クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ネルベルト・カラヤン(Herbert von Karajan)|ヘンデル:水上の音楽(ハーティ版)

ヘンデル:水上の音楽(ハーティ版)

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1959年12月30日~31日録音

Handel:Water Music Suite [1.Allegro]

Handel:Water Music Suite [2.Air]

Handel:Water Music Suite [3.Bourree]

Handel:Water Music Suite [4.Hornpipe]

Handel:Water Music Suite [5.Andante espressivo]

Handel:Water Music Suite [6.Allegro deciso]


機会音楽

「水上の音楽」は名前の通り、イギリス国王の船遊びのために、そして「王宮の花火の音楽」は祝典の花火大会のために作曲された音楽です。

<追記>
一般的には、1715年のテムズ川での王の舟遊びの際にこの曲を演奏した、というエピソードが有名ですが、最近の研究では事実ではないと考えられているようです。
ただし、その2年後の舟遊びでは演奏されたことは間違いないようです。
<追記終わり>

クラシック音楽の世界では、こういう音楽は「機会音楽」と呼ばれます。機会音楽とは、演奏会のために作曲されるのではなく、何かの行事のために作曲される音楽のことをいいます。それは純粋に音楽を楽しむ目的のために作られるのではなく、それが作られるきっかけとなった行事を華やかに彩ることが目的となります。ですから、一般的には演奏会のための音楽と比べると一段低く見られる傾向があります。

しかしながら、例え機会音楽であっても、その創作のきっかけが何であれ、出来上がった作品が素晴らしい音楽になることはあります。その一番の好例は、結婚式のパーティー用に作曲されたハフナー交響曲でしょうか。
そして、このヘンデルの2つの音楽も、典型的な機会音楽でありながら、今やヘンデルの管弦楽作品を代表する音楽としての地位を占めています。

機会音楽というのは、顧客のニーズにあわせて作られるわけですから、独りよがりな音楽になることはありません。世間一般では、作曲家の内なる衝動から生み出された音楽の方が高く見られる傾向があるのですが、大部分の凡庸な作曲にあっては、そのような内的衝動に基づいた音楽というのは聞くに堪えない代物であることが少なくありません。それに対して、モーツァルトやヘンデルのようなすぐ入れた才能の手にかかると、顧客のニーズに合わせながら、音楽はそのニーズを超えた高みへと駆け上がっていきます。
そして、こんな事を書いていてふと気づいたのですが、例えばバッハの教会カンタータなどは究極の機会音楽だったのかもしれないと気づきました。バッハが、あのようなカンタータを書き続けたのは、決して彼の内的な宗教的衝動にもとづくのではなく、それはあくまでも教会からの要望にもとづくものであり、その要望に応えるのが彼の職務であったからです。そう考えれば、バッハの時代から、おそらくはベートーベンの時代までは音楽は全て基本的に機会音楽だったのかもしれません。

なお、「水上の音楽」は楽譜は出版されず、自筆譜もほとんどが消失しているために、曲の配列や演奏形態も確定されていません
以下のような19曲と3つの組曲に分ける形態が一般的なものとされています。

第1組曲 ヘ長調 HWV 348(9曲)

  1. 第1曲「序曲(ラルゴ - アレグロ)」

  2. 第2曲「アダージョ・エ・スタッカート」

  3. 第3曲「(アレグロ) - アンダンテ - (アレグロ)」

  4. 第4曲「メヌエット」

  5. 第5曲「エアー」

  6. 第6曲「メヌエット」

  7. 第7曲「ブーレ」

  8. 第8曲「ホーンパイプ」

  9. 第9曲(アンダンテ)



第2組曲 ニ長調 HWV 349(5曲)

  1. 第1曲(序曲)

  2. 第2曲「アラ・ホーンパイプ」

  3. 第3曲「ラントマン」

  4. 第4曲「ブーレ」

  5. 第5曲「メヌエット」



第3組曲 ト長調 HWV 350(5曲)

  1. 第1曲(メヌエット)

  2. 第2曲「リゴードン」

  3. 第3曲「メヌエット」

  4. 第4曲(アンダンテ)

  5. 第5曲「カントリーダンスI・II」




忘れ去られたハーティ版ですが・・・。

「水上の音楽」は基本的には「機会音楽」だったので、作曲者の生前には楽譜は出版されませんでした。つまりは、そう言う類の音楽とはヘンデル自身も思っていなかったのでしょう。ですから、その自筆譜もほとんどが消失しているために、曲の配列や演奏形態も確定されていません
つまりは、曲の配列や演奏形態は校訂者や演奏者の判断に委ねられているということです。

そして、現在はなんと言っても「原典尊重」ですから、音楽学者達の貢献によっておそらくは原型に最も近いであろう形態、つまりは第1組曲が9曲、第2組曲が5曲、第3組曲が5曲の計19曲からなる形が定番となっています。
しかし、それ以外にアイルランドの作曲家、ハミルトン・ハーティによる6曲からなる「ハーティ版」というものがありました。


  1. 第1曲 アレグロ、ヘ長調

  2. 第2曲「エア」アンダンテ・ウン・ポコ・アレグレット、ヘ短調

  3. 第3曲「ブーレ」ヴィヴァーチェ、ヘ長調

  4. 第4曲「ホーンパイプ」デリカート・マ・ノン・モルト・ブリオ、ヘ長調

  5. 第5曲 アンダンテ・エスプレッシーヴォ、ニ短調

  6. 第6曲 「アラ・ホーンパイプ」アレグロ・デチーソ、ニ長調



随分と刈り込んだ構成なのですが、それよりは楽器編成を大幅に強化しているのが特徴です。それは慎ましやかなバロック音楽ではなくて、標準的な2管編成のオーケストラ曲に仕上げているのです(ホルンは4本に強化)。
さらに、テンポ設定やダイナミクスに関しても細かく指定して、完全にバロック音楽とは全く違う音楽に仕上げています。

ですから、今日では作曲家の意図を木っ端微塵に粉砕する許し難い暴挙と受け取られているのか、演奏されることも録音されることも殆どありません。

しかし、どういう風の吹きましなのか、「水上の音楽」と言ったときに真っ先に思い浮かぶカラヤンやセルによる録音はこのハーティ版を使っているのです。
セルなんかは、ハーティによる増強作戦だけではまだ物足りないと思ったのか、響きが薄いところには暇そうな楽器(ホルン)を追加して響きをふくらますようなことまでしているのです。

カラヤンとベルリンフィルはそこまでの改変はしていないように聞こえるのですが、ベルリンフィルのグラマラスな響きをフルに活用して、辛気くさいバロック臭さを吹き飛ばしてくれています。美しく磨き抜くところは徹底的に美しく、そしてオーケストラの威力を誇示すべきところは圧倒的な迫力で聞き手を酔わせます。
それを作り物めいた偽物という人もいるでしょうが、では誰がこれほど凄い偽物を作るというのでしょうか。

そして、何が面白いと言って、今日でも、「水上の音楽」と言えばこのセルとカラヤンの演奏によってイメージが作られているという人が多いのです。実に楽しい話ではないですか!!

この演奏を評価してください。

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2017-07-12:benetianfish





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