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シベリウス:シベリウス:交響曲第4番 イ短調 op.63

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1965年5月12日録音

Sibelius: Symphony No.4 in A minor, Op.63[1.Tempo molto moderato, quasi adagio]

Sibelius: Symphony No.4 in A minor, Op.63[2.Allegro molto vivace]

Sibelius: Symphony No.4 in A minor, Op.63[3.Il tempo largo]

Sibelius: Symphony No.4 in A minor, Op.63[4.Allegro]


本当に理解されているのでしょうか?

以前この作品についてこんな事を書いたことがあります。

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この作品は、シベリウス自身の指揮で1911年4月3日にヘルシンキで初演が行われています。
 当時シベリウスの名声は固まっていましたから、聴衆の多くは期待をもって集まったと思われます。 しかし、実際に演奏された4番はとてつもなく晦渋な音楽であり、評論家も含めてどんなリアクションをとっていいものやら大いにとまどったそうです。
この初演時のとまどいこそが正直な反応なんだと思います。
ところが、シベリウス研究の権威であるセシル・グレイが、「最初から最後まで、余分な音符は一つとしてない」とのたまい、第7番と並ぶ最高傑作という御宣託もあって評価が固まったという経過があります。
へそ曲がりな私などは、「それなら、4番以外の交響曲のどの部分が余分な音符なのか教えてくれよ」と言いたくなるのですが、権威好きの日本人はそれ以後4番こそがシベリウスの最高傑作と言うことになりました。
でも、シベリウスが大好きな人でも、本音は4番が嫌いな人が多いですね。証拠になるかどうかは分かりませんが、コンサートのプログラムで一番多く取り上げられるのは2番と1番でしょう。おそらく4番は一番少ないはずです。
でも、セシル・グレイ大先生はこう言っているんですね。「この作品は官能的に訴えるものが全然ないから、通俗曲にはならないであろうが、(・・・だから、コンサートではめったに取り上げられないんですね・・・)少数の人々にとっては、シベリウスの最も偉大な作品となるであろう。(・・・くすぐる言葉ですね。馬鹿には分からないと言うことですが、下手すりゃ「裸の王様」?・・・)
彼はおそらくこれ以上のものを書かなかった。(・・・そんなことは本人が判断することだろう、それともあんたはシベリウスより偉いのか!・・・)」・・・ちなみに、(・・・  ・・・)内はユング君のつっこみ(^^;
まあここまで言われたら、へなちょこ評論家は恐れ入ってしまうでしょうね。
私について言えば、どの演奏を聞いても好きになったことは一度もありませんでした。ちなみに、シベリウスは大好きです。しかし、4番だけはどうしても駄目でした。
そんな私が初めて面白く4番を聞かせてくれたのは、ケーゲルの演奏です。しかし、聞き終わってから、これはシベリウスの音楽ではなくて、ケーゲルの音楽だなと気づかされました。ケーゲルという人は時に、強引に音楽をねじ曲げて自分の方に引っ張ってくるという力技を発揮しますが、このシベ4もその典型みたいな演奏でした。
そして、そういう演奏で初めて面白く聞けたと言うことに、私とこの曲の相性がよく現れています。

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昔は世間の目など気にせずずいぶん好き勝手に書いていたものだと我ながら驚きます。
しかし、一点だけ思いが変わっているのはケーゲルの演奏に対する評価です。もしかしたら、この作品を本当に理解し共感していたのはケーゲルだけだったのかもしれません。
この作品ほど幸福感から縁遠い音楽はそんなに存在しないでしょう。特に、この作品が生み出された時代?二つの世界大戦も核兵器の脅威も経験していない時代だったことを考えれば皆無だったかもしれません。そして、その深い絶望感がその様な社会的背景をもったものとしてではなく、全くの個人的な経験から発したものとして考えるならば、今も希有な存在であることは事実です。
おそらく、ケーゲルのシベ7というのは日常的に聞くような音楽でないことは確かです。一切の幸福感から切り離された、深い絶望と虚無を個人的体験として共有したのはこの二人だけだったのかもしれません。ただし、この深い虚無感をシベリウスは乗り越えて再び此岸に帰ってきたのですが、ケーゲルは彼岸へと旅だっていきました。その事が、彼の演奏をより悲劇的なものにしていることが、「強引に音楽をねじ曲げて自分の方に引っ張ってくるという力技」と感じた理由かもしれません。


カラヤン的に再構築されたシベリウス

カラヤンのシベリウスと言えば、この4番と5番のセットの後に録音された6番と7番のセットが名盤として名高いようです。
聞いてみればすぐに分かることなのですが、響きの美しさにこだわり続けたカラヤンの美学とシベリウスの特質がものの見事にマッチした素晴らしい演奏と録音になっています。カラヤンは50年代のフィルハーモニー管時代から晩年の80代までに切れ目無くシベリウスの作品を取り上げているのですが、この60年代の一連の録音がもっとも上手くいっているように思います。

今さら言うまでもないことですが、4番と5番は対照的な雰囲気を持っています。
生死の境をさまよった後に作曲された4番は、シベリウス作品の中ではもっとも晦渋な佇まいをもっているのに対して、5番の方はそれとは対照的な祝典的雰囲気に溢れた音楽になっています。専門家筋の間では、この4番の晦渋さこそがシベリウスの最高傑作と言われるのですが、実際に聞いてみて、素直に心の底から「いい音楽だなぁ!」と思える人は多くはないでしょう。

それは私もそうであって、今まで聞いた中で唯一感心したのはヘルベルト・ケーゲル&ライプチッヒ放送交響楽団による69年盤くらいしかありませんでした。しかし、あれがシベリウスの4番の理想的な演奏なのかと問われれば、それはもう即座に「No!」と答えるでしょう。
つまりは、あれを聴いて感心したのはシベリウスではなくてケーゲルだったからです。
もう少し分かり安く言いかえると、あそこではケーゲルはシベリウスの4番を素材として、結局はケーゲル自身の音楽を再構築しちゃっていて、聞き手である私はその再構築したケーゲルの音楽に感心させられてしまっていたのです。

ですから、あれをシベリスの4番の理想的な演奏などとは全く思えませんでしたが、心底感心させられたことは間違いありません。

そして、もしかしたら、このカラヤン盤もまた方向性はケーゲルとは真逆なまでに異なっていますが、音楽の作り方は非常に通っているのかもしれません。
ここでのカラヤンもまた、シベリウスの4番を素材として、そこから己の感覚で美しいと思える響きを上手く再構築して連ねることで、カラヤン的な美しさに溢れた音楽に仕上げています。結果として、この作品につきまとう晦渋さは姿を消して、実に聞きやすく美しい音楽にしあがっています。
ですから、この演奏を取り上げて響きの美しさにこだわりすぎてノッペリしすぎなどというのは、カラヤンの意図を無視して自分の好みで好き嫌いを言っているだけのことに過ぎないのです。個人的には、こういうアプローチもあっていいのではないかとは思います。
なんと言っても、この晦渋なことで有名な交響曲が美しく、そして楽しく聞けるのですから。

なお、5番の方は、そこまで無理をしなくても美しい部分が満載の交響曲ですから、祝典的雰囲気がカラヤン的な豪華さと相まって楽しい演奏と録音になっています。

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