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ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第2集 作品72

ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 1955年4月8日~5月27録音



Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第1番 モルト・ヴィヴァーチェ ロ長調

Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第2番 アレグレット・グラツィオーソ ホ短調

Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第3番 アレグロ ヘ長調

Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第4番 アレグレット・グラツィオーソ 変ニ長調

Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第5番 ポーコ・アダージョ 変ロ短調

Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第6番 モデラート・クアジ・ミヌエット 変ロ長調

Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第7番 アレグロ・ヴィヴァーチェ ハ長調

Dvorak:スラブ舞曲 第2集 第8番 グラツィオーソ・エ・レント、マ・ノン・トロッポ、クアジ・テンポ・ディ・ヴァルセ 変イ長調


メランコリックで美しい旋律を持った作品が多い

スラブ舞曲の予想以上の大成功に気をよくした出版業者のジムロックは早速に第2集の作曲をドヴォルザークに依頼します。しかし、第1集の大成功で名声を確立したドヴォルザークは、彼が本来作曲したかったような作品の創作へと向かっていました。速筆のドヴォルザークにしては珍しく時間をかけてじっくりと取り組んだピアノ三重奏曲ヘ短調やヴァイオリン協奏曲、交響曲の6番、7番などが次々と生み出されるのですが、スラブ舞曲の第2集に関しては固辞していました。

しかし、その様な「大作」だけでは大家族を養っていくことは困難だったようで、ある程度の稼ぎを得るためには「売れる」作品にも手を染めなければいけませんでした。そして、その様な仕事はドヴォルザークの心をブルーにし、鬱屈した思いが募っていきました。そんな、ドヴォルザークに妻のアンナは散歩に出かけることをよくすすめたそうです。
すると、ドヴォルザークは葉巻を一本加えては汽車を見に行きました。ドヴォルザークにとって音楽の次に好きだったのが汽車だったのですが、その大好きな汽車を眺めているうちに鬱屈した思いも消え去って、再び元気になって帰宅したというエピソードが残されています。

そんなドヴォルザークに対してジムロックはついに第1集の10倍という破格のギャラで第2集の作曲をドヴォルザークに懇願します。はたして、この金額が彼の心を動かされたのかどうかは定かではありませんが、今まで断り続けてきたこの仕事を、1886年になってドヴォルザークは突然に引き受けます。そして、わずか一ヶ月あまりで4手のピアノ楽譜を完成させてしまいます。
もちろん、だからといって、この第2集はお金目当てのやっつけ仕事だったというわけではありません。
ドヴォルザークは第1集において、この形式においてやれるべき事は全てやったという自負がありました。それだけに、これに続く第2集を依頼されても、それほど簡単に第1集を上回る仕事ができるとは思えなかったのもこの仕事を長く固持してきた理由でした。ですから、彼が第2集の仕事を引き受けたときには、それなりの成算があってのことだったのでしょう。

この第2集では、チェコの舞曲は少ない数にとどめ、他のスラブ地域から様々な形式の舞曲が採用されています。また、メランコリックで美しい旋律を持った作品が多いのもこの第2集の特徴です。明らかに、第2集の方が成功をおさめた巨匠のゆとりのようなものが感じ取れます。そう言う意味では、第1集よりはこちらの方が好きだという人も多いのではないでしょうか。

なお、この第2集もピアノ用に続いてオーケストラ版も出版されて、今ではそちらの方が広く流布しています。

第1番:モルト・ヴィヴァーチェ ロ長調 4分の2拍子
第2番:アレグレット・グラッティオーソ ホ短調 8分の3拍子
第3番:アレグロ ヘ長調 4分の2拍子
第4番:アレグレット・グラッティオーソ 変ニ長調 8分の3拍子
第5番:ポーコ・アダージョ 変ロ短調 8分の4拍子
第6番:モデラート・クアジ・ミヌエット 変ロ長調 4分の3拍子
第7番:アレグロ・ヴィヴァーチェ ハ長調 4分の2拍子
第8番:グラッティオーソ・エ・レント・マ・ノン・トロッポ クアジ・テンポ・ディ・ヴァルセ 変イ長調 4分の3拍子


ミッシング・リンク

いったいどこで、はたまた何がきっかけでロジンスキーに「爆演型指揮者」というラベルがついてしまったのでしょうか?

