クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|カッチェン(Julius Katchen)|ブラームス:ピアノソナタ第1番 ハ長調 作品1

ブラームス:ピアノソナタ第1番 ハ長調 作品1

(P)ジュリアス・カッチェン:1963年9月30日~10月1日録音

Brahms:Piano Sonata No.1 in C major, Op.1 [1.Allegro]

Brahms:Piano Sonata No.1 in C major, Op.1 [2.Andante]

Brahms:Piano Sonata No.1 in C major, Op.1 [3.Scherzo: Allegro molto e con fuoco]

Brahms:Piano Sonata No.1 in C major, Op.1 [4.Finale: Allegro con fuoco]


作曲家ブラームスのキャリアの出発点

「ハンマークラヴィーア・ソナタ」を思わせるような堂々とした響きで始まるこの第1番のソナタには「作品1」が付されています。ですから。ベートーベンの後継者を自認するブラームスの「処女作」かと思いきや、それは単なる出版上の都合だったようです。
しかし、ブラームス自身はこの作品に強い自信を持っていたようなので、これよりも先に作曲された2番ソナタやスケルツォの小品集に「作品1」を呈するよりは納得できたのでしょう。

このソナタ1番は、明らかにベートーベンの強い影響を受けています。
全曲は第1楽章の第1主題によって統一されています。そして、そのダイナミックで幅広い音域を使った音楽はまさにベートーベンです。
しかし、そう言うベートーベンの衣を纏いながら、例えば第2楽章に自らが幼い頃から親しんだ民謡の旋律を使うなど、古典派とは違う標題音楽的なアクセサリも身に纏っています。引き継ぐべきものはしっかりと引き継ぎながら、そこに自分なりの個性を刻み込めたところに強い自負があったのでしょう。

この作品の初演はブラームス自身の演奏で行われるのですが、そこにはシューマンの強力な後押しがありました。
ブラームスは生まれ故郷のハンブルグでもほとんど知られていなかったのですが、その無名の若き音楽家をシューマンが高く評価しているというので、一度みんなで聞いてみようという運びになったようなのです。
そして、その初演が好意的に受け入れられたことで、さらにシューマンの後押しもあって出版の運びとなったのです。

そして、その翌年はブラームスと知り合ったばかりのハンス・フォン・ビューローによって公開の演奏会で取り上げられます。
さらに、この作品はヴァイオリニストのヨアヒムに献呈されています。
ピアノソナタをヴァイオリニストに献呈するというのは不思議な話なのですが、調べてみるとブラームスをシューマンに紹介する労をとったのがヨアヒムだったので、その事への感謝として献呈されたようなのです。

つまりは、この作品を巡って、その後のブラームスを語る上では欠かすことのできないシューマン、ビューロー、ヨアヒムという人物が登場するのです。
その意味でも、このピアノソナタ第1番こそは、作曲家ブラームスのキャリアの出発点となったのです。


色気がありながら、欲から距離がおける希有の存在

かつて、デ・ヴィートのことを「ブラームス弾き」と述べたのですが、ピアノの世界における「ブラームス弾き」は疑いもなくカッチェンでしょう。
デ・ヴィートに奉った次の言葉は、よりカッチェンに相応しいかもしれません。

「一流のソリストとしてやっていけるだけの優れた資質(色気)がありながら、同時にブラームスを演奏する時の妨げとなる「欲」から距離がおける希有の存在でした。
言うまでもないことですが「色」と「色気」は似ていながら本質的には全く別物です。
「色」は常に「欲」とセットになっていますが、「色気」は「欲」から距離を置かないとにじみ出てこないものです。」

そして、カッチェンがすぐれた色気を持ったピアニストでありながら欲から距離を置けたのは、彼が持つすぐれた「知性」に負うところが大きかったように思います。
人は彼のことを「知的なブルドーザー」と称したのですが、このブラームスの初期ソナタからは、その言葉に相応しいカッチェンの姿が浮かび上がってきます。そして、その知性はもしかしたら(こんな音を書くとブラームスが怒ってきそうなのですが)、ブラームスが想像していたよりもはるかに高い領域へとそれらの作品を引き上げているような気がするのです。

ベートーベンのソナタを思わせるようなダイナミックで力強い響きから、子守歌を思わせるような叙情的な歌まで、その全てを完全に己の中に取り込んでもう一度再構築していくような知性がカッチェンにはあるのです。
まさに、ブラームス弾き!!

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



2822 Rating: 5.4/10 (108 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2016-09-29:Joshua





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-11-21]

ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)

[2024-11-19]

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)

[2024-11-17]

フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)

[2024-11-15]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-11-13]

ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)

[2024-11-11]

ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)

[2024-11-09]

ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)

[2024-11-07]

ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)

[2024-11-04]

ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)

[2024-11-01]

ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)