Home|
フリッチャイ(Ferenc Fricsay)|ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 作品43
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 作品43
フェレンツ・フリッチャイ指揮 (P)マルグリット・ウェーバー ベルリン放送交響楽団 1960年6月3日~6日録音
Rachmaninov:Rhapsody on a Theme of Paganini, Op.43
Andante cantabileだけはとても有名です
この作品は「パガニーニの主題による狂詩曲」となっていますが、実質的には疑いもなくピアノコンチェルトです。
パガニーニのヴァイオリン曲『24の奇想曲』第24番「主題と変奏」の「主題」をネタにして、ラフマニノフらしいロマンティックな世界を繰り広げています。
とりわけ有名なのが、第18変奏のAndante cantabileです。
きっと、「パガニーニの主題による狂詩曲」なんて言われても全然ピントこない人でも、この部分を聞けばピンと来るはずです。テレビのコマーシャルやドラマのBGM、さらにはフィギアスケートの音楽などに、それこそ擦り切れるほどに使い回されています。
ただ、第18変奏なんて言われても、この作品はかなり自由に変奏されていますし、おまけにかんじんの主題が最初に出てこないという変速技を使っていますので、きっとよほど訓練された人でないとどこが18番目の変奏かは聞き当てられないはずです。
でも、大丈夫です。
あのメロディが出てくれば、誰でも思い当たります。
「パガニーニの主題による狂詩曲」なんて知らないよと言う人も、「あのメロディ」が出てくるまで辛抱強く聞き続けてください。
フリッチャイが残した唯一のラフマニノフ録音
フリッチャイは早死にはしたのですがそれなりの数の録音は残しました。しかし、ラフマニノフに関してはどうやらこれ一枚だけのようです。
そのあたりは同郷の指揮者、ジョージ・セルと全く同じです。
この、結果としてのラフマニノフに対する冷淡さはどこに起因するのかは分かりませんが、その「冷淡」さのなかで唯一録音したのが両者ともに「パガニーニの主題による変奏曲」だというのも不思議な話です。
そして、どちらも見通しの良い精緻な表現が貫かれているのは、ロシア風のロマンティシズムをマジャールの指揮者が料理すればこうなるという典型のようなものでしょう。
ただし、じっくりと聞き比べてみれば、同じ精緻さでもその精度には大きな違いがあります。
もちろん、フリッチャイの演奏も十分に精緻な表現なのですが、セルとフライシャーの方はさらに一桁精度が細かいのです。
それは、音楽のどの部分をとりだしてもスチール写真のような精緻さを保持していました。
それと比べれば、フリッチャイとマルグリッド・ウェーバーによるこの演奏ははるかに人肌に触れる優しさと体温を持っています。
つまりは、こちらの方がより「常識的な演奏」になっているのです。
なお、ピアニストのマルグリッド・ウェーバーに関しては、私もまた知るところが殆どない存在でした。
調べてみると、スイス生まれのピアニストで、1924年に生まれて2001年になくなっていますから、はるか昔の人というわけではないようです。ただし、録音などは50~60年代に集中していますし、何よりも現代音楽にその活動の力点が置かれていたことも日本での知名度が上がらなかった原因かも知れません。
ウィキペディアで調べてみると、仏語版と日本語版では情報量が全く違いますので、ヨーロッパでは未だに高い知名度を保持してるのかも知れません。
また、彼女の夫は大変なお金持ちだったようで、生活のためにピアノを演奏する必要はありませんでした。彼女が多くの現代作品の初演を行えたのもそう言う背景があったからでしょう。
もちろん、彼女は夫の財力だけでその様な活動が出来たわけではないことはこの録音を聞くだけで納得できるはずです。
フライシャーほどの精緻さには欠けるかもしれませんが、それでも凡庸なピアニストではないことは明らかです。
また、言うべき時にはきちんとものを言う女性でもあったようです。
例えば、ストラヴィンスキーに新作を依頼したとき、15分から20分程度の作品としていたにも関わらず出来上がった作品が10分足らずの小品だったのでストラヴィンスキーに書き直しを命じています。
ちなみにその新作は「ピアノと管弦楽のためのムーヴメンツ」と呼ばれる作品であり、彼女の夫がポンと15000ドルを支払ってストラヴィンスキーに作曲を依頼したものでした。
ただし、ストラヴィンスキーにしてみれば「点描的」とか「ウェーベルン的」と言われる作品を目指していたので、そこまで引き延ばすのは不可能だったようで、ごく僅か書き足すことで決着したようです。
このマルグリッド・ウェーバーの夫と言い、パウル・ザッハーの夫人と言い、ヨーロッパのお金持ちは粋なお金の使い方をするものです。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
3654 Rating: 5.1/10 (75 votes cast)
よせられたコメント
2018-08-15:ヴィターリ・DE・グッターリ
- その第18変奏、昔NHKラジオ第1放送の希望音楽会という番組のテーマに使われていました。日曜日の昼下がりの和やかな気分にピッタリの音楽でした。(と言いたいけど正確には午前11時過ぎだったと記憶しています)私の中ではそんな穏やかな気持ちを呼び覚ます音楽です。いろんなプレゼントをくださるユングさんに感謝しています。ありがとうございます。
【最近の更新(10件)】
[2024-11-24]
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調, Op.98(Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)