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Home|セル(George Szell)|ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 作品73

ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 作品73

ジョージ・セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1957年12月28日録音

Brahms:Symphony No.2 in D major , Op.73 [1.Allegro non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major , Op.73 [2.Adagio non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major , Op.73 [3.Allegretto grazioso (quasi andantino) ]

Brahms:Symphony No.2 in D major , Op.73 [4.Allegro con spirito]


ブラームスの「田園交響曲」

ブラームスが最初の交響曲を作曲するのに20年以上も時間を費やしたのは有名な話ですが、それに続く第2番の交響曲はその一年後、実質的には3ヶ月あまりで完成したと言われています。ブラームスにとってベートーベンの影がいかに大きかったかをこれまた物語るエピソードです。

第2番はブラームスの「田園交響曲」と呼ばれることもあります。それは明るいのびやかな雰囲気がベートーベンの6番を思わせるものがあるかです。

ただ、この作品はこれ単独で聞くとあまり違和感を感じないでのですが、同時代の他の作品と聞き比べるとかなり古めかしい装いをまとっています。この10年後にはマーラーが登場して第1番の交響曲を発表することを考えると、ブラームスの古典派回帰の思いが伝わってきます。
オケの編成を見ても昔ながらの二管編成ですから、マーラーとの隔絶ぶりはハッキリしています。
とは言え、最終楽章の圧倒的なフィナーレを聞くと、ちらりと後期ロマン派の顔がのぞいているように思うのは私だけでしょうか。


  1. 第1楽章 Allegro non troppo:冒頭に低弦が奏する音型が全曲を統一する基本動機となっている。静かに消えゆくコーダは「沈みゆく太陽が崇高でしかも真剣な光を投げかける楽しい風景」と表現されることもあります。

  2. 第2楽章 Adagio non troppo - L'istesso tempo,ma grazioso:冒頭の物憂げなチェロの歌がこの楽章を特徴づけています。

  3. 第3楽章 Allegretto grazioso (Quasi andantino) - Presto ma non assai - Tempo I:間奏曲とスケルツォが合体したような構成になっています。

  4. 第4楽章 Allegro con spirito:驀進するコーダに向けて音楽が盛り上がっていきます。もうブラームスを退屈男とは言わせない!と言う雰囲気です。




事件でしょうか?

パブリックドメインになっているセルのライブ録音を少しずつ落ち穂拾いしていこうかと考えています。
とは言え、こういう「落ち穂拾い」は思わぬ「収穫」をもたらすことがあります。

全く持って申し訳ないのですが、この録音の聞き所は第2楽章の冒頭部分です。

深く物思いに沈んだような旋律をチェロが主導して歌い出します。これが第1主題になるのですが、やがてそれをフルートとヴァイオリンが繰り返し、それを受けてホルンが牧歌的に歌い出します。
事件はその時起こります。

楽譜

17小節目からホルンが歌い出して、続く18小節目は全ての楽器が沈黙してホルンだけがソロで演奏します。そして、19小節目からはファゴットがユニゾンでサポートしてオーボエ、フルートと加わってきます。
まさに、この18小節目の全ての楽器が沈黙しているところでホルンが止まってしまうのです。

その瞬間、幽かに唸り声が聞こえてきて、するとホルン奏者は気を取りなおしたように体制を立て直し、19小節目から必死の思いでファゴットがサポートに入ります。

時間にすれば一瞬のことなのですが、まさにその一瞬の間に行き交ったであろう指揮者とオーケストラプレーヤーの感情の量は半端じゃありません。
おそらく、ホルンが止まった瞬間に聞こえたうなり声は間違いなくセルの声だったはずです。その声を聞いた瞬間のホルン奏者の心中やいかばかりだったことでしょう。

そして、もう一度じっくりとスコアを見直してみればホルンのパートに「P」と書いてあるではないですか。
ホルンにとってピアノでソロを吹くというのはきつい!!

そう言えば、クリーブランド管のホルンの首席を長く務めたブルームは次のようなエピソードを残しています。
彼が3番ホルンから1番ホルンに昇進したときのことです。


1番ホルンに昇進した最初の1年間を思い出します。ショックで打ちのめされてしまいました。夢遊病者のように舞台を行ったり来たりし、恐れと不安とパニックで顔面は蒼白・・・最初の1年はそうでした。
初めて「ティル」を演奏したときのことを思い出します。セルから容赦なく絞られ、私は気が狂いそうになりました。
「このままではやっていけない」と思いました。・・・
私は彼の部屋の戸を叩きました。「どうぞ」と声がしたので中に入りましたが、私は一言も話さないうちに泣きだしてしまいました。
しかし、彼は察しのよい人でした。私を抱きしめてくれたのです。信じられませんでした。


いろいろ調べたのですが、ブルームがホルンの首席奏者に昇進したのがいつかは分かりませんでしたが、もしかしたらこういう「事故」によって「夢遊病者のように舞台を行ったり来たりし、恐れと不安とパニックで顔面は蒼白」になったのかもしれません。

しかし、セルとクリーブランド管が凄いと思うのは、こういう「事故」が起こるとなかなか気持ちの切り替えが出来ずにずるずると行ってしまうことが多いのですが、彼らは逆にこの「事故」を梃子として力を発揮して「事故」など何もなかったかのようにしてしまうことです。
少なくとも、この第4楽章の圧倒的な音楽を聞かされれば、そんな「事故」などあったことすら忘れてしまうでしょう。

そして、彼らは意気揚々とコンサート会場を後にしたはずです。
ただ一人、ホルンの首席奏者をのぞいては。

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