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グリーグ:ペール・ギュント組曲 第1番 Op.46&ソルヴェイグの歌

ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 1966年1月21日録音



Grieg:Peer Gyn Suite1, Op46 [1.Morning Mood]

Grieg:Peer Gyn Suite1, Op46 [2.Ase's Death]

Grieg:Peer Gyn Suite1, Op46 [3.Anitra's Dance]

Grieg:Peer Gyn Suite2, Op55 [4.Solveig's Song]

Grieg:Peer Gyn Suite1, Op46 [5.In the Hall of the Mountain King]


今では組曲の方が有名になってしまいました。

イプセンが書いた詩劇「ペールギュント」はノルウェーに古くから伝わる民話を素材としていますが、簡単に言えば、とんでもない身勝手な男とそんな馬鹿な男を支えて待ち続ける純情な女の物語です。
ワーグナーなんかが典型なのですが、どうもこういう「とんでもない男の身勝手」というモチーフが西洋人は好きなようです。
登場するのは道楽の果てに財産を使い果たした馬鹿親父を持つ大ボラふきのペールと、そんな馬鹿息子を溺愛する馬鹿母のオーゼです。(凄い一家です^^;)
そして、そんなペールに心を寄せる「純情な娘・・・ソルヴェイグ」がこの物語の主要な登場人物です。

物語はペールの波乱に満ちた人生を縦糸に、そんなペールを信じて待ち続けるソルヴェイグを横糸として展開されていきます。

ペールはソルヴェイグという恋人がいながら幼なじみだったイングリットを結婚式の場から奪って逃げたり、国際的な山師となってモロッコの皇帝の財宝をだまし取ったり、カリフォルニアで大金持ちになったりします。
しかし、せっかく奪ったイングリッドなのにあきて捨ててしまったために山の魔物に酷い目にあわされたり、だまし取った財宝を色仕掛け(アニトラのお踊り)でだましたられたり、せっかくの財宝も船が難破して全て失ったりしてしまいます。

そしてようやくにして帰り着いた故郷では盲目になりながらもソルヴェイグが彼の帰りを待ち続け、そんなソルヴェイグに許しを請いながら安らかな最期を迎えるというお話です。(何という荒っぽいあらすじ・・・_(_^_)_ ゴメンチャイ)

グリーグはそんなとんでもないお話に音楽をつけるのは心がすすまなかったようですが、頼まれると嫌といえない性格だったのか、苦労しながら28曲の音楽を作曲します。そして、その28曲の中から4曲ずつ「お気に入り」を抜き出し、オーケストレーションなどを手直しして1888年に第1組曲、1892年に第2組曲を作曲します。

現在では本家の詩劇の方はほとんど読まれることもなく、そのために全曲版の方も滅多に演奏されません。
しかし、組曲の方は見方によっては4楽章構成の交響曲のように見えなくもない(見えないか・・・^^;)まとまりの良さもあって、現在ではグリーグを代表する作品としてよくコンサートでも取り上げられます。

第1組曲

  1. 前奏曲「朝の気分」 第4幕の前奏曲(No.13)

  2. 「オーゼの死」 第3幕前奏曲・第3幕第4場(No.12)

  3. 「アニトラの踊り」 第4幕第6場(No.16)

  4. 「山の魔王の宮殿にて」 第2幕第6場の開始(No.8)



第2組曲

  1. 前奏曲「花嫁の略奪とイングリッドの嘆き」 第2幕の前奏曲(No.4)

  2. 「アラビアの踊り』 第4幕第6場(No.15)

  3. 前奏曲「ペールギュントの帰郷」 第5幕の前奏曲(No.21)

  4. 「ソルヴェイグの歌」 第5幕第5場(No.23)




このコンビが成し遂げた偉業の凄みをひしひしと感じてしまう

このグリーグの「ペール・ギュント組曲」とビゼーの「アルルの女組曲」もすでにパブリック・ドメインになっていました。1966年に「Two Favorite Suites」というタイトルのアルバムがリリースされていました。
しかし、この2つの組曲の選曲の仕方がいささか変わっています。

まずはグリーグの方なのですが以下のようになっています。

  1. 前奏曲「朝の気分」 第4幕の前奏曲(No.13)

  2. 「オーゼの死」 第3幕前奏曲・第3幕第4場(No.12)

  3. 「アニトラの踊り」 第4幕第6場(No.16)

  4. 「ソルヴェイグの歌」 第5幕第5場(No.23)[第2組曲より]

  5. 「山の魔王の宮殿にて」 第2幕第6場の開始(No.8)


つまりは、第1組曲の「アニトラの踊り」と「山の魔王の宮殿にて」の間に、第2組曲に含まれる「ソルヴェイグの歌」を挟み込んでいるのです。
ビゼーの「アルルの女組曲」も同じようにいささか変則的で、第1組曲の最後に第2組曲の最終曲である「ファランドール」を追加しているのです。

  1. 前奏曲

  2. メヌエット

  3. アダージェット

  4. カリヨン

  5. ファランドール(第2組曲)


つまりは、両方ともに第1組曲をベースにしながら、第2組曲に含まれる「一番美味しいところ」を入れ込んでいるのです。
グリーグの「ペール・ギュント組曲」は言うまでもないことですが、ビゼーの「アルルの女第1組曲」もまた作曲家自身が組曲に仕立て上げたものですから、これは明らかに「原典尊重」という大義名分から言えば明らかに逸脱行為です。そして、セルと言えば「原典尊重の鬼」みたいに言われるのですが、そう言う決めつけ方がいかに安直なものかがよく分かります。

セルにとって「原典」を尊重して完璧な演奏を目指すのはそれによってお客が喜ぶからであって、その逆ではないのです。そして、おそらくはグリーグもビゼーも第1組曲だけでは物足りなさを聞き手が感じるとセルは思ったが故に、第2組曲から美味しいところを追加したのでしょう。

そして、久しぶりにこの二つの録音を聞いてみて、60年代の後半に入るにつれて少しずつセルのスタンスに変化が起きてきたことを痛感させられました。
おかしな喩えになるのですが、この作品はフィギア・スケートに例えるならば基礎点が高い難度の高い技ではありません。おそらくは、スピンやステップのような地味な技かもしれません。
しかし、どれほど難度の高いジャンプを決めても、スピンやステップのような基本的な技を完璧にこなして加点をしていかなければ高得点は期待できません。つまりは4回転ジャンプやトリプル・アクセルだけが全てではないのです。

そして、ここでのセル&クリーブランド管による演奏は、そう言う基本的な部分が驚くほどの完成度で仕上げられているのです。それは、指の先までと言う以上に、まさにその先の爪の先まで集中力が行き届いているという感じです。それは、下手をすれば簡単に弾きとばしてしまいそうな叙情的な旋律においてこそ、その最大限の集中力が発揮されています。
そして、驚くべきは、その極限ともいえるような集中力がセルという指揮者のコントロール下のもとで為されているのではなくて、まるでクリーブランド管のメンバー一人ひとりの自主性によって成し遂げられているように聞こえることです。

もちろん、だからといってセルが何もしていないわけではありません。おそらくは、定期演奏会と、そのあとに行われたであろうこの録音のために入念なリハーサルは繰り返されたはずです。にも関わらず、クリーブランド管はその驚くほどの完成度の高い演奏を自らの意志によって成し遂げているように錯覚させるまでの完成度に達しているのです。

そして、こういうグリーグやビゼーの作品を「何ということもない小品」と言えば失礼だとは思うのですが、それ故にこそこのコンビが成し遂げた偉業の凄みをひしひしと感じてしまうのです。

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