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レビン(Michael Rabin)|ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番 嬰ヘ短調
ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番 嬰ヘ短調
(Vn)マイケル・レビン エイドリアン・ボールト指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1957年1月3日~4日録音
Wieniawski:Violin Concerto No.1 in F sharp minoe, Op.14 [1.Allegro moderato]
Wieniawski:Violin Concerto No.1 in F sharp minoe, Op.14 [2.Preghiera: Larghetto]
Wieniawski:Violin Concerto No.1 in F sharp minoe, Op.14 [3.Rondo: Allegro giocoso]
生き残った巨匠風協奏曲

独奏楽器の聞かせどころがあちこちに用意されていて、さらに名人芸を披露できるパッセージもふんだんに用意された協奏曲作品のことを「巨匠風協奏曲」と呼びます。
クラシック音楽というのは、何よりも精神性が大切にされますから(^^;、そんな耳に心地よい響きと旋律に満たされただけの作品というのは一段も二段も低くみられるのが一般的です。ですから、この言葉がいつ頃生み出されたのかは分かりませんが、褒め言葉として使われることはあまりないようです。
しかしながら、クラシック音楽の歴史を調べてみると、音楽作品というのは自分が演奏するために作られるのが一般的でした。つまりは、演奏家が自らの名人芸を披露するために新しい音楽を次々と生み出して、その作品をコンサートで次々と披露して生活をしていたのです。そして、その様な音楽家の頂点に君臨したのが、ヴァイオリンではパガニーニであり、ピアノではリストだったのです。
クラシック音楽の歴史というのは、そうやって次々と生み出された膨大な作品の中から、時間という絶対者によって淘汰された一握りの作品によって構成されていることに注意しておく必要があります。
今という時代から振り返ってみれば、パガニーニやリストの名前はいささか色あせて見えてしまいます。しかし、いかに色あせて見えても、彼らの作品と名前は後世に残りました。そして、ここで紹介しているヴィエニャフスキの協奏曲も「巨匠風協奏曲」に分類される作品なのでしょうが、今もコンサートプログラムとして生き残ることができました。
もちろん、クラシック音楽の歴史の中で燦然と輝くベートーベンやブラームスやメンデルスゾーンやチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と較べれば見劣りはするでしょうが、それでも彼の作品は生き残ったのです。
おそらく、18世紀から19世紀にかけて、数多くの巨匠たちが自らのコンサートのために生み出した音楽の大部分は、その時々のコンサートでは多くの聴衆を熱狂させながら、やがてはそれが存在したことすら忘れ去られて永遠に歴史の闇のかに消えていったのです。
クラシック音楽の世界では、19世紀も終わろうかとする頃から、同時代性を失っていきます。コンサートは巨匠たちの名人芸を楽しむ場から、演奏するに値する、弱からみれば鑑賞するに値する「すぐれた音楽作品」だけが取り上げられる場に変わっていったのです。それは、作曲家と演奏家が、それぞれの機能に特化して分離していくことも意味しました。
そう言う時代の流れの中で、演奏家の名人芸を披露するための協奏曲作品は低く見られるようになっていったのです。
そう言う歴史を振り返ってみれば、それでもなお生き残ったヴィエニャフスキやヴィオッティ、ヴュータンなんかは、やはり偉かったのです。
ただし、ヴィエニャフスキはヴィオッティ(29曲)、ヴュータン(7曲)とは違って、ヴァイオリン協奏曲を2曲しか残していません。ヴィエニャフスキはヴァイオリニストですから、ヴァイオリンのための作品しか書いていませんから、それはいかにも少なすぎる気がします。
しかし、これもまた調べてみれば、マズルカやポロネーズを取り入れた独奏曲をたくさん残していますから(だから「バイオリンのショパン」と呼ばれることもあるそうな・・・。)、得意分野はそちらだったのかもしれません。
しかしながら、このヴィエニャフスキは大変な早熟で、わずか8歳でパリ音楽院に入学を許され、さらには11歳で同学院のバイオリン演奏1等賞を獲得、その後はプロのヴァイオリン奏者としてヨーロッパ諸国を演奏して回る生活をおくるようになるのです。
そして、第1番のヴァイオリン協奏曲は18歳の時に書き上げたもので、そこには己の名人芸を披露するありとあらゆるテクニックが詰め込まれています。
それに対して第2番の協奏曲は叙情的な作品で、とりわけ第2楽章の「ロマンス」は有名です。こちらは、ペテルスブルグの音楽院に招かれた27歳の時の作品です。
