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モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299


カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団 (fl)オーレル・ニコレ (Harp)ローゼ・シュタイン 1960年-1962年録音


モーツァルトのメロディーは美しい。しかし、それはため息のように短い。

アンダンテ楽章冒頭の序奏をうけて歌いだすフルートの旋律は、そんなモーツァルトの特長がもっともよく出ています。短くはあっても、一度聞けば決して忘れないメロディーです。 

 この旋律がもっとも効果的に使われたのが、映画「アマデウス」です。
 サリエリがはっきりとモーツァルトに対する殺意を固める場面です。
 またこの場面は、サリエリの口を通してこの上もなく素晴らしいモーツァルトへの賛辞が聞ける場面でもあります。


 コンスタンツェが夫モーツァルトの作品を持ってサリエリを訪れるところからこの場面は始まります。

 皇帝の姪であるエリザベートの音楽教師の職にありつくために、夫に内緒で作品を持ち込んだのです。
 サリエリは作品をおいていくように仕向けますが、コンスタンツェは断ります。

コンスタンツェ
 「主人に知れたら叱られます。オリジナルですから。」
サリエリ
 「これはオリジナルですか?」
コンスタンツェ
 「えぇ、写しは作りません」
サリエリ
 「これは本当にオリジナルですか?」

 そう言って、思わず立ち上がってサリエリは譜面を見つめます。
 すると、そこにこの「フルートとハープのための協奏曲」の第2楽章冒頭のメロディーが流れます。
 そして、この音楽をバックに晩年のサリエリが語りだします。

 「仰天した。とても信じられなかった。 曲想がうかぶまま書いたオリジナルが、どこにも書き直しがない。
どれも直前に完成しているのだ、頭の中で。 どのページも写したように整っている。」

 「その音楽は見事なまでにかんぺきだった。
音符一つ変えるだけで破綻が生じ、楽句一つで音楽がこわれる。」

 「私は思い知った。・・・それは神の声による響きなのだ。
五線紙に閉じこめられた小さな音符の彼方に、私は至上の美を見た。」

 そして、打ちのめされたサリエリは部屋に閉じこもり、初めて神を冒涜する言葉を口にして、十字架を火の中に投じます。

 「もうあなたは、敵だ。憎い敵だ。
あなたは、神の賛美を歌う役目に、好色で、下劣で、幼稚なあの若造を選んだ。」

 「そして私には彼の天分を見抜く能力だけ。あなたは不公平で、理不尽で、冷酷だ。」

 「あんたの思い通りにはさせない。あんたの創造物であるあいつを、傷つけ、打ち砕く。あんたの化身であるあいつを滅ぼす。」


 しかし、そんなサリエリの苦悩のバックに流れるモーツァルトの音楽の美しいこと。
 やはり、いつの世も神は不公平なものです。

水面下でのやり取りが面白い


オーレル・ニコレのように長生きをしてしまうと晩年はほとんど情報も入ってこなくなり、突然の訃報を知ったときには「まだ、存命だったんだ!」などと言う怪しからぬ事を思ってしまうのです。

ニコレと言えば、ランパルとならんでフルートの2枚看板でした。
こう書くと、ベーター・ルーカス・グラーフも忘れてくれるなと言う声も聞こえてきそうなのですが、知名度という点ではこの二人には大きく譲ります。

ランパルとニコレを並べてみれば、残念ながらニコレの方はいささか影が薄くなってしまっているような気がします。ランパルは亡くなってから既に15年以上の時間が経過しているのですから、考えてみれば不思議な話です。

ニコレは12才ではじめてリサイタルを開いた早熟の天才であり、24歳の時にはフルトヴェングラーに見いだされてベルリン・フィルの首席奏者に抜擢されます。その後、チェリビダッケやカラヤンのもとで演奏を行うのですが、彼が深く尊敬したのはカラヤンではなくてチェリビダッケの方でした。
あまりふれている人は少ないのですが、実際の演奏活動を通して、ニコレが帝王カラヤンではなくて異端児のチェリビダッケの方を評価していたというのは非常に興味深いものがあります。
どうでもいい話ですが、ニコレは髪型も含めて見た目はカラヤンに似ていると思うので、その事は何となく不思議な感じを与えます。まったく、どうでもいい話ですが・・・(^^;

