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バルトーク:「舞踏組曲」 Sz.77

ゲオルク・ショルティ指揮 ロンドン交響楽団 1952年11月録音



Bartok:Dance Suite, Sz.77


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バルトークらしい強烈なリズムの推進力は聞くものを圧倒します

1923年の夏、ブダペスト市の合併市政50周年記念音楽祭のために作曲された作品で、バルトークは後年、「ハンガリーとその周辺諸国民の連帯という意図を込めて作曲した」と語っています。

バルトーク自身の言葉によれば、第1舞曲の「Moderato」では「部分的に東洋・アラブ風」の旋律が、第2舞曲「Allegro molto」では「ハンガリー風」、第3舞曲「Allegro vivace」では「ハンガリー・ルーマニア(特にリズムで)・アラブのそれぞれの要素」が、そして、第4舞曲「Molto tranquillo」の「夜の音楽」を思わせる静かな舞曲ではアラブ風の旋律が用いられているとのことです。
もちろん、第5舞曲「Comodo」のように、「非常に原始的な舞曲でどこに由来するとも言えない」旋律が用いられているものもあります。

ただし、「どこに由来するとも言えない」ような部分を含みながらも、バルトーク作品に共通する取っつきにくさは希薄です。
バルトークはこの後にピアノ協奏曲の1番や2番、弦楽4重奏曲の3番や4番などを生み出していくのですが、そう言う作品と較べると実に取っつきやすい音楽に仕上がっています。

おそらく、その背景には市政50周年の記念音楽という縛りがあったからでしょう。
実際、その記念音楽祭ではドホナーニの「祝典序曲」、コダーイの「ハンガリー詩篇」とともに初演されて好評を博しました。

とはいっても、バルトークらしい強烈なリズムの推進力は聞くものを圧倒します。
それはもう、凄みすら感じるほどの、おかしな言い方かもしれませんが「洗練された野蛮」さが貫かれています。


  1. 第1舞曲 Moderato

  2. 第2舞曲 Allegro molto

  3. 第3舞曲 Allegro vivace

  4. 第4舞曲 Molto tranquillo

  5. 第5舞曲 Comodo

  6. 終曲 Allegro




与えられた仕事に対して期待された以上の結果を残すことでキャリを積み上げてきた

ショルティの初期録音をポチポチとアップしているのですが、意外とたくさんの方からメールをいただいています。
特に多いのがロンドン響と録音したマーラーの交響曲をアップしてほしいというものです。
それから、彼の初期録音への懐かしい思い出なども色々といただいています。

ショルティという人は世界的には非常に高い評価を得ているのですが、何故か日本での評判は芳しくない人です。
彼が残した膨大な録音の殆どは完成度の高いものばかりなので、不思議と言えば不思議な話なのですが、やはり偉い先生が駄目だと言えば駄目になってしまう典型なのかとも思ったりします。

指輪の全曲録音にしても、その演奏と録音の素晴らしさは認めながらも、指揮者がショルティでなければもっとよかったなんて言われちゃいますからね。
しかし、カルショーの証言を待つまでもなく、あのようなとんでもない忍耐を強いられるようなプロジェクトはショルティのような男でなければ成し遂げられなかった事は事実なのです。

そんなわけで、一度じっくりと、ショルティの業績を録音を通して追いかけてみようかと考えた次第なのです。
確かに、一人の音楽家を時系列に沿ってじっくりと聞いてみるといろいろなことが見えてくることも事実なのです。

と言うわけで、いきなりロンドン響とのマーラー録音にジャンプするようなことはせずに、ショルティが歩んだ道のりを時系列に沿って追いかけてみたいと思っています。

ショルティの初期録音を眺めていると、同郷のバルトークやコダーイの録音が多いことに気づきます。
世界的名声を得た音楽家ならばレーベルと契約を結ぶときに、自分が録音したい作品をその契約の中に入れ込むことも可能です。

例えば、ビルギット・ニルソンなどはDeccaと専属契約を結ぶときの条件として「トリスタンとイゾルデ」を録音することを必須条件としていました。
有り体に言えば、「トリスタンとイゾルデ」を録音してくれるならアンタの所と契約してやってもいいわよ、と言うことです。

しかし、これから売り出そうかというようなぺーぺーの音楽家ならば、レーベルが指定する作品を黙々とこなしていくしかありません。使ってもらえるだけありがたいと言うことです。
そして、そこにはレーベルとしてカタログの内容をバランスよく整えていくために、その音楽家の適正なども見定めながら録音すべき作品を決めていくわけです。

カルショーはDeccaにはその様なポリシーは全くなかったと嘆いていますが、それでも、ショルティの立ち位置を考えればバルトークやコダーイの作品が回ってくるのは、当然と言えば当然なのかもしれません。
しかし、ショルティはバルトークの「舞踏組曲」に関しては強い思い入れがあったようです。

1980年にロンドン・フィルと来日したときのプログラムにも入れていましたし、シカゴ響とも録音しています。

そして、そう言う思い入れがあったことを証明するかのように、この1952年にロンドン・フィルと録音した「舞踏組曲」も素晴らしい演奏に仕上がっています。
このようなリズムの切れ味、凄みで勝負するような作品になるとショルティはその持ち味を遺憾なく発揮します。

さらに驚くのは、完璧と言っていいほどのバランスでオケを鳴らしていることです。
言うまでもないことですが、この時代の録音は楽器の音量バランスを編集によって調整するなどと言うことは出来ません。

まさに、録音会場で鳴り響いているバランスが全てです。
ところが、そのバランスがマルチ・マイク録音によって徹底的に編集が加えられたバランスと較べても遜色がないというのは、ショルティの並々ならぬオケに対する統率力がうかがわれます。

ただし、同時に録音された「ガランタ舞曲」は「舞踏組曲」のようなリズムで勝負するのではなくて「歌で泣かせる」音楽ですから、もう少し「情」がほしいと思ったりもします。
しかし、そこでもオケのバランスは完璧であり、その透明感に満ちた響きは十分に魅力的です。

なるほど、無名の指揮者というのは、こうして与えられた仕事に対して期待された以上の結果を返すことでキャリを積み上げていくものだと感心させられる録音です。

それから、最後に余談ながら、カルショーはDeccaと言う会社は「コスト削減」だけが最優先で、その被害をもっとも被ったのがレコードのジャケットだったとぼやいていました。
確かに、これなどはかなり安直にしてセンスの欠片もない酷いデザインです。
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