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ラヴェル:歌劇「子供と魔法」

エルネスト・アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 ジュネーヴ・モテット合唱団(指揮/ジャック・オルネフェール) (S)シュザンヌ・ダンコ他 1954年10月録音



Ravel:L'Enfant et les sortileges [Premiere Partie:1.Introduction:"J'ai pas envie de faire ma page" L'Enfant]

Ravel:L'Enfant et les sortileges [Premiere Partie:2."Votre serviteur humble, Bergere" Le fauteuil]

Ravel:L'Enfant et les sortileges [Premiere Partie:3."Oh! Ma bella tasse chinoise" L'Enfant]

Ravel:L'Enfant et les sortileges [Premiere Partie:4."Ah! C'est Elle! C'est Elle!" L'Enfant]

Ravel:L'Enfant et les sortileges [Premiere Partie:5."Deux robinets coulent dan un reservoir" Le petit viellard]

Ravel:L'Enfant et les sortileges [Deuxieme Partie:1."Ah! C'est joie de te retrouver, Jardin!" L'Enfant]

Ravel:L'Enfant et les sortileges [Deuxieme Partie:2.Danse des rainettes]

Ravel:L'Enfant et les sortileges [Deuxieme Partie:3."Ah! C'est l'enfant au couteau!" Les betes et les arbres]


後期ロマン派の爛熟したオペラの後に登場した全く新しいスタイルのオペラ

ラヴェルは爛熟した後期ロマン派の巨大なオペラの後に、それらとは全く異なったスタイルで二つのオペラを書きました。一つは、第1次世界大戦の前に書かれた「スペインの時」であり、他方はその大戦で深い心の傷を負った後に書かれた「子供と魔法」でした。
「スペインの時」では大袈裟なアリアや合唱ではなくて、言葉というものが持っている自然な演劇性を音楽の中に取り込むことに成功しました。そして、「ファンタジー・リリック」とよばれた「子供と魔法」ではバレエの要素とオペラの要素を上手い具合に折衷することで今までにない絵画的で幻想的な世界を作りあげました。

「子供と魔法は」大きく分けると二つの場面に分かれます。
まず最初は、いやいや宿題をやっている子供が母親に叱られ、その腹立ちから「ボクはとっても悪い子なんだ」と言っていたずらの限りを尽くす場面です。
ティーポットと茶碗を投げつけて割る、栗鼠のかごを開けて栗鼠をペンで突き刺そうとする、安楽椅子に隠れていた猫のしっぽを引っ張る、暖炉の火をかき回してヤカンをひっくりかえしもうもうたる灰かぐらにする、牧童たちを描いた壁紙を破く、大時計の振り子をもぎ取る、テーブルの上のノートをびりびりに破く、という次第です。
そして、そんないたずらに飽きた子供は安楽椅子に座ろうとすると、安楽椅子は後ずさりをして小さな肘掛け椅子と踊り始め「もういたずら坊やから解放された」と歌うとほかの家具たちが一斉に「坊やはまっぴら」と答えるのです。

すると、子供のいたずらで酷い目にあったものたちが次々と姿をあらわします。

茶碗とティーポットが床から姿を現すとボクシングの構えで坊やを脅します。茶碗は「ハラキリ、雪舟、早川・・・」と意味不明の歌を歌います。そして、二人は1920年代に流行したフォックス・トロットを踊りながら姿を消します。
日が沈み夕焼けで空が赤くなると、暖炉の火は子供をめがけて火花を散らして踊り始めまるのですが、いつか燃えやんで部屋は暗くなります。
やがて、窓の外には星が瞬き始めると子供は「こわい」とつぶやき、壁に紙描かれていたものたちが姿を現して「いたずら坊やが引き裂いてしまったから、もう僕たちはさよならをするんだ」と言って消え去っていきます。
子供は破いたノートに顔を伏せて泣いていると、そこからおとぎ話に出てくるようなかわいいお姫様があらわれます。しかし、お姫様は「あなたが本を破いてしまったから、悪い魔法使いが私を死の眠りにつかせようとするの」と言うのです。子供はその悪い魔法使いと戦おうとするのですが、お姫様は地下にすいこまれてしまいます。
子供はおとぎ話のおしまいを探そうとするのですが、意地悪な小さな数字たちがあらわれて算数の問題を歌いながら子供のまわりで踊り狂います。その輪舞の中で子供は目を回して倒れてしまうのです。
やがて目覚めた子供の前に白猫と黒猫が現れて、二重唱を歌いながら庭へと誘います。

第2部は、満月の光に照らされた明るい庭の場面で始まるのですが、音楽は切れ目なく続きます。
今度は子供によって酷い目にあった木々や蜻蛉、こうもり、栗鼠、蛙たちが登場します。

木は「わしの傷。お前が昨日ナイフでつけた傷」とうめきます。子供は可哀想になって木々の幹に頬ずりをします。
蜻蛉は「あの虫取り網。僕の彼女を捕らえてしまった。恋人をかえして。」とうたうと、蝙蝠も「私のつれあいをかえせ」と叫びます。子供は彼らに謝ります。
栗鼠は籠に捕らえられた悲しみを歌うと、やがて動物たちは互いに抱き合って庭は愛と喜びの園へとかわっていきます。それを見た子供は「僕はひとりぼっちだ」といい、思わず「ママ」と叫んでしまいます。その声に一瞬動物たちは立ち止まるのですが。やがて「いたずら坊やめ、こらしめなければ」と一斉に子供に飛びかかります。そして、子供は舞台の隅にはじき飛ばされ、その騒ぎの中で栗鼠は傷ついてしまいます。
子供は思わず首のリボンを外して傷ついた栗鼠の足に包帯をしてやると、力尽きてがっくりと倒れてしまいます。

