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カーゾン(Clifford Curzon)|ブラームス:ピアノ四重奏曲第2番 イ長調
ブラームス:ピアノ四重奏曲第2番 イ長調
(P)カーゾン ブダペスト弦楽四重奏団 1952年4月28〜29日録音
Brahms:ピアノ四重奏曲第2番「第1楽章」
Brahms:ピアノ四重奏曲第2番「第2楽章」
Brahms:ピアノ四重奏曲第2番「第3楽章」
Brahms:ピアノ四重奏曲第2番「第4楽章」
一番人気のないピアノ四重奏曲

ブラームスは生涯に3曲のピアノ四重奏曲を作曲していますが、そのうちの二つは作品番号が25と26ということで、対のような形で創作されています。(op25が第1番で、op26が第2番となっています)もう一つは、「ヴェルテル四重奏曲」と呼ばれることもある第3番の四重奏曲で、恩人であるシューマンの自殺とクララに対する実らぬ愛への痛惜の思いが反映した作品です。この第3番は完成したのは一番遅いのですが、着想されたのはシューマンがライン川に投身自殺を図った時期にまで遡るといわれています。
ここでお聞きいただいているのは、第2番の四重奏曲なのですが、3曲の中ではもっとも人気の薄い作品です。
ブラームスは同じ楽器編成による作品を対で書いたときには、その性格が対照的なものになることが一般的でした。この第1番と第2番の四重奏曲でもその法則性がぴったりと当てはまります。
まず調性からいっても、第1番が暗い色彩に彩られたト短調であるのに対して、第2番は輝かしいイ長調です。様式的にも第1番ではいろいろと斬新な試みを導入しているのに対して(例えば、最終楽章にツィゴイナー風のロンドと題されるようなプレストを持ってくるとか・・・)、第2番の方は至ってオーソドックスです。(アレグローアダージョースケルツォーアレグロ)
独創性にあふれていて、さらに哀愁に満ちたロマン派好みの第1番に対して、いかにもブラームスらしい地味で手堅い第2番という対比のさせ方も可能です。さらに下手をすれば演奏時間が50分に近くなってしまう第2番は、どう考えてもポピュラリティを獲得するのは難しいようです。
しかし、じっくりと耳を傾けてみれば、実に多彩な材料が駆使されているにもかかわらず、それらが決して散漫になることなく緊密な構成を維持していることや、ピアノと弦楽器のバランスには細心の注意が払われていて、決してピアノが全体を圧倒してしまわないように巧妙に組み立てられている点などは、さすがにブラームスの練達の技がうかがえます。
同じ楽器編成のモーツァルトの作品を演奏するときは、ピアニストがよほどのバランス感覚をもって演奏しないとピアノが弦を圧倒してしまうらしいのですが、ブラームスの場合はピアノにも十分に活躍させながら、それでいて弦とのバランスが決して崩れないように書かれているという話を聞いたことがあります。(私は演奏はしないので、自分で確かめたわけではないのですが・・・)
そういう玄人好みの作品ではるだけに、ゆったりと音の流れに身を浸すには相応しい音楽だといえるかもしれません。
セルが認めたピアニスト
この人、本当に録音がキライだったようで、そのためにごく一部のピアノ好きな人の間でしかその存在は認知されていませんでした。
有名だったのはセルとのコンビで録音したブラームスのピアノコンチェルトの1番。これはセルのバックがとびきり素晴らしいのですが、それに応えるカーゾンのピアノも素晴らしくて、掛け値なしにこの作品の決定盤的位置にありましたし、その位置は現在においても不動です。
ですから、かなりのピアニストであることは想像はつくのですが、如何せん録音があまりにも少なすぎました。
とにかくスタジオの録音ブースに閉じこめられることが大嫌いな人だったようです。かといって、ライブのコンサートを録音しようとしても、いわゆる大衆受けをするような派手なパフォーマンスとは無縁の人ですから、デッカのプロデューサーをして、「カーゾンのピアノの素晴らしさを録音することは空を飛ぶ小鳥を捕まるよりも難しい」と嘆かせたものでした。
そんなカーゾンに再び脚光が当たり始めたのは、セルの再評価が進むのと並行していました。その売り文句は、「あのセルが認めた数少ないピアニスト」でした。
セルがピアニストに対する選り好みに関してどれほど厳しかったが知られるようになるにつれて、そのセルが認めたカーゾンという聞き慣れないピアニストってどんなんだろう?という興味から録音探しが始まったように思います。そして、需要があれば供給が発生するのがこの業界ですから、今まで倉庫の奥に眠っていた録音が次々と発掘されるようになり、その結果として多くの人がカーゾンの凄さを再認識するようになったというわけです。
カーゾンのピアノと聞いていると、セルと共通する部分が大きいことに気づかされます。
まず、バランスがいいです。その資質はこのような室内楽を演奏するときにはかけがえのない美質となります。ピアノというのはその気になれば、他の楽器を圧倒して弾き倒してしまうことも可能な楽器ですから、このバランス感覚はきわめて重要です。
カーゾンのピアノは常に抑制されています。そして、造形を決して崩すことなく常に端正です。しかし、リズムは決して硬直することなく躍動感にあふれています。
これを愛想がないと思う人はきっとセルもお気に召さないことでしょう。
それほどこの二人は似通っています。
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