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ベートーベン:弦楽四重奏曲第4番 ハ短調 OP.18-4


(1st violin)エリカ・モリーニ (2nd violin)フェリックス・ガリミール (viola)ワルター・トランプラー (cello)ラズロ・ヴァルガ 1956年録音


ベートーベンの心の内面をたどる



ベートーベンの創作時期を前期・中期・後期と分けて考えるのは一般的です。ハイドンやモーツァルトが築き上げた「高み」からスタートして、その「高み」の継承者として創作活動をスタートさせた「前期」、そして、その「高み」を上り詰めた極点において真にベートーベンらしい己の音楽を語り始めた「中期」、やがて語り尽くすべき己を全て出力しきったかのような消耗感を克服し、古典派のスタイルの中では誰も想像もしなかったような深い瞑想と幻想性にあふれる世界に分け入った「後期」という区分です。

ベートーベンという人はあらゆるジャンルの音楽を書いた人ですが、交響曲とピアノソナタ、そして弦楽四重奏はその生涯を通じて書き続けました。とりわけ、弦楽四重奏というジャンルは第10番「ハープ」と第11番「セリオーソ」が中期から後期への過渡的な性格を持っていることをのぞけば、その他の作品は上で述べたそれぞれの創作時期に截然と分類することができます。さらに、弦楽四重奏というのは最も「聞き手」を意識しないですむという性格を持っていますから、それぞれの創作時期を特徴づける性格が明確に刻印されています。
そういう意味では、彼がその生涯において書き残した16曲の弦楽四重奏曲を聞き通すと言うことは、ベートーベンという稀代の天才の一番奥深いところにある心の内面をたどることに他なりません。

<前期の6作品>

弦楽四重奏曲という形式を完成させたのは言うまでもなくハイドンでありモーツァルトです。彼らは、単なるディヴェルティメント的な性格しか持っていなかったこの形式を、個人の心の内面を語る最もシリアスな音楽形式へと高めていきました。ベートーベンがこの形式の創作のスタートラインとしたのは、このハイドンやモーツァルトが到達した終着点だったのです。

ベートーベンがこのジャンルの作品を初めて世に問うたのは30才になろうとする頃です。この時までに、彼は室内楽の分野では多くのピアノ・トリオと弦楽三重奏曲、三つのヴァイオリン・ソナタ、二つのチェロ・ソナタ、さらに様々な楽器の組み合わせによる四重奏や五重奏を書いています。ですから、作品番号18として6曲がまとめられている最初の弦楽四重奏曲は、その様な作曲家としての営為の成果を問うものとして、まさに「満を持して」発表されました。

弦楽四重奏曲第1番 ヘ長調 OP.18-1
全6曲の中ではおそらく2番目に創作されたものだと言われています。しかし、第1楽章の堂々たる音楽を聞けば、何故にベートーベンがこの作品を「第1番」とナンバリングしたのかが分かります。
最初の2小節で提示される動機を材料にして緊密に全体をくみ上げていく手法は後のベートーベンのすすみ行く方向性をはっきりと暗示しています。また、深い情緒をたたえた第2楽章も「ぼくはロメオとジュリエットの墓場の場面を考えていた」と述べたように、若きベートーベンの憂愁をうかがわせるものであり、まさにこのジャンルのスタートを飾るに相応しい作品に仕上がっています。

弦楽四重奏曲第2番 ト長調 OP.18-2「挨拶」
全6曲の中では3番目に完成されたものだと言われています。第1楽章の主題がまるで「挨拶」をかわしているかのように聞こえるために、それが作品のニックネームとなっています。

弦楽四重奏曲第3番 ニ長調 OP.18-3
ベートーベンが完成させた最初の弦楽四重奏曲だと言われています。全6曲の中では最も明るさと幸福感に満ちた作品ですが、それは、ウィーンに出てきて音楽家としての新たなスタートを切った青年ベートーベンの希望に満ちた心象風景の反映だろうと言われています。

