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シベリウス:交響曲第1番 ホ短調 Op.7


渡辺暁雄指揮 日本フィルハーモニー交響楽団 1962年5月7,8日録音(東京文化会館)

Sibelius:Symphony No.1 in E minor Op.39 [1.Andante, ma non troppo - Allegro energico]

Sibelius:Symphony No.1 in E minor Op.39 [2.Andante (ma non troppo lento)]

Sibelius:Symphony No.1 in E minor Op.39 [3.Scherzo: Allegro]

Sibelius:Symphony No.1 in E minor Op.39 [4.Finale: Andante - Allegro molto - Andante assai - Allegro molto come prima - Andante (ma non troppo)]


瞑想的静か美しさに満ちた音楽

シベリウスと言えば交響曲作家との評価として定着しています。
しかし、彼の経歴を見てみると、交響曲に着手したのはずいぶん遅い時期であることに気づかされます。

確かに、この第1番のシンフォニーの前に「クレルヴォ交響曲」を発表していますが、あの作品は声楽をともなったカンタータのような作品です。
クラシック音楽の王道としての交響曲のスタイルをもった作品としては、この第1番が番号通りに彼のファーストシンフォニーとなります。

彼はここに至るまでに、すでにクレルヴォ交響曲を完成させ、さらに「4つの伝説曲」や「カレリア組曲」などを完成させて、すでに世界的な作曲家としての評価を勝ち取っていました。そして、そう言う評価を得た交響詩の作品に続けて、4つの楽章にそれぞれ標題のついた交響曲をファーストシンフォニーとして計画します。
しかし、その試みは結局は放棄されます。

この交響曲は各楽章の標題も準備され、基本的な設計図のようなものも用意されていたようなのですが、おそらくは、それでは「交響詩」の作曲家というポジションからは抜け出せないと判断したのでしょう。
ですから、この第1番の交響曲は、その準備されていた「標題交響曲」のリフォームではなくて、全く新しくかかれたものなのです。

当初は、その仕事をベルリンで行おうとしたのですが、悪い友達(^^;の誘いを断り切れない弱さもあってうまく進まなかったようです。そこで、結局はフィンランドに戻り、フィンランドの田舎を転々としながら1899年に完成にこぎ着けます。

そして、その出来上がった作品は明らかにチャイコフスキーからの影響を受けています。
冒頭のクラリネットの旋律が最終楽章のフィナーレで華々しく帰ってくるところなどは、まさしくチャイコフスキーの5番を思い出させます。

初期の作品はどれをとっても旋律線が気持ちよく横にのびていきます。この息の長い静かな旋律線こそが若い頃のシベリスの特徴であり魅力でした。
こういう息の長い旋律で音楽を作っていくのは、チャイコフスキーやボロディンの音楽から学んだものであることは間違いないでしょう。

しかし、その響きは今までの誰からも聞かれなかったシベリウス独特の硬質感があります。そのひんやりとした手触りはまがうことなく北欧の空気を感じさせてくれます。
聞けば分かるようにチャイコフスキーの響きはもっと軟質です。

ですから、シベリウスはチャイコフスキーの亜流としてではなく、強い影響を受けながらも、最初からシベリウスならではの特徴を十分に発揮しているのです。
彼独特の響きを駆使して、伸びやかに、思う存分に音楽を歌い上げているのは、聞いていて本当に気持ちが良いのです。

そして、そういうシベリウスの素晴らしさがもっともよく表れているのが最終楽章でしょう。漆黒のツンドラの大地を思わせる第1主題の彼方から朝日が上ってくるような第2主題はとても魅力的です。
これは、この楽章単独で演奏しても充分に成り立つ音楽でしょう。
その意味では極めて「交響詩」的な音楽なのですが、最後に冒頭の主題で壮大に締めくくることで交響曲としてのまとまりをつけています。

ただし、こういうシベリウスの特長が前面に出てくるのは交響曲で言えば第2番までです。

3番以降になると、そう言う息の長い旋律的な主題は使わなくなり、短い断片のような旋律とも言えない動機のようなものをパッチワークのように貼り合わせていくようになっていきます。
そして、それこそが、西洋古典派の音楽法則やロシアのチャイコフスキーの呪縛から逃れるためには必要だったことは頭では理解できるのですが、こういう瞑想的静か美しさに満ちた音楽を聞くと、少しだけ残念な気持ちにもなるのです。

