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チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」


カラヤン指揮 ウィーンフィル 1960年1月7~9日録音


音楽によって一編の戯曲を堪能できる

この作品はチャイコフスキーの初期を代表する管弦楽曲と言ってもいいでしょう。と言うか、彼の初期作品の中で、今も演奏会で頻繁に取り上げられるのはこの作品だけかもしれません。
おそらく、その理由は「分かりやすさ」でしょう。
「ロミオとジュリエット」は誰もが知っている悲劇の物語だけです。その、誰もが知っている物語をものの見事に音楽で表現しきったのがこの作品です。

冒頭の教会音楽を思わせるようなメロディは修道僧ロレンスを表現しています。しかし、その静かな音楽はシンバルの強打とシンコペーションを活用した音楽によって、場面は一転して皇帝派のモンタギュー家と教皇派のキャピュレット家との血で血を洗う抗争が表現されます。音楽がもつれ合い、そのもつれが次々と積み重なっていくことによって両家の深刻な対立が見事に描き出されていきます。
このあたりの手際は実に見事です。

そして、このもつれ合いが一段落すると、それに変わってロミオとジュリエットの愛の調べが流れてきます。

この二つが作品の基本でして、やがて展開部にはいるとこの二つの主題が交差していきます。そして、ヴァイオリンが壮麗に愛の調べを奏するのですが、それも一瞬にして葛藤のテーマが断ち切ってしまいそのまま終結部へとむかってなだれ込んでいくような風情となります。
しかし、その葛藤もティンパニーの一撃で沈黙させられ、人々は取り返しのつかない悲劇が起こったことを知らされます。

音楽は今までの葛藤の騒がしさから一転して静けさの中に沈み込み、ロミオとジュリエットの愛のテーマが切れ切れに聞こえてきます。そして、やがてその愛のテーマは木管群によって美しく奏され、ハープのアルペッジョによって二人の魂は天上へと登っていくことを暗示して静かに曲は閉じられます。

要は、葛藤のテーマと愛のテーマさえつかんでしまえば、そして「ロミオとジュリエット」のあらすじを知っていれば、まさに音楽によって一編の戯曲を堪能できるのです。
実にもって、これぞ「標題音楽」とも言うべき分かりやすい作品です。

颯爽としつつも分かりやすさと楽しさにあふれた演奏


チャイコフスキーの作品の中でもこれは初期作品に属するものです。ですから、人生だとか運命なんぞという「重い」ものは背負い込まないで、言ってみれば劇伴音楽みたいな分かりやすさを前面に押し出した作品になっています。
そして、こういう作品になるとカラヤンの手際の良さは際だっています。
もちろん、誤解ないように言い添えておきますが、カラヤンという指揮者には「人生」や「運命」という重いものを扱う能力はないと言っているのではありません。そうではなくて、いわゆる大物指揮者を自認している連中の中には、こういう「軽い」作品を真面目に取り上げないし、さらに言えば、あまり上手にふれない連中もいるからです。当然のことながら、こういう作品を悠然たるテンポで重々しく演奏されたって作品の面白さは全く伝わってきません。

このカラヤンの颯爽としつつも分かりやすさと楽しさにあふれた演奏はかなりポイントが高いです。
晩年のベルリンフィルとの録音と比べると暑苦しさがないだけに、そしてウィーンフィルの素敵な響きが楽しめると言うことも加味すると、個人的にはこちらの方が好ましく思えます。

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2013-07-21:かなパパ


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