クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|リパッティ(Dinu Lipatti)|シューマン:ピアノ協奏曲

シューマン:ピアノ協奏曲

P:ディヌ・リパッティ カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1948年4月9&10日 録音



Schumann:ピアノ協奏曲「第1楽章」

Schumann:ピアノ協奏曲「第2,3楽章」


私はヴィルトゥオーソのための協奏曲は書けない。

 クララに書き送った手紙の中にこのような一節があるそうです。そして「何か別のものを変えなければならない・・・」と続くそうです。そういう試行錯誤の中で書かれたのが「ピアノと管弦楽のための幻想曲」でした。

 そして、その幻想曲をもとに、さらに新しく二つの楽章が追加されて完成されたのがこの「ピアノ協奏曲 イ短調」です。

 協奏曲というのは一貫してソリストの名人芸を披露するためのものでした。
 そういう浅薄なあり方にモーツァルトやベートーベンも抵抗をしてすばらしい作品を残してくれましたが、そういう大きな流れは変わることはありませんでした。(というか、21世紀の今だって基本的にはあまり変わっていないようにも思えます。)

 そういうわけで、この作品は意図的ともいえるほどに「名人芸」を回避しているように見えます。いわゆる巨匠の名人芸を発揮できるような場面はほとんどなく、カデンツァの部分もシューマンがしっかりと「作曲」してしまっています。
 しかし、どこかで聞いたことがあるのですが、演奏家にとってはこういう作品の方が難しいそうです。
 単なるテクニックではないプラスアルファが求められるからであり(そのプラスアルファとは言うまでもなく、この作品の全編に漂う「幻想性」です。)、それはどれほど指先が回転しても解決できない性質のものだからです。

 また、ショパンのように、協奏曲といっても基本的にはピアノが主導の音楽とは異なって、ここではピアノとオケが緊密に結びついて独特の響きを作り出しています。この新しい響きがそういう幻想性を醸し出す下支えになっていますから、オケとのからみも難しい課題となってきます。
 どちらにしても、テクニック優先で「俺が俺が!」と弾きまくったのではぶち壊しになってしまうことは確かです。


リパッティをこえる演奏が聴きたいものだと思うのですが・・・

 33歳という若さで白血病のためにこの世を去った夭折の天才、それがリパッティです。本格的にピアニストとしてデビューしたのは1939年、22歳の時ですから、演奏活動はわずか10年ほどしかなかったわけです。
 その短い期間でさえ、ナチスによるルーマニア侵攻でスイスへの亡命を余儀なくされるなど波乱に満ちたものでした。

 1948年4月に録音されたこの演奏は若すぎる死の2年前のものですが、何という瑞々しい叙情性にあふれた音楽でしょう。
 
 ロマン的な演奏といっても、ここで聞くことのできるロマン性は香水の香りが漂う夜会の雰囲気とは正反対のものです。
 そういう爛熟したものとは正反対のもの、そう、ようやく空が白みはじめた頃の雑木林、その下には芽生えはじめたばかりの若草がしっとりと朝露に濡れているような、そういうみずみずしさにあふれたロマン性です。(何とも我ながら陳腐な表現だな。でも、こういう若々しい叙情性というのは若いときのOzawaにも感じたものです。今は・・・、という話はやめておきましょう)
 カラヤンのバックアップもそういうリパッティのピアノを受けて若々しい叙情性にあふれたものとなっています。(ユング君がカラヤンをほめるなんてめずらしい!!)出過ぎることもなく、かといって引きすぎることもなく、歌うべきところはしっかりと歌っています。コンチェルトの伴奏指揮者としては実に高い能力を持っていたことだけは認めざるを得ないでしょうね。

 シューマンのコンチェルトを演奏するときはこのような叙情性にあふれた感覚は不可欠だと思うのですが、昨今の演奏を聴いてみるとなぜかこういうリパッティのようなスタイルは皆無です。音楽としての純粋な響きを大切にしている!などとのエキスキューズがつくわけですが、なぜかリパッティと同じ土俵で勝負をすることをさけているように思えてなりません。
 いつか、この演奏をこえるような叙情性あふれる演奏を聴きたいと思うのですが、それは贅沢にすぎる望みなのでしょうか。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



185 Rating: 7.0/10 (422 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2009-07-25:メフィスト


2010-11-23:NAKO


2011-04-14:西尾


2011-06-14:Blue Chopin


2014-08-31:ヨシ様





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-08-16]

ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, 作品73(Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73)
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1946年10月14日録音(Artur Rodzinski:New York Philharmonic Recorded on October 14, 1946)

[2025-08-14]

ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲&第3幕への前奏曲~従弟たちの踊りと親方達の入場(Wagner:Die Meistersinger Von Nurnberg Prelude&Prelude To Act3,Dance Of The Apprentices)
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)

[2025-08-11]

エルガー:行進曲「威風堂々」第4番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 4 In G Major])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年8月28日~29日録音(Sir John Barbirolli:Philharmonia Orchestra Recorded on August 28-29, 1962)

[2025-08-09]

バッハ:前奏曲とフーガ ホ短調 BWV.533(Bach:Prelude and Fugue in E minor, BWV 533)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-08-07]

ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93(Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音(Joseph Keilberth:Hamburg Philharmonic Orchestra Recorded on 1958)

[2025-08-05]

ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op. 115(Brahms:Clarinet Quintet in B Minor, Op.115)
(Clarinet)カール・ライスター:アマデウス四重奏団 1967年3月録音(Karl Leister:Amadeus Quartet Recorded on March, 1967)

[2025-08-03]

コダーイ: マロシュセーク舞曲(Zoltan Kodaly:Dances of Marosszek)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1962年11月15日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on November 15, 1962)

[2025-08-01]

ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」序曲(Johann Strauss:Die Fledermaus Overture)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)

[2025-07-30]

エルガー:行進曲「威風堂々」第3番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 3 in C Minor])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)

[2025-07-28]

バッハ:前奏曲とフーガ ハ長調 BWV.545(Bach:Prelude and Fugue in C major, BWV 545)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)