まいがあります。

  4. ジプシーの踊り
    ビゼーが生涯好んだフルートが奏でる主題をハープが支えるというスタイルが早くもこの時期に顔を出しています。アンダンティーノからプレストへ、ピアニシモからフォルテシモへと言うダイナミックな動きは言うまでもなく、見事なオーケストレーションによる豊かな色彩感もまた魅力的です。
    なお、この作品はバレエが大好きなフランスでは「カルメン」の終幕にバレエを挿入するときには慣習的に用いられてきました。




地中海的な陽光に溢れた音楽であり、爽やかな乾いた風が吹き抜けていくような音楽でもあります

同じ顔ぶれによるビゼーの交響曲を紹介したときには「実にあっさりと、そしてサラッとした感じで仕上げています。よく言えばラテン的な明晰さに溢れていると言えますが、悪く言えばいささか素っ気なくも聞こえます。」と書きました。
それと比べるならば、58年に録音されたカルメンとアルルの女の組曲はさらにラテン的な明晰さに溢れていて、それ故に素っ気ないと感じる場面もほとんどありませんでした。それと同じ事が、この「美しきパースの娘」や「祖国」にも同じ事がいえそうです。

例えてみれば、それは地中海的な陽光に溢れた音楽であり、爽やかな乾いた風が吹き抜けていくような音楽でもあります。

それにしても、オーケストラのバランスを完璧にコントロールしていくアンセルメの手腕には驚かされます。
アンセルメと手兵のスイス・ロマンド管弦楽団が始めて来日したときには、録音で聞くことができた完璧なバランスとはほど遠いものだったので、あの絶妙なバランスは録音によるマジックだと言われたものです。しかしながら、「Decca」録音は基本的にワンポイント的なスタイルを守り続けていましたから、編集の段階でオーケストラの個々の楽器のバランスを手直しすることは不可能でした。

アンセルメは最後までマルチ・トラックによる録音を嫌いました。
何故ならば、スタジオ録音において、オーケストラのバランスを整えるのは録音エンジニアの仕事ではなくて指揮者の仕事だと考えていたからです。ですから、彼が録音スタッフに要求したことは、自分が作りあげたその完璧なバランスを出来る限り正確に拾い上げることだったのです。

実際、そのバランスに関するアンセルメの耳の良さは驚異的だったとカルショーも述懐しています。
若き時代に「バランスのセル」とまで言われたジョージ・セルと較べても劣る部分は全くなかっただけでなく、「Decca」の音の良さの最大の原因は「ffrr」などという録音技術によるだけでなく、何よりもアンセルメがつくり出す音の良さに負うところが大きかったとまで言い切っているのです。

アンセルメという指揮者は理知的な指揮者だと言われたのですが、おそらくはその理知的なことの良さが最大限に発揮されたのがこの一連のビゼー作品でしょう。

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