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ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26


(Vn)エリカ・モリーニ:フェレンツ・フリッチャイ指揮 ベルリン放送交響楽団 1958年10月録音


ブルッフについて

今日ではヴァイオリン協奏曲とスコットランド幻想曲、そしてコル・ニドライぐらいしか演奏される機会のない人です。ただし、ヴァイオリニストにとってはこの協奏曲はある種の思い入れのある作品のようです。
と言うのは、ヴァイオリンのレッスンをはじめると必ずと言っていいほど取り上げるのがこの協奏曲であり、発表会などでは一度は演奏した経験を持っているからだそうです。ただし、プロのコンサートで演奏される機会は決して多くはありません。
しかし、ロマン派の協奏曲らしくメランコリックでありながら結構ゴージャスな雰囲気もただよい、メンデルスゾーンの協奏曲と比べてもそれほど遜色はないように思います。

第1楽章
序奏に続いて独奏ヴァイオリンの自由なカデンツァが始まるのですが、最低音Gから一気に駆け上がっていくので聴き応え満点、けれん味たっぷりのオープニングです。力強い第一主題と優美な第二主題が展開されながら音楽は進んでいき、いわゆる再現部にはいるところでそれは省略して経過的なフレーズで静かに第2楽章に入っていくという構成になっています。(・・・と、思います^^;)

第2楽章
ここが一番魅力的な楽章でしょう。主に3つの美しいメロディが組み合わされて音楽は展開していきます。息の長い優美なフレーズにいつまでも浸っていたいと思わせるような音楽です。

第3楽章
序奏に続いて,独奏ヴァイオリンが勇壮なメロディを聞かせてくれてこの楽章はスタートします。。前の楽章の対照的な出だしを持ってくるのは定番、そして、展開部・再現部と続いてプレストのコーダで壮麗に終わるというおきまりのエンディングですが良くできています。

折り目正しいブルッフ


モリーニにしてみればどう考えても本線ではないレパートリーですから、彼女自身の希望と言うよりはレーベル側の要望で録音されたモノでしょう。このブルッフと同時にグラズノフのコンチェルトも録音していますからまず間違いないでしょう。

20世紀前半のヨーロッパの音楽家というのは「何でも演奏させていただきます」というような腰の低さとは無縁でした。自らが演奏するに値すると思う音楽だけにレパートリーを絞り込み、それ以外の作品には見向きもしないというのが基本でした。
モリーニもまたそのような古いタイプの音楽家の一人であり、彼女のレパートリーはウィーン古典派からブラームスなどのロマン派の作品あたりに限られていました。そして、そう言う基本的なスタンスを彼女はアメリカに移ってからも絶対に崩さなかったのです。

そんなモリーニがブルッフを演奏して録音していたというのはいささか驚きではあります。
ただし、録音を聞いてみて、やはりエリカ様はエリカ様です。エリカ様のヴァイオリンは「男前」の一言に尽き、潔さの上にほとばしるような清冽さが彼女の特徴でした。

さて問題はここからです。
ブルッフの協奏曲というのはロマン派のど真ん中にある音楽であって、ヴァイオリンが持つ「ロマン的美」を最高度に引き出した音楽だと言えます。ところが、エリカ様はそう言う「ロマン的」なモノが大嫌いなのです。ですから、たとえ頼まれたブルッフであってもご自分の作法は絶対に崩そうとしないのです。

そこで、結果として背筋がピンと伸びた折り目正しいブルッフが出来上がります。エリカ様にしてみれば、形の崩れかけたブルッフの音楽に渇を入れたと言うところでしょうか。そして、指揮者のフリッチャイもいまだ即物主義的な音楽をよしとした時期でしたし、エリカ様に逆らうことも出来ないので、オーケストラも実に折り目正しく響かせています。
そう言う意味では好き嫌いのはっきり出る演奏であることは事実です。

ただし、本来は折り目正しく演奏した方がよい作品を流麗に歌わせて演奏すると思わぬ魅力があふれ出すのと同じように、ロマンティックに歌い上げるべき作品をピシッと折り目正しく演奏すると思わぬ美があふれることも事実です。
逆に、折り目正しく演奏すべき音楽を折り目正しく演奏すると、それは立派ではあってもどこか予定調和的に感じられて楽しまない人もいるでしょう。それはまた、このブッルフのような音楽を徹底的にロマンティックに歌わせても事情は同じです。

いつも言っていることですが、大切なことはあまり決めつけるようなことはしないで、間口広く多様な表現を喜ぶことでしょう。


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