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イダ・ヘンデル(Ida Haendel)|ヴィエニャフスキ:スケルツォ-タランテラ/2つのマズルカ第1番「オベルタス」/華麗なるポロネーズ
ヴィエニャフスキ:スケルツォ-タランテラ/2つのマズルカ第1番「オベルタス」/華麗なるポロネーズ
(Vn)イダ・ヘンデル:(P)アルフレード・ホレチェク 1962年録音
Henryk Wieniawski:Scherzo Tarantelle, Op.16
Henryk Wieniawski:Polonaise de Concerto in D Major, Op.4(Live)
Henryk Wieniawski:Mazurka "Obertass", Op19 No.1(Live)
バイオリンのショパン

ヴィエニャフスキはポーランド出身ののヴァイオリニストで、8歳でパリ音楽院に入学し、13歳で独立した演奏家として広く欧米を巡演したという早熟の天才でした。そして、当時の常識に従って自らの名人芸を披露するために新しい音楽を次々と生み出して、その作品をコンサートで次々と披露して生活をしてく事になった「作曲家」です
そして、その様な音楽家の頂点に君臨したのが、ヴァイオリンではパガニーニであり、ピアノではリストだったのです。
クラシック音楽の歴史というのは、そうやって次々と生み出された膨大な作品の中から、時間という絶対者によって淘汰された一握りの作品によって構成されていることに注意しておく必要があります。
今という時代から振り返ってみれば、パガニーニやリストの名前はいささか色あせて見えてしまいます。
しかし、いかに色あせて見えても、彼らの作品と名前は後世に残りましたし、ヴィエニャフスキの作品も今日にコンサートプログラムを彩る作品として数多く残りました。
もちろん、クラシック音楽の歴史の中で燦然と輝くベートーベンやブラームスの作品と較べれば見劣りはするでしょうが、それでも18世紀から19世紀にかけて、数多くの巨匠たちが自らのコンサートのために生み出した音楽の大部分は、その時々のコンサートでは多くの聴衆を熱狂させながら、やがてはそれが存在したことすら忘れ去られて永遠に歴史の闇のかに消えていきました。
しかし、それらに対して、ヴィエニャフスキの作品は数は少なくても生き残ったのです。
クラシック音楽の世界では、19世紀も終わろうかとする頃から、同時代性を失っていきます。コンサートは巨匠たちの名人芸を楽しむ場から、演奏するに値する、逆からみれば鑑賞するに値する「すぐれた音楽作品」だけが取り上げられる場に変わっていったのです。そう言う歴史を振り返ってみれば、それでもなお生き残ったヴィエニャフスキやヴィオッティ、ヴュータンなんかは、やはり偉かったのです。
ただし、ヴィエニャフスキはヴィオッティやヴュータンと較べれば残した協奏曲はわずか2曲と少ないのですが、マズルカやポロネーズを取り入れた独奏曲をたくさん残しています。ですから、時に彼の事を「バイオリンのショパン」と呼ぶ人もいるようです。
そんなヴィエニャフスキの作品の中でも有名なのが、この「スケルツォ・タランテラ」です。
三部形式のこの作品は8滑らかなボーイングが要求されるとともに、重音とフラジオレットを組み合わせるなどという、ヴァイオリンのテクニックの見本市のような作品になっています。また、中間部では「歌わせる」事も求められていますから、ヴァイオリニストにとっては自らの技巧を誇示するにはもってこいの作品だといえます。
作品と向かい合ってそこに何を感じ取れるかこそが大切
イダ・ヘンデルは録音嫌いとよく言われるのですが、先にも紹介したように、初めてDeccaと録音契約したときにスタッフからクリスマスに犬を贈られ、その後も彼女は犬を常に飼い続けその名前はいつも「Decca」でした。
ですから、レコード会写との関係、とりわけ「Decca」との関係は悪くなかったと推測はされるのですが、何故か極端に録音が少ないのもまた事実です。
しかし、最近は60年代のライブ録音が少しずつ世に出回りはじめました。録音から50年が経過してパブリック・ドメインとなっることで世に出始めました。
ここで取り上げているヴィエニャフスキの「ポロネーズ」や「マズルカ」はその様なライブ録音の一つです。
それから、紹介に使った音源には「スケルツォ-タランテラ」もライブ録音と記されていたのですが、これは間違いなくスタジオでの録音です。これ以外にも、パガニーニの「モーゼ幻想曲」、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」などもスタジオ録音のようなのですが、よくぞ録音してくれたものです。
そして、ハイフェッツの「スケルツォ-タランテラ」の録音を紹介したときにも少しふれたのですが、この「スケルツォ-タランテラ」の演奏は実に素晴らしいものです。もちろん、一音たりとも曖昧にしないハイフェッツの演奏と較べれば少しは曖昧な部分はありますが、同時代のヴァイオリニストと較べてみればテクニック的には十分に賞賛に値します。言うまでもないことですが、ハイフェッツを比較の対象に持ってくるのが間違っているのです。
ただし、彼女の演奏にはハイフェッツにはないものがあります。それは、このヴァイオリン技法の誇示を目的としたような「スケルツォ-タランテラ」のような作品であっても、そこに何ともいえない「色気」が感じられて、それが鮮やかなテクニックと出会うときに音楽は「妖艶」とも言いたくなるような世界を見せてくれることです。
それはまさに、イダ・ヘンデルというヴァイオリニストが本能的に感じとった「スケルツォ-タランテラ」の世界であり、それに気づくことで逆にハイフェッツの凄さにもあらためて気づかせてくれたのでした。
また、同じヴィエニャフスキの作品であるマズルカやポロネーズははじめて聞く作品なのであまり確信を持ってはいえないのですが、それでも「ヴァイオリンのショパン」とも呼ばれたヴィエニャフスキらしい色気のある音楽に仕上げているように思えます。
また、さらに感心したのはパガニーニの「モーゼ幻想曲」です。
これもまた始めて聞く作品だったのですが、あのパガニーニがこのような叙情的なメロディを書いていたのかと驚かされました。そして、その演奏で見せるイダ・ヘンデルの妖艶さは見事なものです。そして、パガニーニの作品なんだからこのまま終わるはずはないだろうと期待していると、パガニーニも、そして演奏するイダ・ヘンデルもその期待に見事に答えてくれる締めくくりでこの作品を仕上げています。
そして、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」ですが、これはほぼヴィエニャフスキの「スケルツォ-タランテラ」を聞いたときに感じたことがより強く感じられます。とりわけ中間部における叙情的な部分における色気、とりわけ弱音部の歌わせ方にはゾクッとするような怪しげな魅力があふれています。
なるほど、演奏家と言うのはテクニックが大切なのではなくて、作品と向かい合ってそこに何を感じ取れるかこそが大切であり、その感じ取ったものを聞き手に伝えるためにどのようにテクニックを駆使するかが大切だと言うことを教えてもらった録音でした。
収録作品
- ヴィエニャフスキ:スケルツォ-タランテラ Op.16
- ヴィエニャフスキ:2つのマズルカ Op.19より第1番「オベルタス」
- ヴィエニャフスキ:華麗なるポロネーズ Op.4
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