クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ブッシュ弦楽四重奏団(The Busch Quartet)|シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 D.810「死と乙女」

シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 D.810「死と乙女」

ブッシュ弦楽四重奏団 1936年10月16日録音



Schubert:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」 第1楽章

Schubert:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」 第2楽章

Schubert:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」 第3楽章

Schubert:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」 第4楽章


緊密で劇的緊張にあふれた作品です。

この作品には「死と乙女」という標題がつけられていますが、それは彼のリート作品「死と乙女」が引用されているためです。
歌曲「死と乙女」はよく知られているように、死へと誘う悪魔のささやきと、それに抗する乙女の言葉から成り立っています。そのために、この作品をシューベルト自身の死生観が表明されたものだという見方があります。
もちろんそう言う面は否定できませんが、それだけでこの作品を見てしまうと誤ることになります。

虚心坦懐に耳を傾ければ分かることですが、この作品は他の四重奏曲と比べると異質の存在です。
それは前作となる第13番「ロザムンデ」と比べてみれば明らかです。この上もなくメランコリックな叙情性にあふれていて、歌そのものが作品を支配しています。私たちが思い浮かべるシューベルトの姿に最も相応しいのはロザムンデの方です。
ところが、この「死と乙女」はそれとは対照的にベートーベンの弦楽四重奏曲を思わせるような緊密で劇的な構成が特徴となっています。それはシューベルトが述べたように「交響曲への道」を目指すものでした。
第2楽章のあまりにも美しいメロディに幻惑されてはいけません。

第1楽章で主題動機が徹底的に展開される様子はまったく持ってベートーベン的です。第3楽章の荒々しいスケルツォも同様です。

シューベルトは数多くの弦楽四重奏曲を残しましたが、歌心にあふれたシューベルト的な美質と、ベートーベン的な構築がこれほどまでに見事に結合した作品は他には見あたりません。


痛切なまでの悲しさにあふれた演奏

歴史的録音を聞いていると、時々とんでもない演奏に出会い金縛り状態に陥ることがあります。やっとの事で我に返ってGoogleしてみると、知らなかったのはユング君だけだったみたいで世間では既に歴史的名演として評価が定着していることがほとんどです。
今回のブッシュカルテットによる「死と乙女」の演奏もおそらくはそう言う範疇に入る演奏だと思うのですが、これは本当に素晴らしい演奏です。
おそらくは、この作品のベストの演奏だと思います。

ブッシュカルテットと言えば何よりもベートーベンが有名なので、今回はシューベルトの作品と言うことであまり期待もしないで聞き始めました。しかし、第1楽章から悲しみにあふれた演奏であり、とりわけ第2楽章では、未だかつて聞いたことがないほどの痛切な悲しみに彩られていて、完全な金縛り状態になってしまいました。
それにしても、これはなんという演奏でしょう。なんの気負いもてらいもなく、淡々と歌い上げているだけなのに言いようのない深い悲しみと絶望感が聞き手に迫ってきます。

健康は回復する望みもなく、将来に対する夢や希望も次々と消え去っていく中で、それでも音楽を作り続けるしかなかったシューベルトの悲しみです。

冬蜂の死にどころなく歩きけり
唐突に村上鬼城のそんな句が頭に浮かんでくるような演奏でした。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



303 Rating: 6.8/10 (321 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2012-02-27:中野 定昭


2015-02-13:末吉 善蔵





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-11-21]

ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)

[2024-11-19]

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)

[2024-11-17]

フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)

[2024-11-15]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-11-13]

ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)

[2024-11-11]

ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)

[2024-11-09]

ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)

[2024-11-07]

ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)

[2024-11-04]

ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)

[2024-11-01]

ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)