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ショパン:ワルツ集

(P)モーラ・リンパニー:1959年録音



Chopin:Waltzes, Op.18 [Grande valse brillante in E-flat major]

Chopin:Waltzes, Op.34 [1.No. 1 in A flat major "Valse Brilliante"]

Chopin:Waltzes, Op.34 [2.No. 2 in A minor]

Chopin:Waltzes, Op.34 [3.No. 3 in F major "Valse Brilliante"]

Chopin:Waltz in A-flat major, Op.42

Chopin:Waltzes, Op.64 [1.No. 1 in D flat major "Valse Minute"]

Chopin:Waltzes, Op.64 [2.No. 2 in C sharp minor]

Chopin:Waltzes, Op.64 [3.No. 3 in A flat major]

Chopin:Waltzes, Op.69 [1.No. 1 in A flat major "L'Adieu"]

Chopin:Waltzes, Op.69 [2.No. 2 in B minor]

Chopin:Waltzes, Op.70 [1.No. 1 in Gm major]

Chopin:Waltzes, Op.70 [2.No. 2 in F minor]

Chopin:Waltzes, Op.70 [3.No. 3 in D-flat major]

Chopin:Waltz in E minor, B.56




簡単な作品の概要

いわゆるウィーン風のワルツからはほど遠い作品群です。
ショパンがはじめてウィーンを訪れたときはJ.シュトラウスのワルツが全盛期の頃でしたが、その音楽を理解できないと彼は述べています。
いわゆる踊るための実用音楽としてのワルツではなく、シューマンが語ったようにそれはまさに「肉体と心が躍り上がる円舞曲」、それがショパンのワルツでした。また、全体を通して深い叙情性をたたえた作品が多いのも特徴です。

ショパンの手によってはじめてワルツと言う形式は芸術として昇華したと言えます。


  1. ワルツ第1番 変ホ長調 作品18「華麗なる大円舞曲」

  2. ワルツ第2番 変イ長調 作品34-1

  3. ワルツ第3番 イ短調 作品34-2

  4. ワルツ第4番 ヘ長調 作品34-3「子猫のワルツ」

  5. ワルツ第5番 変イ長調 作品42

  6. ワルツ第6番 変ニ長調 作品64-1「子犬のワルツ」

  7. ワルツ第7番 嬰ハ短調 作品64-2

  8. ワルツ第8番 変イ長調 作品64-3

  9. ワルツ第9番 変イ長調 作品69-1(遺作)

  10. ワルツ第10番 ロ短調 作品69の2(遺作)

  11. ワルツ第11番 変ト長調 作品70-1

  12. ワルツ第12番 ヘ短調 作品70-2

  13. ワルツ第13番 変ニ長調 作品70の3(遺作)

  14. ワルツ第14番(ヘンレ版第16番)ホ短調(遺作)


野太いまでの響きで、時にはぶっきらぼうに思えるほどの剛直さでショパンを造形しています


モーラ・リンパニーは戦前のイギリスではもっとも人気のあるピアニストの一人だったようです。
当然の事ながら、戦後も華々しく活躍をはじめるのですが、1951年にアメリカのテレビ局の経営者と結婚したために、ピアニストとしての活動は控えめになっていきました。

とりわけ、録音のフォーマットがモノラルからステレオに切り替わる頃にはほとんど引退同然になっていたので、「録音」を通してでしかその演奏に接する事が出来ない極東の島国ではほとんど知られることのない存在だったようです。

リンパニーも数多くの天才キッズと同じく12歳で演奏会デビューを果たしています。そして、マネージメントをする側は、リンパニーをショパンやリストのスペシャリストとして売り出そうとしたようです。
おそらくは宣伝用に撮影されたと思われる若い頃のポートレート写真を見ると、楚々とした雰囲気でいかにも上品なショパンの音楽を演奏してくれそうな雰囲気です。

しかし、そう言う決まり切ったお嬢様ピアニストの枠に収まるには、彼女のテクニックは逞しすぎました。

彼女ショパンやリストではなくてラフマニノフの演奏で名をあげ、それをラフマニノフが激賞したと言うのは有名なエピソードなのですが、それがリップサービスではないことは彼女の演奏を聞けばすぐに分かります。
リンパニーはラフマニノフの前奏曲の全曲録音を世界で最初に成し遂げているのですが、あのコンサート・グラウンドの限界に挑戦したような音楽をその逞しいテクニックによってものの見事にねじ伏せているのです。

しかし、もう少し俯瞰して全体を眺めてみれば、彼女とほぼ同世代のアニー・フィッシャー(1914年)やジーナ・バッカウアー(1913年)と、それよりも古い世代のマルグリット・ロン(1874年)、マイラ・ヘス(1890年日)、マルセル・メイエ(1897年)等を較べてみればその違いは明らかですから、そう言う特質は彼女だけのものではなかったとも言えます。
ただし、品良くピアノを演奏するよりは、男性と較べても遜色ないほどの逞しいテクニックでねじ伏せてしまうと言うスタイルは、リンパニーにおいてはより際だっていました。

そして、そう言う逞しいテクニックをショパンの音楽にそのまま適用すればどうなるのかという見本のような録音がこのショパンの「ワルツ集」です。

上品で、思い入れたっぷりの曲線を多用したようなショパンではなくて、野太いまでの響きで、時にはぶっきらぼうに思えるほどの剛直さでショパンを造形しています。それは明らかにサロンの音楽ではなくて、広いコンサートホールにおいて多くの聴衆を相手にした音楽になっています。
とりわけ、逞しくピアノを鳴らしながらも、ここぞと言うところでの語り口の上手さはかなりのものです。

彼女は、この「ワルツ集」以外にも「前奏曲」や「ノクターン」なども録音を残しています。
驚くのは、「ワルツ」や「前奏曲集」だけでなく、「ノクターン」のような音楽でも思い入れのたっぷりの情緒を前面に出すのではなくて、、時にはぶっきらぼうに思えるほどの剛直さで音楽を造形していることです。
そして、そう言う剛直さを持って音楽を造形しているがゆえに、かえって語り口の上手さが際だっているように思えるのです。

ざっかけない言い方が許してもらえるならば、アルゲリッチの前にも、こういう猛女がいたと言うことなのでしょう。

なお、ネット上を散見すると、このリンパニーのピアノに対して繊細で柔らかい響きという形容詞をあてている方もおられました。
再生装置が変われば聞こえてくる音も違うと言うことなのでしょうか。

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