弦楽四重奏曲第4番 ハ短調 OP.18-4
作品番号18の6曲の中では最も最後に完成された作品だと言われています。そして、最後だからと言うわけではないのですが、疑いもなくこの全6曲の中では最も高い完成度を誇っているのがこの作品です。
モーツァルトにとってト短調というのが特別な意味を持った調性だったように、ベートーベンにとってはハ短調というのは特別なものでした。ベートーベンがこの調性を採用するときは音楽は劇的な性格の中に悲劇的な美しさを内包するものとなりました。そして、おそらくはこの調性に彼が求めていたものを初めてしっかりとした形で実現したのがこの作品だったと言えます。

弦楽四重奏曲第5番 イ長調 OP.18-5
全6曲の中では4番目に作曲されたものですが、聞けば分かるようにモーツァルトの音楽を連想させるような音楽で、とりわけ第2楽章のメヌエットはまるでモーツァルト聴いているかのような錯覚に陥ります。そういう意味では最もベートーベンらしくない作品なのですが、聞いていて実に楽しい気分させてくれると言うことでは悪くない作品です。

弦楽四重奏曲第6番 変ロ長調 OP.18-6
全6曲の中では5番目の作品というのが痛切ですが、番号通り最後の作品と見る人もいます。全体としては初期作品に共通する「明るさ」が全曲を支配しているのですが、第4楽章の冒頭に「ラ・マリンコニア(メランコリー)」と題された長大な序奏がつくのが特徴です。

室内楽は対話


最近つまらないなと思うのは、ソリスト達が室内楽にはあまり興味を示さないことです。それでも、ピアニストなんかだと三重奏曲や四重奏曲に取り組む人は結構いるのですが、ヴァイオリニストとなると、弦楽四重奏などに取り組む人はほとんどいないのではないでしょうか。
昔は、「100万ドルトリオ(ルービンシュタイン、ハイフェッツ、フォイアマン)」とか「カザルス・トリオ(コルトー、ティボー、カザルス)」なんていって、大物ソリスト達が室内楽にも結構熱心に取り組んでいたものです。

ですから、モリーニがこういう形で3曲も弦楽四重奏曲の録音を残してくれたのは有り難い話です。
当然の事ながら、この四重奏団は常設の団体ではありませんから、阿吽の呼吸で合わせるなどと言うことはできません。いや、明らかにできていないように聞こえます。(^^;

しかし、室内楽の演奏というのはそう言う予定調和の世界に入ってしまうと、演奏の精度は上がっても、音楽としての面白味は一歩後退してしまいます。

やはり、室内楽は「対話」です。お互いの顔を見ながら生き生きとした対話が交わされてこそ室内楽を演奏する楽しみがあり、そう言う楽しさを持って演奏されてこそ聞く方も室内楽の醍醐味が味わえるというものです。
そう言うわけで、こういう組み合わせでもっとモリーニが参加した四重奏曲を聴きたいと思うのですが、調べてみた範囲ではやはり以下の2曲しか残っていないようです。


  1. ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番 ハ短調 作品18

  2. モーツァルト:弦楽四重奏曲第23番 ヘ長調 K.590



なお、モーツァルトに関してはステレオ録音のヴァージョンもあるようなのですが、モノラル録音の方が音楽の美味しい部分が上手くすくい上げられています。とりわけ、モリーニの清冽なヴァイオリンの音色はモノラル録音の方に軍配が上がりますので、ここではモノラル録音の方を公開しておきます。
なお、カルテットを組んだメンバーは以下の通りです。


  1. エリカ・モリーニ(1st Violin)

  2. フェリックス・ガリミール(2nd Violin):50年代にNBC交響楽団のコンサートマスターを務めていたお方です。(^^v

  3. ワルター・トランプラー(Viola):モーツァルトの弦楽五重奏曲をブダペスト弦楽四重奏団と録音したことで有名ですね。

  4. ラズロ・ヴァルガ(Cello):レナー四重奏団のチェロ奏者であり、カルテット解消後はニューヨークフィルの首席奏者を務めていました。


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