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チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23


(P)リヒテル カラヤン指揮 ウィーン交響楽団 1962年9月24日~26日録音録音


ピアノ協奏曲の代名詞

ピアノ協奏曲の代名詞とも言える作品です。
おそらく、クラシック音楽などには全く興味のない人でもこの冒頭のメロディは知っているでしょう。普通の人が「ピアノ協奏曲」と聞いてイメージするのは、おそらくはこのチャイコフスキーかグリーグ、そしてベートーベンの皇帝あたりでしょうか。

それほどの有名曲でありながら、その生い立ちはよく知られているように不幸なものでした。

1874年、チャイコフスキーが自信を持って書き上げたこの作品をモスクワ音楽院初代校長であり、偉大なピアニストでもあったニコライ・ルービンシュタインに捧げようとしました。
ところがルービンシュタインは、「まったく無価値で、訂正不可能なほど拙劣な作品」と評価されてしまいます。深く尊敬していた先輩からの言葉だっただけに、この出来事はチャイコフスキーの心を深く傷つけました。

ヴァイオリン協奏曲と言い、このピアノ協奏曲と言い、実に不幸な作品です。

しかし、彼はこの作品をドイツの名指揮者ハンス・フォン・ビューローに捧げることを決心します。ビューローもこの曲を高く評価し、1875年10月にボストンで初演を行い大成功をおさめます。
この大成功の模様は電報ですぐさまチャイコフキーに伝えられ、それをきっかけとしてロシアでも急速に普及していきました。

第1楽章冒頭の長大な序奏部分が有名ですが、ロシア的叙情に溢れた第2楽章、激しい力感に溢れたロンド形式の第3楽章と聴き所満載の作品です。

ついにこの録音もパブリックドメインの仲間入りをしたのか!!


今さら何も付けくわえる必要のない歴史的名演です。そして、パブリックドメインの仲間入りをしたことに感慨を覚えます。

ただ、「何もつけくわえることはない」と言っておきながら気が引けるのですが、ひと言だけ言わせてください。

それは、とある高名な評論家がこの録音を評して、「日頃は悠然と構えていることが多いカラヤンの熱くなり具合が注目されよう」と書いていた事への、ちょっとした異論です。
アンチ・カラヤン時代の私なら、この録音を聞いて、そしてこの評を読めば間違いなく納得したはずです。

リヒテルのピアノは繊細さと雄大さを兼ね備えた素晴らしいものです。
そして、カラヤンもそう言うリヒテルのピアノに主導権を奪われてなるかとばかりに豪快にオケをドライブしていきます。
当然のことながら、リヒテルの方もそうやって煽られれば負けてはいられませんから、その評論家の言うように「イニシアティブの取り合い、結論の奪い合いというところが実にスリリング」であることは間違いありません。
確かに、ここには私たちの頭に刷り込まれた「帝王カラヤン」の悠然と構えた姿はどこにもありません。

しかしなのです・・・。
50年代後半から60年代初頭にかけてのカラヤンの録音を聞き込みはじめた「脱アンチ・カラヤン」の私には、「日頃は悠然と構えていることが多いカラヤンの熱くなり具合が注目されよう」という表現には違和感を覚えるのです。何故ならば、この時代のカラヤンはどの録音においても「悠然と構えている」なんて事はないからです。
それは、ほぼ同時期に一気呵成に録音されたベートーベンの交響曲全集あたりを聞いてみればすぐに分かるはずです。

この時代のカラヤンは途方もないエネルギーをまき散らす男であり、常に自分の持てる力をフルに発揮して演奏にも録音にも臨んでいたようなのです。余裕かまして悠然としているような録音なんて、この時代のカラヤンからは有り得ないことです。
つまりは、この時代のカラヤンは常に「熱い」のです。

もちろん、こんな言葉尻をとらえた「異論」なんてのは嫌がらせとほとんど同義語みたいなものです。ですから、こういう物言いはあまり気が進まないのですが、それでも、こういう「刷り込み」から来るだろうちょっとした表現の積み重ねが、結果としてカラヤンの実像を歪めることにつながっていることも事実なので、まあひと言付けくわえた次第です。

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