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サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ 作品28

(Vn)エリック・フリードマン ワルター・ヘンドル指揮 シカゴ交響楽団 1962年2月3日録音

Saint-Saens:Introduction et rondo capriccioso, Op.28




サラサーテとの合作?

この作品、調べてみるとサン=サーンスがサラサーテのために1863年、28歳の時に作曲した、と書かれているのですね。ところが、さらに調べてみると完成したのが5年後の1868年、さらに初演はそこからさらに4年後の1872年にサラサーテによって行われているのです。
ずいぶん悠長な話ですが、19世紀というのはそれくらいのスピード感だったのでしょうか。
しかし、聞くところによると、この作品はとても技巧的で難しそうに見えるのですが(実際、かなり難しいことは間違いないのですが)、「無理」を強いられることはなく、それなりのテクニックを持ったヴァイオリニストには気持ちよく演奏できる作品らしいです。そして、その「努力」が聞き手にしっかり伝わるという点では、演奏家にとっては「報われる」作品でもあるらしいです。
おそらく着手から完成までに5年の歳月がかかったのは、そう言う演奏上から来る要請をサラサーテが細かくサン=サーンスに伝え、それをサン=サーンスがスコアにしていくという「キャッチボール」に時間がかかったのではないでしょうか。(あくまでも、私の想像ですが・・・)

さて、この作品はタイトルのまんまで、前半の「序奏」と後半の「ロンド」に分かれています。
「序奏」は依頼者のサラサーテに敬意を表してかジプシー風のメランコリックな音楽が切々と歌われます。そして、この「歌」が弦楽器の「全奏」で断ち切られると後半の華やかな「ロンド」に突入します。おそらく、この一粒で二度おいしい構成がこの作品の人気を支えていると思います。
ロンド部分は「カプリチオーソ」と題されているように、まさに気まぐれに、様々な感情が入り乱れ絡み合います。ですから、ソリストによってこのあたりはかなりテンポが伸び縮みするようで、オケにとっては結構大変なようです。しかし、聞き手にとってはソリストがこの部分をどう料理するのか聞き所ではあります。

ハイフェッツの後継者


「エリック・フリードマン」というヴァイオリニストも今となっては記憶の彼方に消えつつあります。
一通りプロフィールを紹介すれば以下のようになります。

「1939年にアメリカのニュージャージー州ニューアークに生まれる。6歳よりヴァイオリンを学び始め、10歳からジュリアード音楽院でイヴァン・ガラミアンに師事する。その後、個人的にヤッシャ・ハイフェッツやナタン・ミルシテインのレッスンを受け、1959年からは南カリフォルニア大学でハイフェッツのクラスで学ぶ。
1961年にロンドンでバッハの2台のヴァイオリンのための協奏曲でハイフェッツと共演し録音を行う。ハイフェッツにとって他のヴァイオリニストと二重奏を録音した唯一のものとなった。
RCAに録音を続ける傍ら、1966年のチャイコフスキー国際コンクールでは6位入賞。(なんか中途半端^^;)
1980年に自動車事故で左手と腕を負傷してからはイェール大学での教育活動に専念し、2004年にニューヘイブンで癌のためになくなる。」

いつも思うことですが、こうやって「公式」のプロフィールというものは、いくらそれを眺めても「ただの知識」でしかなく、彼の「音楽」とは全く無縁だと言うことです。
ただ、バイロン・ジャニスとホロヴィッツとの関係と同じように、フリードマンにとってもハイフェッツとの関係は有り難くもあり、悩ましいものだったことでしょう。レコード会社(RCA)はフリードマンを「ハイフェッツの後継者」として売り出したのですが、それも彼にとっては自らのキャリアを築いていく上では有り難くもあったでしょうが、それ以上に悩ましいものだったはずです。

ただし、彼は自分の本名である「Eric」を「Erick」に改名しています。
それは、「Jascha Heifetz」や「Fritz Kreisler」がともに13文字だったので、自らもそうなりたいという思いをこめて「k」を付け加え「Erick Friedman」としたのです。
それだけハイフェッツへの尊敬の念が強かったと言うことです。

そして、結果として不幸な事故で演奏家としての活動は断念して教育活動に専念することになるのですが、それでもその重圧に押しつぶされることなく、見事に晩年を全うしたことでアメリカでは今もって多くの熱烈なファンが存在します。

このパガニーニとサン・サーンスの2曲は1962年2月3日にまとめて録音しているのですが、「ヴァイオリンというのはやはりこうでなくっちゃイカンよ!!」と思わず言いたくなるほどの素晴らしい出来です。
本当に唖然とするほどの腕の冴えであり、さらに驚くのはそれを見事なまでに捉えきった録音エンジニア、ルイス・レイトンの腕の冴えです。
そこには、衰えの翳りが見えつつある看板演奏家「ハイフェッツ」に変わりうる「スター」を生み出したいという「RCA」の強い思いが読み取れます。

誰とは言いませんが、深い精神性をこめてギーコ、ギコギコ弾いてくれるのが好きな人もいるでしょうが、それでもこういうどこか異次元空間に突き抜けていってしまうようなカタルシスを感じさせてくれるのはヴァイオリンならではの世界です。
そして、それを支えるオケも、どう考えても楽しい仕事とは思えないのですが、さすがに未だライナー統治下のシカゴ響、一点の緩みもなくフリードマンをサポートしています。

なるほど、恥ずかしながらフリードマンの演奏は始めて聞いたのですが、アメリカがうんだ20世紀最高のヴァイオリニストと固く信じる人が今も多くいることを納得させてくれる演奏です。


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