クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|アナトゥール・フィストラーリ(Arthur Fiedler)|チャイコフスキー:くるみ割り人形 組曲 Op.71a

チャイコフスキー:くるみ割り人形 組曲 Op.71a

アナトゥール・フィストラーリ指揮 ロンドン交響楽団 1962年1月録音



Tchaikovsky:The Nutcracker Suite, op.71a [1.Ouverture miniature]

Tchaikovsky:The Nutcracker Suite, op.71a [2.Marche]

Tchaikovsky:The Nutcracker Suite, op.71a [3.Danse de la fee-dragee]

Tchaikovsky:The Nutcracker Suite, op.71a [4.Danse russe (Trepak)]

Tchaikovsky:The Nutcracker Suite, op.71a [5.Danse arabe]

Tchaikovsky:The Nutcracker Suite, op.71a [6.Danse chinoise]

Tchaikovsky:The Nutcracker Suite, op.71a [7.Danse des mirlitons]

Tchaikovsky:The Nutcracker Suite, op.71a [8.Valse des fleurs]


クリスマスイブの一夜の物語

チャイコフスキーの三大バレー曲の中では最もまとまりがよく、また音楽的にも充実しているのがこの「くるみ割り人形」です。
物語はクリスマスイブにおける少女の一夜の夢です。全体の構成は以下の通りです。

第一幕

  1. 第一場:シュタールバウム家の玄関前

  2. 第ニ場:シュタールバウム家の居間

  3. 第三場:シュタールバウム家の居間

  4. 第四場:雪の国



第二幕


  1. 第一場:水の国

  2. 第二場:お菓子の国の都

  3. 第三場:シュタールバウム家の広間

  4. 第四場:シュタールバウム家の玄関前




ちなみに組曲は以下の通りの構成となっています。


  1. 小序曲

  2. 行進曲

  3. こんぺいとうの踊り

  4. トレパック:ロシアの踊り

  5. アラビアの踊り

  6. 中国の踊り

  7. あしぶえの踊り

  8. 花のワルツ




ただし、ホフマンによる原作「くるみ割り人形とネズミの王様」と比べると根本的な部分で相違があります。
原作では、人形の国からクララ(原作ではマリー)が帰ってくるところまでは同じですが、それを夢の話としては終わらせていません。
クララが話す人形の国について両親は全く信じようとしないのですが、やがて王子が彼女を迎えに来て人形の国へ旅立つというラストシーンになっています。

バレーの台本はマリウス・プティパによって書かれたものですが、彼はこの最後の場面をバッサリとカットして、人形の国シーンで物語を終わらせています。
ただし、それではいかにもおさまりが悪いので、その後ワイノーネンの振付によって改訂され、クララが夢から醒めた場面で終わらせることによってこの物語をクリスマスイブの一夜の物語として設定することが一般的になりました。


夢を夢として終わらせない原作と、そこの部分をわざとぼかした原作では大きな相違がありますし、ましてや、夢はしょせん夢だとして終わらせる改訂版とでは根本的に違った作品になっていると言わざるを得ません。
当然の事ながら、プティバもワイノーネフもホフマンの原作を知っていたでしょうから、なにゆえにその様な改訂を行ったのかは興味のあるところです。(最近は原作回帰の動きもあるようです。)


生粋のバレエ指揮者とも言うべきフィストラーリの演奏は実にほどがよいのです

バレエ音楽というのは指揮者にとってはあまり有り難くない品目のようです。
基本的には、音楽よりは踊りが優先される世界であって、それは何処まで行っても「伴奏」の域を出ないからです。

コンサート指揮者であれば、そんな「伴奏音楽」などは真面目につき合っていられないというのが本音でしょう。
ですから、そう言うバレエ音楽をメインに指揮活動している指揮者のことをバレエ指揮者などと言って一段低く見る風潮が生まれたりするのです。

実際、上演コストを下げてチケット代を安くするために、音楽は録音を流すと言うことも普通にやられる世界ですからそれはもう仕方のないことかも知れません。
そして、フィストラーリという指揮者も基本的にはバレエ指揮者と見られてきましたから、彼への評価にはどこか微妙な影がつきまといました。

しかし、そう言うことは認めながらも、バレエ音楽にはいわゆる立派な管弦楽作品とは違うテイストがあることも事実です。
そう言うテイストにもたれかかってただの伴奏音楽で終わることもあれば、そのテイストを生かして立派な管弦楽作品には味わいを醸し出すことも可能なのです。フィストラーリという指揮者はそう言う微妙なテイストを現実の音楽に変換できる数少ない指揮者の一人でした。

もちろん、バレエ音楽といえどもそれは管弦楽作品なのですから、その他の立派な管弦楽作品と同じように立派に演奏することは可能です。
例えば、カラヤンの手になる録音などはその典型であり、ゴージャスな響きによる華麗な世界はそう言う方向性の一つの到達点であることは間違いありません。

しかし、それで踊れるのかと言われれば、バレリーナに聞いたことはないので確たる事は言えないのですが、かなりの困難が伴うのではないかとは思われます。
また、聞き手にしても、あれはコンサートのプログラムとして聞かされる分には申し分ないのですが、バレエの舞台であそこまで音楽が自己主張すれば、それはバランスが悪すぎると言わざるを得ません。

そう考えると、このフィストラーリやドラティなどのバレエ音楽は実にほどがよいのです。
とりわけ、生粋のバレエ指揮者とも言うべきフィストラーリの演奏はほどがよいのです。

確かに、カラヤンのような演奏を基準とすれば物足りなさはあるのですが、実際のバレエの舞台を彷彿とさせるような歌い回しは通常のコンサート指揮者には難しいんだなと思わせる何かを持っています。
そして、その何かに対しては「リズム感の良さと気品あふれるほのかなロマン性」などと言われたりもするのですが、それだけでは何か言い残したことがたくさんあることも事実なのです。音楽のあちこちに施された微妙な表情付けを「ロマン性」という言葉でまとめしまうにはどこか申し訳なさが残ってしまうのです。
おそらくその背景には長い舞台経験に加えて、リムスキー=コルサコフ以降の伝統受け継いできたというプライドがあったことは間違いないことでしょう。


それから、もう一つ感心するのはロンドン響の対応力の高さと生真面目さです。

このオケはどんな指揮者に対しても、その意図するところを敏感に読み取って対応する高い能力を持っています。
そして、その意図するところが「どんなもの」であっても、まずはそれに沿おうとする生真面目さも持っています。

そう言うロンドン響の生真面目さに接するたびに、その爪の垢を煎じてウィーン・フィルに飲ませてみたくなるのです。
もっとも、そう言うことをやればウィーン・フィルはもはやウィーン・フィルではなくなる事も事実なので、なかなかにこの世界は難しいものだと思わざるをえないのですが・・・。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



3666 Rating: 4.9/10 (85 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2019-05-25:マルメ





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-11-21]

ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)

[2024-11-19]

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)

[2024-11-17]

フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)

[2024-11-15]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-11-13]

ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)

[2024-11-11]

ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)

[2024-11-09]

ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)

[2024-11-07]

ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)

[2024-11-04]

ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)

[2024-11-01]

ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)