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カラヤン(Herbert von Karajan)|ビゼー:「アルルの女」第2組曲
ビゼー:「アルルの女」第2組曲
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1958年1月14日~15日録音
Bizet:L'Arlesienne Suite No.2 [1.Pastorale]
Bizet:L'Arlesienne Suite No.2 [2.Intermezzo]
Bizet:L'Arlesienne Suite No.2 [3.Minuet(From La Jolie Fille de Perth)]
Bizet:L'Arlesienne Suite No.2 [4.Farandole]
編成を変えて大成功
この作品はアルフォンス・ドーテの戯曲「アルルの女」の劇附随音楽として作曲されました。戯曲の方は大成功を収めアルフォンス・ドーテの名声を不動のものにしたそうです。残念ながらフランス文学には至って暗いので、アルフォンス・ドーテという名を聞かされても全くピントこないのですが、そちらの世界ではなかなかに有名な人らしいです。
ただ、ビゼーが必死の思いで作曲した方の音楽はあまり評判がよくなかったという話が伝わっています。
理由ははっきり分からないのですが、どうも「アルルの女」を上演した劇場のオーケストラが小編成で技術的にも問題があったのではないかと推測されています。
しかし、作曲をしたビゼーの方はこの作品に絶対の自信を持っていたようで、全27曲の中からお気に入りの4曲を選んで演奏会用の組曲に仕立て直しました。これがアルルの女の第1組曲です。劇判音楽の方はいびつな小編成のオケを前提としていましたが、組曲の方は通常の2巻編成のオケを前提として編曲がなされています。
そして、ビゼーの死後、親友のギローが新たに4曲を選んで(有名な第3曲のメヌエットは「美しいパースの女」からの転用)組曲にしたのが第2組曲です。
この組曲の方はビゼーの死後に発表されて大好評を博しました。
<第1組曲>
- 第1曲:「前奏曲」
- 第2曲:「メヌエット」
- 第3曲:「アダージェット」
- 第4曲:「カリヨン」
<第2組曲>
- 第1曲「パストラール」
- 第2曲「間奏曲」
- 第3曲「メヌエット」
- 第4曲「ファランドール」
半端な作品(?)ばかりを押しつけられて・・・。
データというのは単独で眺めていても殆ど意味を持ちませんが、ある程度まとまってみると色々なことに気づかされます。
カラヤンは1955年にベルリンフィルとのアメリカツアーを成功させることで「終身常任指揮者」のポストを確認します。しかし、録音に関してはベルリンフィルは「DG(ドイツ・グラモフォン)」の専属だったので、EMIはカラヤン&ベルリンフィルという組み合わせで録音を行うことが出来ませんでした。
その事は、EMIにとっても打撃だったのですが、カラヤンとベルリンフィルにとっても困った話だったはずです。
そして、色んな「大人の事情」もあったと思うのですが、58年にはカラヤンは「DG」と契約を結び、60年には「EMI」との契約を解除しています。おそらく、この契約解除は「DG」との契約をかわすときには視野に入っていたようです。
その証拠に、ベルリンフィルとカラヤンは57年から「EMI」で録音をはじめるからです。
世間ではこれをカラヤンのEMIに対する「手切れ金」と言われています。
「DG」にしてみても、カラヤンと契約を結ばなければベルリンフィルとの録音は出来ません。それならば、いらぬトラブルを起こすことなくカラヤンを「EMI」から移籍(引き抜き^^;)させたかったのでしょう。専属契約を結んでいるベルリンフィルが「EMI」で録音することを認めたのは「移籍金」の意味合いもあったのかもしれません。
そして、カラヤンとベルリンフィルが「EMI」ではじめて録音したのは1957年1月のワーグナーの管弦楽曲集でした。
面白いのは、それ以後のベルリンフィルとフィルハーモニア管との使い分けです。
まずベルリンフィルとの録音を挙げておきます。
- ワグナー:管弦楽曲集 1957年1月7,8日、2月18,19日録音
- シューマン:交響曲第4番 1957年4月25,26日録音
- ブルックナー:交響曲第8番 1957年5月23~25日録音
- ヒンデミット:交響曲「画家マチス」 1957年11月28,29日録音
- ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界から」 1957年11月28,29日、58年1月6・7日録音