やがて動物たちは「坊やは傷に包帯をしてやった」「坊やは怪我をしている」「坊やは一言ママと呼んだ」と言い合います。そして、動物たちも低い声で「ママ」と呼び、子供を抱きあげて家に連れて行こうとします。「ママ、ママ」という動物たちの声が少しずつ大きくなっていくと、家の窓に明かりがともり、月の光が庭いっぱいに満ちていきます。
「坊やの血は止まった。坊やはほんとうにいい子。」というと、動物たちは次第に遠ざかっていきます。やがて、坊やは一人立ちあがると音楽は次第に静まり、「ママ」と呼びかけて何の後奏もなく幕はおります。


アンセルメという指揮者の美質の全てがつまった録音

先にイッセルシュテットの60年のライブ録音がモノラルだと言うことを嘆いたのですが、このアンセルメの54年に録音された「子供と魔法」はステレオ録音です。それも、驚くほどに優秀なステレオ録音なのです。
もちろん、イッセルシュテットの方はライブ録音、アンセルメの方はスタジオ録音という違いはあるのですが、改めて「EMI」と「Decca」の違いというものを感じさせられます。

「Decca」にとって、ステレオによる一番最初の商業用録音はアンセルメ指揮によるボロディンの交響曲第2番でした。それは、1954年10月に録音したものですから、この「子供と魔法」はそれに続いて録音されたものと思われます。そして、そのクオリティの高さを耳にすれば、この一番最初の時期から「Decca」のステレオ録音の技術はほぼ完成していたことが分かります。

カルショーの回想によれば、「Decca」のステレオ録音は当初は演奏者に気づかれないように別のブースで隠れて行われたと言うことです。その理由は、モノラルとステレオという二つの異なる録音を行っていることがばれると、演奏家の方からギャラの増額を要求されることを恐れたからだというのです。そして、この「隠れた録音」も、ステレオ再生が出来るレコードが登場すると隠し続けるわけにもいかなくなるのですが、それが表に出ても演奏家たちはギャラの増額などは一切要求しなかったというのです。
カルショーはその自伝では幾つかの例外を除けば演奏家に対する辛口の批評は避けているのですが、「Decca」の二人の経営者に関しては、とりわけスイスに本拠を置いていたローゼンガルテンに対しては容赦のない言葉を連ねています。それは、両者の関係をを反映したものであり、それ故にその辛口に関しては幾分かは割り引いて受け取る必要はあるのですが、それでも「Decca」の録音スタッフはステレオによる録音に関しては演奏家に気づかれないように「こっそり」と仕事をすることを強いられたことは事実のようです。

当時、録音の本線はモノラルでしたから、大物のプロデューサーやエンジニアはそちらを担当し、ステレオという新しい技術に取り組んだのは若手のスタッフでした。彼らは、屋根裏部屋のような場所にひっそりと身を隠して、この上もない不自由な中でステレオという新しい技術に取り組んだのですが、そこには新しい時代を切り開こうとする意気込みが漲っています。
そして、そんな若手にとって幸運だったのは、アンセルメというオーケストラのバランスを取る上では稀代のと言っていいほどの優れた耳を持った指揮者が指揮棒を振っていたと言うことです。アンセルメは、録音技術がどれほど発展していっても、オーケストラのバランスを取るのは録音エンジニアの仕事ではなくて指揮者の仕事だという信念を崩さなかったのは有名な話です。
この最初期のステレオ録音はおそらくは3本のマイクだけで収録されているはずですから、編集の段階で楽器間の音量バランスを調整することは不可能です。ですから、ここで鳴り響いているオーケストラのバランスはそのままスタジオで鳴り響いていたバランスそのままなのです。録音エンジニアに出来ることは、まさにそうして鳴り響いているオーケストラと歌声をあるがまま好き上げて刻み込むだけなのです。ステレオ録音の黎明期にその様な指揮者を抱えていたことが「Decca」の幸運でもあったのでしょう。

しかしながら、この短いオペラには「ファンタジー・リリック」と呼ばれていますから、ここまでクッキリとエッジを立てて明暗が浮かび上がるようにしなくてもいいだろうという人はいるでしょう。もう少し柔らかな幻想性が表に出てもいいのではないかという人もいるかもしれません。
しかしながら、ここには理知的な指揮者と言われたアンセルメの特徴が詰め込まれています。それは、よくも悪くもアンセルメという指揮者の美質の全てがつまった録音でもあるのです。
それは、幻想性とは表面的な柔らかさがもたらすだけではなくて、精緻さがもたらす幻想性というものもあることを教えてくれるのです。

そして、そう言うアンセルメの音楽を支えているのがシュザンヌ・ダンコやピエール・モレ、フロール・ワンなどの素晴らしい歌声です。その二つが出会うことによって、この録音は60年以上の時が経てもスタンダードの地位を失うことはないのです。

主な配役




  1. 子供:フロール・ワン(メッゾ・ソプラノ)

  2. 母、中国茶碗、蜻蛉:マリ=リーズ・ド・モンモラン(アルト)

  3. ソファ、牝猫、蝙蝠:ジュヌヴィエーヌ・トゥレーヌ(ソプラノ)

  4. 火、夜鶯:アドリエンウ・ミリエット(アルト)

  5. 姫、栗鼠:シュザンヌ・ダンコ(ソプラノ)

  6. 梟、羊飼:ジュリエット・ビーズ(ソプラノ)

  7. 羊飼女:ジゼル・ボビリエ(ソプラノ)

  8. ティーカップ、小柄な老人(算術)、蛙:ユーグ・キュエノー(テノール)

  9. 大時計、牡猫:ピエール・モレ(バリトン)

  10. 肘掛椅子、樹:リュシアン・ロヴァノ(バス)


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