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ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番

P:ラフマニノフ オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1939年12月4日録音




難曲中の難曲

今では映画「シャイン」のおかげで、2番のコンチェルトよりも有名になってしまったかもしれません。なんといっても、古今東西のあらゆるピアノ協奏曲の中でこれほどまでに演奏が困難なものはちょっと思い当たりませんし、映画でもその点を強調して主人公はその困難さにとりつかれて精神に異常をきたしてしまうのですから、話題性は満点です。

しかし、どうなんでしょうか?最近のバカウマの若手連中なら誰でも弾きこなすのではないでしょうか。確かに難しいことは難しいでしょうし、とりわけ2種類あるカデンツァのうち「ossia」と呼ばれる方はとんでもなく難しいものです。それでも、演奏するだけなら何とかやり遂げるだけの能力は今の若手ならほとんどが身につけているのではないでしょうか。

それはさておき、この作品を聞けば、派手さはあるものの2番のコンチェルトで聞けたロシアの郷愁のようなものは後退していることに気づかされます。それは、この作品がラフマニノフのアメリカへの演奏旅行のために創作されたという経緯とも関係しているのかもしれません。当時のアメリカではとにかく派手な名人芸がもてはやされていましたから、この作品ではラフマニノフの芸人魂が爆発したかのような作品が出来上がってしまったのではないでしょうか。
とにかくピアノという楽器を使ってどこまで圧倒的に音楽を盛り上げることができるのかという課題に対する一つの模範解答がここにあることは間違いありません。
ただしなのです。
この作品に限ったことではないのですが、私には彼の作品に散漫でとりとめのない雰囲気を感じ取ってしまうのです。その散漫さが2番のコンチェルトでは影を潜めていたのが、ここでまたあふれ出してきたように感じられます。
ピアノの響きはどこまでも分厚くて重厚であり、それがここぞという場面ではクレッシェンドに続くクレッシェンドで音楽を圧倒的に盛り上げていくのですが、聞き終わった後になんと見えない空虚さを感じてしまいます。その芸人魂には感服するのですが、果たして歴史の審判に耐えて芸術作品として後世に残るのかと聞かれれば自信を持ってイエスとは言えないユング君です。

余裕の演奏


この時代において、この作品を余裕を持って演奏することができたのはホロヴィッツと作曲家でもあるラフマニノフぐらいだったのではないでしょうか。どんなに難しいことでも、上手な人がやっているのをみると実に簡単に出来そうに思えます。難しさというのは下手が四苦八苦している姿を見てはじめて納得できるものです。
ホロヴィッツの演奏はこの作品を平然とショーピースにしてしまったところにあるのですが、ラフマニノフはこの作品の美質を余裕を持って表現したように思えます。こう書くとちょっとおかしな言い方になるのですが、ラフマニノフの作品はあまりゆっくりと演奏すると歌が浮かび上がってこないように思えます。テンポを落としてじっくり演奏するとなんだかかえってつながりが悪くなって散漫な雰囲気がただよってくるのです。ところがこの演奏では、実に適切なテンポで(そのテンポを維持するのが大変なのですが・・・)この作品がもつ雄大なロマン性をしっかりと表現しています。
これもまた、21世紀になっても永遠に聞きつがれるべき価値ある演奏だといえます。

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