先に紹介したドヴォルザークの「新世界より」などは、直線的で攻撃的と言えるような部分があるにせよ、演奏の基本は「精緻」さへの執念であって「爆演」などとはかけ離れた音楽でした。彼の録音(特に、50年代のウェストミンスター録音)をまとめて聴いてみても「爆演」と言えるような録音は存在しませんでした。
もちろん、探せばどこかに「爆演」と言われるような『粗雑ではあっても勢いだけで押し切る』ようなライブ録音があるのかもしれません。しかし、彼自身が承認した正規録音を聞く限り、ロジンスキーの本質は「精緻」に尽きると思います。

世の中には「勘違い」というものは存在するのですが、この「勘違い」は酷すぎます。
ロジンスキーという男は「精緻」さへの執念ゆえに周囲から嫌われ、疎まれて、ついにはアメリカから追放された男なのです。ひたすら精緻に音楽を再現することに全力を尽くした男が、何かの拍子でそれとは真逆の「爆演型指揮者」というレッテルを貼られたことを知れば、あの世で苦笑を禁じ得ないでしょう。そして、そんな「爆演で良しとできたならば俺の人生、あんなに苦労しなかったよ・・・」とぼやいていることでしょう。
もう一度繰り返しますが、ロジンスキーの本質は「爆演」ではなく「精緻さへの執念」です。

ですから、まとめて聴いた中でひとしお気に入ったのが「ペールギュント組曲」です。

何より素晴らしいのがオケの響きです。
低声部をしっかりと響かせた上に全ての楽器がキチンと役割を果たし、さらにはそれらの楽器のバランスが絶妙にコントロールされています。このゴリゴリとした手応え充分のオケの響きは実に魅力的ですし、その響きでもって描かれるペールギュントの世界は端正そのものです。
そして、驚くのは、そう言う響きのおいしさを見事にすくい上げているウェストミンスター録音の素晴らしさです。

ウェストミンスターの録音というとあまり音が良くないというのが通り相場でした。
しかし、このレーベルの録音は決してクオリティが低かったわけではありません。そうではなくて、60年代に経営が破綻した後に身売りが繰り返され、そのドタバタの中でマスターテープが行方不明になった事が大きな原因でした。マスターテープが行方不明になってからは劣悪なコピーテープからレコードが制作され、さらには「廉価盤」と言うことで材質も粗悪なものが多かったようで、結果として「音の悪いウェストミンスター録音」が出回ることになってしまったわけです。
その後、このレーベルの業績を深くリスペクトしている日本人の手によってゴミ同然に積み上げられている段ボール箱の中からマスターテープが発掘された話は有名です。そして、その発掘されたマスターテープから制作されたCDは、それまでの粗悪品とは別物と言ってもいいほどの音質によみがえったことも、これまた有名な話です。

それでも、ウェストミンスターと言えば実内楽録音がメインですから、ロジンスキーやシェルヘンのような人の業績にまで音質改善の恩恵が及ぶには時間がかかりましたし、未だに粗悪な音質のCDもたくさん出回っているようです。
ただし、MP3に変換した音源で、そう言うオケのおいしい響きがどこまで伝わるのかはいささか不安はあります。
もしも、そのあたりに興味があるようでしたら、できるだけ早くFLACファイルもアップしたいと思いますので、それなりのオーディオシステムで再生してみてください。響きの素晴らしさだけでなく、モノラルとは思えないほどにクリアに楽器が分離していますので、ロジンスキーがどれほどの執念でもってオケをコントロールしているかが手に取るように分かるはずです。

ただし、あれこれ聞いてみて、ロシアや東欧系という周辺部の(こんな言い方は独墺至上主義みたいで嫌なのですが^^;)音楽には非常に高い適応力を示しても、ベートーベンやワーグナーみたいな音楽になるとガタイが小さくなって、いささか不満を感じる事は正直に述べておきます。非常に精緻ではあるのですが、それが結果として音楽をこぢんまりとさせてしまっています。

しかし、ドヴォルザークのスラブ舞曲やコダーイの舞曲、ハーリ・ヤーノシュ組曲などは実に見事なものです。また、独墺系の音楽でもシュトラウスのワルツなんかだとガタイの小ささはあまり気にならないので、セルやライナーを思わせるような直線的で鮮烈な音楽はなかなかに見事なものです。
そう言う意味では、ロジンスキーという指揮者はトスカニーニからライナー、セルへとつながっていく系譜の中で、その間に位置する「ミッシング・リンク」みたいな存在だったのかもしれません。
そう考えると、指揮芸術の歴史的系譜の中で、一度くらいは目配せはしておいた方がいい存在なのかもしれません。

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