世界最初のステレオ録音によるシベリウス交響曲全集


1962年に録音された「世界最初のステレオ録音によるシベリウス交響曲全集」です。
さらに、日本国内で録音されたクラシック音楽が世界的なメジャーレーベル(Epic Records)からリリースされたのもおそらく初めてだろうと言われています。

渡邉暁雄の名前は日本におけるシベリウス受容の歴史と深く結びついています。その業績は朝比奈とブルックナーの関係と較べればいささか過小評価されている感じがするのですが、60年代の初めにこれだけの録音を行い、それが世界市場に向けてリリースされたのは「偉業」と言わざるを得ません。

ただしこの録音の初出年を確定するのには手間取りました。
62年に録音されて、その後「Epic Records」からリリースされたのですから、常識的に考えればぼちぼちパブリック・ドメインになっていても不思議ではありません。しかしながら、どうしてもその初出年が確定できなかったのです。
しかし、漸くにして、1966年に「Epic SC 6057」という番号でボックス盤の全集としてリリースされたことが確認できました。
おそらく、この全集盤の前には分売でも発売されたと思われます。

ボックス盤による全集「Epic SC 6057」
「Epic SC 6057」

ただし、不思議なのは「作曲家別洋楽レコード総目録」の67年版や68年版にはこの全集が記載されていないことです。
渡邉暁雄と日フィルによるこの「偉業」が1966年に「Epic Records」からりリースされたのであれば、当然国内でも発売されたと思うのですが67年版にも68年版にも記載されていません。しかし、ここで確認を打ち切っていたのが私のミスで、69年版の総目録を調べてみると記載されていて、発売が1966年12月となっているのです。
この記載漏れが何に起因するのかは分かりませんが、もしかしたら舶来品を尊び国産品を蔑むこの業界の体質が呈したのかもしれません。

と言うことで、国内でも1966年に発売されているので、この録音は間違いなくパブリック・ドメインの仲間入りをしたことが確認された事はめでたいことです。

この全集はクレジットを見る限りは1962年に集中的に録音されたように見えます。


  1. シベリウス:交響曲第1番 ホ短調 Op.39:1962年5月7,8日録音(東京文化会館)

  2. シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op.43:1962年録音(杉並公会堂)

  3. シベリウス:交響曲第3番 ハ長調 Op.52:1962年8月7,8日録音(東京文化会館)

  4. シベリウス:交響曲第4番 イ短調 Op.63:1962年6月20,21日録音(東京文化会館)

  5. シベリウス:交響曲第5番 変ホ長調 Op.82:1962年2月18日録音(文京公会堂)

  6. シベリウス:交響曲第6番 ニ短調 Op.104:1962年音(文京公会堂)

  7. シベリウス:交響曲第7番 ハ長調 Op.105:1962年3月7日録音(杉並公会堂)



しかし、録音プロデューサーの相澤昭八郎氏は1961年から1962年にかけて録音は行われたと語っています。別のところではおよそ1年半をかけてこのプロジェクトを完成させたとも述べていますので記憶違いではないでしょう。
おそらく、1962年という極めてザックリとしたクレジットしか残っていない2番と6番に問題があったのでしょう。

相澤は録音の編集に関しては渡邊からの注文が詳細を究めたので、お金のかかるスタジオではなくて渡邊の自宅で行ったと証言しています。
渡邊の注文は演奏上の細かいミスを潰していくというのではなく、オーケストラのバランスが適正に表現されているか否かに集中していたそうです。

しかし、ワンポイント録音ではそう言うバランスの調整というのはほとんど出来ません。ワンポイント録音で可能なのは左右のチャンネルのバランスを調整するくらいですから、録音現場で拾ったバランスがほぼ全てです。
渡邊もその事は承知していたと思われるます。
何回かのテイクの中からもっとも適正と思えるバランスのものを選びだしてはテープに鋏を入れ、最後のつめとして可能な範囲でバランスの調整を行ったのです。