ランパルとニコレを並べてみれば、その関係はどこかカラヤンとチェリビダッケに似ています。
もちろん、二人はカラヤンとチェリビダッケほどには仲が悪くはなかったでしょうし、ニコレもまたチェリビダッケほど狷介な性格ではありません。しかし、狷介とまではいかなくても、演奏でも教育でもかなり厳格な精神の持ち主であったことは事実のようです。

また、ニコレはチェリビダッケのように録音という行為そのものを否定していたわけでもありません。
しかし、カラヤン的な「売れるなら何でもやります」みたいなところがあったランパルに対して、ニコレの方はそこまで「芸人」には徹しきれない潔さがありました。

カラヤンはよく「星の数(屑)」ほど録音したと言われますが、ランパルもまた膨大な量の録音の残しています。
それと比べれば、ニコレは非常に禁欲的であり、その面でもチェリ的です。

こういう世界では「露出」することが大切であり、それは亡くなってからでも意味を持ちます。それは「まだ存命だったんだ」と「もう亡くなっていたんだ」くらいの差になることもあります。
ただし、厚かましさがあれば「露出」が出来るというわけでなく、そこには「露出」に耐えうる「芸」と、「露出」することで「あれこれ批判される事」に屈しないタフな「精神力」が不可欠です。

貶しているわけではないのですが、日本側の要望で「ちんちん千鳥」なんかを録音しているランパルを聞くと、「この人はタフだなぁ!」と感心してしまうのです。
そして、そう言う面でもっともタフだったのはカラヤンでした。

そんなニコレですから、ベルリンフィルが完全にカラヤン統治下になるとやめてしまうのは当然だったでしょう。(1959年)
そして、ソロ活動に転身していく中でリヒターとの関係を深めていき、随分とたくさんの録音を残しています。

ただし、そう言う二人の関係がどこまで良好だったのかは分かりません。いろいろ調べてみたのですが、ニコレはゴシップネタになるようなことはしゃべらない人だったようで、ただ、一つだけチェリビダッケへの尊敬だけを隠さなかったと言うことです。

このモーツァルトの二つのコンチェルトとハープとの協奏曲を聞くと、カラヤン流の横への流れだけを重視した音楽に拒否感があったことはよく分かります。
リヒターはモーツァルトであっても、バッハの時と同じようにパキパキと縦割りで音楽を進めていきます。もちろん、バッハほどくっきりとエッジを立ててはいないので「厳格」とまでは感じませんが、それでもかなり厳しい表情になっていることは事実です。
そして、ハープは完全にリヒターの指示に従っているようで、まさに縦割りのラインが目に見えるかのような響かせ方です。

もちろん、ニコレもまたフルートを雰囲気だけで気持ちよく横へ流していくようなスタイルではないのですが、さすがにここまでパキパキやられるといささか居心地が悪そうな雰囲気があり、隙を見ては横へ流そうとしている節もあります。
そして、協奏曲というのは、こういう水面下でのやり取りが面白い面もあるのですが、それでも録音が終わったと後が和やかだったかどうかは疑問が残ります。

60年代の半ば以降からリヒターは急激に衰えていくので、その面も割り引いて考える必要があるともうのですが、それでもこの二人はこれ以後はほとんど共演していないように思うので、どこか本質的に異なる部分があったのでしょう。

なお、録音が「1960年-1962年録音」となっているのは、レーベルの度重なる合併によって詳しいデータが紛失してしまったことが原因のようです。いろいろ調べてみたのですが、レーベルの側でも分からないことが私に分かるはずもなく、この表記としました。

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