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ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」

フリッチャイ指揮 ベルリンフィル 1953年9月8日~14日録音

Dvorak:Symphony No 9 in E Minor, Op. 95, "From the New World" [1.Adagio - Allegro molto]

Dvorak:Symphony No 9 in E Minor, Op. 95, "From the New World" [2.Largo]

Dvorak:Symphony No 9 in E Minor, Op. 95, "From the New World" [3.Molto vivace]

Dvorak:Symphony No 9 in E Minor, Op. 95, "From the New World" [4.Allegro con fuoco]




望郷の歌

ドヴォルザークが、ニューヨーク国民音楽院院長としてアメリカ滞在中に作曲した作品で、「新世界より」の副題がドヴォルザーク自身によって添えられています。

この作品はその副題が示すように、新世界、つまりアメリカから彼のふるさとであるボヘミアにあてて書かれた「望郷の歌」です。

この作品についてドヴォルザークは次のように語っています。
「もしアメリカを訪ねなかったとしたら、こうした作品は書けなかっただろう。」
「この曲はボヘミヤの郷愁を歌った音楽であると同時にアメリカの息吹に触れることによってのみ生まれた作品である」

その言葉に通りに、ボヘミヤ国民楽派としてのドヴォルザークとアメリカ的な語法が結びついて一体化したところにこの作品の一番の魅力があるといえます。
さらに、過去の2作がかなりロマン派的な傾向を強めていたのに対して、この9番は古典的できっちりとしたたたずまいを見せていることも、分かりやすさと親しみやすさを増しているようです。

初演は1883年、ドヴォルザークのアメリカでの第一作として広範な注目を集め、アントン・ザイドル指揮のニューヨーク・フィルの演奏で空前の大成功を収めました。

悲劇的なものへの親近感


楽しい音楽というものを聞いたことがない・・・と、言ったのはシューベルトだったでしょうか。確かに、すぐれた音楽というものはその中になにがしかの悲劇性を内包しているものです。よく言われるように、それが澄み切った青空のようなモーツァルトの長調の作品であっても、その青さの中に言いしれぬ悲劇性が顔を覗かせていたりするものです。

そして、病を得てからのフリッチャイの音楽を聴いていると、そう言う悲劇的なものへの傾斜が大きくなっているような気がします。
そして、作品によっては、そう言う悲劇的なものに肩入れしすぎるがゆえに、かえって足下をすくわれているような場面もあるかのように見えます。その典型が59年に録音されたモーツァルトのト短調シンフォニーでしょう。
これはもう語り尽くされるほどに語り尽くされていることですが、モーツァルトは壊れやすいのです。

ただし、その同じ録音を聞いて、それを形にとらわれずに作品が内包している悲劇性に肉薄したという人がいたとしても、私は否定しようとは思いません。

ただ、こうやって彼の晩年の録音を聞いていると、その悲劇性におぼれるように対峙してもそれほど作品の形が崩れないものと、驚くほどにそう言うスタンスを拒否するものがあると言うことです。拒否するものの典型が言うまでもなくモーツァルトです。

逆に、形が崩れない典型はチャイコフスキーの音楽でしょうか。
とりわけ、59年に録音された「悲愴」は、この作品の最も優れたアプローチの一つでしょう。そして、ドイツ・グラモフォンがこのすぐれた録音をお蔵入りさせてしまったことには驚きを禁じ得ません。

同じように、リストの前奏曲やスメタナのモルダウのようなロマン派の小品を聞いていると、悲劇的なものへの近しさというスタンスが実に上手くはまっているように思えます。そう言えば、ウェーバーの舞踏への招待なんかも実にいい感じです。
ところが、シュトラウスのワルツのような音楽になると悲劇性がいたって希薄なので、今度はそこへ自分の気分を反映させようとして逆におかしな事になっているような場面もあったりします。そう言う録音を聞いていると、どうしてこんなものを取り上げたんだろうと訝しく思ってしまいます。(まあ、レーベル側からの要望があったのでしょうね。)

それから、意外だなと自分でも思ったのがベートーベンです。61年に録音された運命などは、ズブズブに悲劇性に絡め取られているように聞こえるのですが、ベートーベンにはそれを引き受ける強さがあります。
そして、バルトークのような作品になると、その悲劇性が数学的な精緻さで構築されていることは手に取るように分かるので、そこで悲劇性に足下をすくわれるようなことは起こるはずもないと言うことです。それどころか、あの60年にアンダを迎えて録音されたピアノ協奏曲の録音を聞いていると、バルトークの悲劇性とフリッチャイの悲劇性が同化して、まるで孔子の従心「心の欲する所に従いて矩を踰えず」のような境地に達しているかのようです。

しかし、そうやって彼の晩年(と言っても40代の若さだったわけですが)の録音を聞いていると、その素晴らしさは認めながらも、失ったものの大きさも感じずにはおれません。
あの、50年代の初頭に聞くことが出来た、弾むようなリズム感に裏打ちされた、精緻でありながらも強い推進力に満ちた音楽は姿を消してしまいました。それは、この隔てられた二つの時期において録音された同一の作品を聞いてみると、そのお思いはよりいっそう強くなります。

既に紹介しているものとしては、モーツァルトの二つの交響曲(29番・41番)があるのですが、41番のジュピターなどは古い録音の方に好ましさを感じている自分がいたりします。
それ以外にも、チャイコフスキーの「悲愴(53年・59年)」やドヴォルザークの「新世界より(53年・59年)」などもあります。
変わることによって得たものが大きかった事は否定しませんが、同じように失ったものも大きかったことも否定しようがありません。

ただ、こうやってフリッチャイについてあれこれ述べていながら、実は大きな欠落があることも自覚しています。
それはただの一つも彼のオペラ作編の録音について触れていないことです。
これでは、少なく見積もってもフリッチャイという指揮者の半分しか見ていないと言うことになります。ですから、それなりにペラ作品の録音を概観してからだと、また違ったフリッチャイの姿が見えてくるのかもしれません。
ですから、彼についてこれ以上のことをあれこれ言おうと思えば、それなりに彼のオペラを聞いてからにした方がいいのかもしれません。

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