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ブルッフ:スコットランド幻想曲 作品46

Vn.ハイフェッツ サー・マルコム・サージェント指揮 ロンドン新交響楽団 1961年5月15日&22日録音



Bruch:スコットランド幻想曲 Op.46 「第1楽章」

Bruch:スコットランド幻想曲 Op.46 「第2楽章」

Bruch:スコットランド幻想曲 Op.46 「第3楽章」

Bruch:スコットランド幻想曲 Op.46 「第4楽章」


情緒纏綿たるヴァイオリンが聞ける作品

ブルッフと言えばヴァイオリン協奏曲が有名ですが、甘くてロマンティックなメロディを情緒纏綿として歌わせるブルッフの特徴がより強く出ているのはこちらのスコットランド協奏曲の方です。
この作品は連続して演奏されますが、ハッキリとした4楽章構成を持っています。しかし、ヴァイオリン協奏曲と呼ぶには全体の構成は自由であり、その結果として全体を意味ある構築物として仕上げるよりは、思う存分にヴァイオリンを歌わせることを目的としているようです。
各楽章はスコットランドの民謡が素材として用いられています。
第1楽章では、ロマンティックな「Thro' the Wood, Laddie(森を抜けながら,若者よ)」が使われ、第2楽章では「The Dusty Miller(粉まみれの粉屋)」という陽気な民謡が使われています。そして、第3楽章では再びロマンティックな民謡「I'm a' doun for lack o' Johnnie(ジョニーがいなくてがっかり)」が使われ、最終楽章は勇壮な行進曲風「Hey, now the day daws(さあ,夜が明ける)」で締めくくられます。
その合間にはバグパイプを思わせるような響きも使われていて、まさにスコットランド情緒満点の作品に仕上がっています。

クラシック音楽の世界では残念ながらこういう作品は余りたかく評価されません。確かに正面から向き合って聴くとなると音楽の密度が低いことは歴然としていて物足りなさをおぼえることは事実です。しかし、いつもいつもその様な聴き方をしているとしんどくなるのも事実で、そんな時にボンヤリとこういう音楽に耳を傾けると気持ちも心もノビノビとしてきて実に気分が良くなるのも事実です。
言ってみればちょっと贅沢なイージーリスニング曲だといえましょうか。


才ある人が努力をするととんでもないことになる

ある有名なヴァイオリンの大家がハイフェッツについてどう思うかと聞かれたときに次のように答えたそうです。
「確かに優れた演奏家だが、やつは10歳の頃から少しも進歩していない。」

これをほめ言葉と聞くか、批判と聞くかは難しいところですが、少なくとも2つのことは認めています。
その一つは、ハイフェッツは10歳にして並ぶ者のないほどの巨匠の域に達していたと言うこと(1911年の録音が残っているそうです)、もう一つは、その高いレベルを引退する(1972年のラストレコーディング)まで保ち続けていたと言うことです。
あれ?これってもしかしたら「究極のほめ言葉」・・・?

ハイフェッツと言えば、その凄さは「天才」という極めて便利な言葉で片付けられてしまいます。しかし、どれほどの天才であっても、その「才」だけに頼っていれば、その生涯にわたって高いレベルを維持することは不可能です。その事は、ハイフェッツと並び称されるホロヴィッツを比べてみれば明らかです。
確かに、ホロヴィッツも偉大な天才であったことは事実です。しかし、ホロヴィッツにあってハイフェッツになかったものは「スランプ」です。

ホロヴィッツはその生涯において深刻なスランプを二度経験しています。とりわけ二度目のスランプは深刻で、「再起不能」とまで言われて、演奏活動も長期にわたって中断しています。さらに言えば、そう言う深刻なスランプではなくても、彼は時たま「これが本当にホロヴィッツの演奏なの」と首をかしげたくなるような酷い演奏もしました。その酷い演奏が彼の初来日の時にビンゴしてしまったのは不幸なことでしたが、ホロヴィッツという演奏家にはそう言う波が常につきまとっていました。

ところが、ハイフェッツについて言えば、10才の頃から、最後の録音となった71歳の時まで、実に淡々と演奏活動を続けた人生でした。そしてその演奏は、いつの時であっても「さすがはハイフェッツ!!」と聞く人を感嘆させるほどの高いレベルを常に維持していました。
つまりはハイフェッツのコンサートには「外れ」はなかったのです。

言うまでもないことですが、このような「持続力」と「安定感」は「才」のなせる技ではありません。それはまさに「節制」という努力なくして実現するものではありません。

どこで読んだのかは忘れましたが、若い頃のハイフェッツは己の「才」に傲って「遊び」に走ったこともあるようです。しかし、そうすると、その報いは演奏に表れ、親しかった評論家にその事を厳しく指摘されたそうです。ハイフェッツが偉かったのは(まるで、子どもの頃読まされた「偉人伝」みたいな話で気が引けるのですが^^;)、その指摘を真摯に受け止めて、すぐに生活を改めたことです。
ハイフェッツは演奏会終了後のお約束とも言うべき「パーティー」には一切顔を出さないことで有名でした。また、スケジュール管理も厳密で、演奏が荒れてしまうような過密スケジュールは厳に戒めていたようです。そして、カール・フレッシュの「スケール・システム」を一日一回は必ず弾いていたという話も伝わっています。
ちなみに、あのスケールはかなり腕の立つヴァイオリニストでも全曲弾き切るには3時間はかかるそうなのですが、ハイフェッツはそれを40分程度で弾ききっていたとそうです。(ヘボだと一日かかっても終わらない・・・と言う話も・・・)

有名なエピソード。
ハイフェッツが道でとある貴婦人に「カーネギーホールに行くにはどうすればいいのですか?」と聞かれたそうな。
ハイフェッツはぶっきらぼうに答えます。

「練習!練習あるのみ」

道順を教えてほしかっただけの貴婦人は唖然としたそうですが、その「勘違い」にこそハイフェッツの「天才」とは異なるもう一つの本質が浮かび上がってきます。

厳密に聞けば、50年代の録音の方がハイフェッツらしいのでしょうが、それでも10年後のこの録音もまたハイフェッツ以外の何物でもありません。そうなると、ステレオ録音のメリットの方が大きいと言うことで、これがハイフェッツの代表盤と言うことになっています。
ヴュータンのヴァイオリン協奏曲には、協演したオケのメンバーが興奮のしすぎで帰りのバスを乗り間違い、さらにはその興奮がバスに乗っても醒めないので、終点について初めて乗り間違えたことに気づいたという逸話も残っています。

努力は才に勝るという話もありますが、才ある人が努力をするととんでもないことになるようです。

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