それでも、どうしても納得できない場合は場をあらためてセッションを組んだものと思われます。
相澤が1961年からプロジェクトをはじめたといいながら録音クレジットは62年だけで完結したように見えるのは、そう言う録音での苦闘が水面下に隠れてしまったからでしょう。

アメリカやイギリスのメジャーレーベルであれば、62年と言えば既にステレオ録音の経験を充分に積んできた時代です。Deccaのようなレーベルであれば「録音に適した会場」を既に見つけ出していて、さらにはそう言うホールの録音特性を知り尽くしていました。
しかし、日本におけるステレオ録音となると、おそらくは手探り状態だったはずです。
その差は歴然としていました。

文京公会堂では会場の前半分の椅子を撤去することが可能でした。その撤去した空間を平戸間にすることでマイクセッティングの自由度を上げることが可能だったようです。
しかし、杉並公会堂や東京文化会館ではそう言うわけにもいかなかったので苦労は随分と多かったようです。

しかしながら、そう言う苦労を乗り越えて実現したこの録音は極めてクオリティの高い優秀なものに仕上がっています。

確かに、時代相応の限界があるので、楽器の響きなどはいささか「がさつ」なところがあるかもしれません。しかし、その「がさつ」さは録音ではなくて、そこで鳴り響いていたオケのものかもしれません。
人によっては強奏部分では音がつまると指摘する人もいますが、それほど気になるほどではありません。
それよりは、渡邊が徹底的に腐心した、オケの理想的なバランスがもたらす自然な響きが非常に見事です。

おそらく、この成果の手柄は録音エンジニアの若林駿介氏に帰すべきでしょう。
若林はこの録音の前にアメリカに渡って、ワルターとコロンビア響の録音現場に参加して学ぶ機会を持っています。ですから、この録音のクオリティをそう言うアメリカでの経験に求める人もいます。
確かに、それは若林にとっても貴重な経験だったことは疑いはないのでしょう。しかし、この録音はそう言う一連のワルター録音と較べると方向性が少しばかり違う事に気づきます。

この録音におけるオケのバランスとプレゼンスの良さは、あるはずのない「理想」を「録音」という技術によって生み出したと言うべきものになっています。
それはあるがままのものをレコード(記録)したと言うよりは、ある種の創作物になっていると言った方がいいかもしれません。言葉をかえれば、プロデューサーの相澤、録音エンジニアの若林、そして指揮者の渡邊の3人によって生み出された「芸術」というべきものになっているのです。

その意味では、この録音を「人為的」と感じる人がいるかもしれません。しかし、こういう事が可能なのが「スタジオ録音」の魅力でもあるのです。

また、丁寧にテイクを積み重ねた結果だとは思うのですが、日フィルの合奏能力も見事なものです。
いわゆる欧米のメジャーオーケストラでも、来日のライブなんかだとこれよりも酷い演奏を平気で聴かせてくれます。
もちろん、個々の楽器にもう少し艶があってもいいとは思う場面はあるのですが、おそらくは貧弱な楽器を使っていた60年代のことですから、そこまで言えば人の能力を超えたレベルの注文になってしまいます。

シベリウス:交響曲第1番 ホ短調 Op.39:1962年5月7,8日録音(東京文化会館)

冒頭のティンパニーの響きに乗って歌い出すクラリネットのソロが見事です。きっと死ぬほど練習したんだろうな(^^;。
そして、渡邊はオケをバランスよく響かせながらも、音楽には熱気が溢れていることが、後の80年代の全集との大きな違いだと言うことに気づきます。

この第1楽章の始めの部分や第2楽章の静かに歌うところにこそ渡邊の持ち味があると思うのですが、それでもこの録音の聞き所は最終楽章のフィナーレに向けた盛り上がりです。渡邊の指揮は時代が下がるにつれてそう言う部分が抑制的になっていくのですが、シベリウスの初期シンフォニーは行でなければいけないと思います。
そのもっとも素晴らしい例が、セルの東京ライブにおける交響曲第2番のコーダにおける金管群のファンファーレです。そして、この渡邊の指揮によるこのフィナーレも、あのセルの演奏を思い出せるものがあるのです。(時代的には順番が反対ですが・・・^^;)

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