- スメタナ:モルダウ 1957年5月18~20日
- モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク、ヘンデル:水上の音楽 1959年12月30,31日録音
- シューベルト:交響曲第5番5 1958年5月18~20日録音
- ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 1958年12月30,31日録音
- モーツァルト:交響曲第29番 1960年2月29日~3月1日録音
- チャイコフスキー:交響曲第4番 1960年2月29日~3月1日録音
- バルトーク:弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽 1960年11月9日~11日録音
次ぎにフィルハーモニア管との録音です。
- チャイコフスキー:大序曲1812年、ベルリオーズ:ラコッツィ行進曲、リスト:ハンガリー狂詩曲第2番、シベリウス:悲しきワルツ、ウェーバー:舞踏への勧誘 1958年1月7,9日・2月6,7日録音
- レスピーギ:交響詩「ローマの松」、ベルリオーズ:ローマの謝肉祭、リスト:交響詩「前奏曲」 1958年1月9,10,13,17日録音
- オッフェンバック:バレエ「パリの喜び」、ロッシーニ:チロルの合唱、グノー:ワルプルギスの夜 1958年1月13日~16,18日録音
- R・シュトラウス:楽劇「ばらの騎士」第1組曲 1958年1月18日録音
- ビゼー:アルルの女 第1組曲、第2組曲、カルメン組曲 1958年1月14日~16日録音
- ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス ニ長調作品123 1958年9月12日~16日録音
- モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」 1958年9月16,17日録音
- チャイコフスキー:バレエ「白鳥の湖」組曲、チャイコフスキー:バレエ「眠れる森の美女」組曲 1959年1月1日~3日録音
- オペラ間奏曲集:1959年1月2日~6日録音
- シベリウス:交響詩「フィンランディア」 1959年1月5・6日録音
- ロッシーニ:序曲集 1960年3月26,29、30日録音
- シベリウス:交響曲第2番 1960年3月28日~29日録音
- ウェーバー:魔弾の射手序曲、ワグナー:さまよえるオランダ人序曲、ローエングリン第1幕前奏曲、ニコライ:ウィンザーの陽気な女房たち序曲、メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」1960年9月16日~20日録音
- オペラ・バレエ曲集 1960年9月21日~23日録音
- シベリウス:交響曲第5番 60年9月20・21・23日
- プロムナード・コンサート:1960年9月21,24日録音
いくつかの例外はありますが、フィルハーモニア管は「管弦楽曲集」とか「間奏曲集」とか「序曲集」とか、果ては「プロムナード・コンサート」みたいな半端な作品ばかりが割り当てられています。
シベリウスの交響曲が割り当てられているのは、イギリスのオケの方が適正があると判断したからでしょう。
こうしてみると、58年に予定されたベートーベンのミサ・ソレムニスが異彩を放っています。これは、もしかしたら半端物ばかり押しつけられるフィルハーモニア管の士気高揚という面もあったのかもしれません。ところが、既に述べたように、それが録音的に失敗に終わるのですから目も当てられません。
そして、カラヤンの方もそう言う使い分けをはっきり意識していたのか、このビゼーの録音などは実にあっさりとした仕上げになっています。
カラヤンはビゼーのオペラをよく取り上げていますし、「カルメン」や「アルルの女」の組曲も何も録音しています。後年の、ベルリンフィルとの録音と較べれば、全く別人かと思うほどの薄味に仕上がっています。もしかしたら、オケの方も心変わりした恋人のようにとらえていたのかもしれません。
ただ不思議なのは、そうやってお互いに肩の力が抜けてしまった結果、これはこれなりにスッキリとした演奏に仕上がっていて悪くないと言えば悪くないのです。
そのあたりが、面白いと言えば面白いのですが、後年の「レガート・カラヤン」を期待すると肩すかしを食いますのでご用心あれ!
この演奏を評価してください。
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