こうしてみると、このヴィエニャフスキという男は同時代の指だけ回るヴァイオリニストとは一線を画す才能を持っていたようです。ちなみに、彼の生誕100年を記念して若手ヴァイオリニストの登竜門とも言うべき「ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクール」が創設されました。
このコンクールは5年に1回開かれるのですが、今年はその5年目に当たるので第15回のコンクール(本選)が、ポーランドのポズナンにおいて10月8日から23日にかけて開催されるそうです。
ヴァイオリン協奏曲第1番 嬰ヘ短調
- アレグロ・モデラート Allegro moderato:重音奏法やハーモニクスを駆使した超絶技巧が必要な楽章
- 「祈り」ラルゲット Preghiera: Larghetto:短い抒情的な間奏曲
- 「ロンド」アレグロ・ジョコーゾ Rondo: Allegro giocoso:高い技術が必要だが第1楽章と較べるといささか物足りない
ヴァイオリン協奏曲第2番 ニ短調
- アレグロ・モデラート Allegro moderato
- 「ロマンス」アンダンテ・ノン・トロッポ Romance: Andante non troppo
- アレグロ・コン・フォーコ?アレグロ・モデラート(ジプシー風に) Allegro con fuoco - Allegro moderato (a la Zingara)
うーん、この作品に関しては「クラシック音楽の歴史の中で燦然と輝くベートーベンやブラームスやメンデルスゾーンやチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と較べれば見劣りはするでしょうが」という言葉は撤回した方がいいでしょう。(^^;ヴァイオリンが持つ官能性をこれほど見事に引き出した作品は他には思い当たりませんね。
与えられた答案用紙
レビンの録音は今回初めて取り上げたと思っていたのですが、調べてみると既にチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を取り上げていました。(ガリエラ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1956年6月11日&12日録音)
そして、そこで、実に厳しい評価を与えていたことに驚きました。
「このチャイコフスキーの演奏は決して悪い演奏ではありません。
驚くほどに直線的な演奏ではありますが、フレージングはどこをとっても明確であり確信を持って弾ききっています。ひたすら勢いよくパンチが繰り出されてくるような演奏で、多くの人が神童上がりのバリバリの若手演奏家に対して望んでいるであろう・・・ようなスタイルの音楽に仕上がっています。
その意味では、こういう演奏は20歳の若者にしか演奏できない音楽であり、それ故の魅力があふれていることは間違いありません。
しかし、そこには微妙な陰影のグラデーションはありません。隅から隅までくっきりと光が当てられているような演奏であり、大人の音楽として聞くならば、あまりにも彫りが浅いことは容易に気づきます。もちろん、20歳の若者に、多くの聞き手はそんなことは要求していませんから、きっと多くの聞き手はこの録音にブラボーを送ったことでしょう。しかし、彼が25歳を超えても、これと同じ演奏をしていれば、誰もブラボーは叫ばないでしょう。つまりは、演奏家というのは、ここを一つの通過点として次のステップへと移っていかなければいけないのです。
ところが、今回、彼の演奏をまとめて聞いてみて気づいたことは、レビンというヴァイオリニストは結局はこの地点から一歩も前に出ることなく終わってしまったのです。そう、全く驚くほどに、彼はこの地点から前に進むことができなかったのです。
レビンはブラームスやベートーベンのコンチェルトを希望しましたが、キャピトルは最後まで認めませんでした。シベリウスのコンチェルトも本腰を入れることなく立ち消えになってしまいました。
レビンはもがいていたのです。しかし、現実は、1960年に、キャピトルは彼との契約を解除してしまったのです。
俳優の世界でも「天才子役」は大成しないと言われます。音楽の世界でも「神童」が大成するのは容易なことではないようです。 」
今回、彼の録音をもう一度聞き直してみて、基本的にはこれにつけくわえるものはないようです。
ただ、彼の録音を次々と聞いていくうちに思い浮かんできたのは、与えられた答案用紙に向かってひたすら正しい答えを書き込もうとあがいているイメージです。
可哀想なレビン!!
子役の時は、大人が期待する答えを見事に返していればみんなが褒めちぎってくれたのに、大人になればそんな姿に誰も拍手を送ってくれないのです。
にもかかわらず、彼は必死で与えられた答案用紙に向かって正解を探し続けたのです。
そう言えば、こんな感じのヴァイオリニストが他にもいたなと思い浮かんだのが、クリスチャン・フェラス。
ハイフェッツみたいに、何があっても「俺こそが正解だ」と開き直れる強さはどこから来るのでしょうか。
この演奏を評価してください。
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