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ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調 作品90

カラヤン指揮 ウィーンフィル 1961年9月5日~22日録音

Brahms:Symphony No 3 in F Major, Op. 90 [1st movement]

Brahms:Symphony No 3 in F Major, Op. 90 [2nd movement]

Brahms:Symphony No 3 in F Major, Op. 90 [3rd movement]

Brahms:Symphony No 3 in F Major, Op. 90 [4th movement]


秋のシンフォニー

ユング君は長らくブラームスの音楽が苦手だったのですが、その中でもこの第3番のシンフォニーはとりわけ苦手でした。
理由は簡単で、最終楽章になると眠ってしまうのです(^^;

今でこそ曲の最後がピアニシモで消えるように終わるというのは珍しくはないですが、ブラームスの時代にあってはかなり勇気のいることだったのではないでしょうか。某有名指揮者が日本の聴衆のことを「最初と最後だけドカーンとぶちかませばブラボーがとんでくる」と言い放っていましたが、確かに最後で華々しく盛り上がると聞き手にとってはそれなりの満足感が得られることは事実です。

そういうあざとい演奏効果をねらうことが不可能なだけに、演奏する側にとっても難しい作品だといえます。
第1楽章の勇壮な音楽ゆえにか、「ブラームスの英雄交響曲」と言われたりもするのに、また、第3楽章の「男の哀愁」が滲み出すような音楽も素敵なのに、「どうして最終楽章がこうなのよ?」と、いつも疑問に思っていました。

そんなユング君がふと気がついたのが、これは「秋のシンフォニー」だという思いです。(あー、またユング君の文学的解釈が始まったとあきれている人もいるでしょうが、まあおつきあいください)

この作品、実に明るく、そして華々しく開始されます。しかし、その明るさや華々しさが音楽が進むにつれてどんどん暗くなっていきます。明から暗へ、そして内へ内へと音楽は沈潜していきます。
そういう意味で、これは春でもなく夏でもなく、また枯れ果てた冬でもなく、盛りを過ぎて滅びへと向かっていく秋の音楽だと気づかされます。
そして、最終楽章で消えゆくように奏されるのは第一楽章の第1主題です。もちろん夏の盛りの華やかさではなく、静かに回想するように全曲を締めくくります。

そう思うと、最後が華々しいフィナーレで終わったんではすべてがぶち壊しになることは容易に納得ができます。人生の苦さをいっぱいに詰め込んだシンフォニーです。


カラヤン風の音楽の作りとは相性がいい作品

基本的なコンセプトは第1番と同じで、構築性よりは横への流れを重視していることがすぐに分かります。しかし、第1番が基本的に「構築性」の音楽であるのに対して、この第3番はそこまで突っ張った音楽ではないので、結果としては第1番の時よりはうまくいっているようです。
この交響曲は第1番と同じように結構「がつん!」とはいります。しかし、音楽が進むにつれて少しずつ渋くなり(第2楽章)、そして憂愁の色をにじませ(第3楽章)、最後は静かに消え去っていくように幕を閉じます(終楽章)。
そんな作品のコンセプトとカラヤン風の音楽の作りとは相性がいいようなのです。

やはり一番の聞き所は、男のロマン、第3楽章でしょう。
こういう音楽をやらせると本当にカラヤンという男は本当に上手いです。素っ気なくもなく、甘すぎることもなく、さらりと歌っているようでいて聞き手の期待にも充分に応えています。ベートーベンの影におびえることもなく、己本来のロマン性を十分に発揮したこのシンフォニーにおける、一つの素晴らしい「解」がここにあるように思います。

そして、もう一つ付けくわえると、カルーショーによるデッカ録音の素晴らしさです。一つ一つの声部が一切の曖昧さなしに、極めてクリアに描き分けられています。ともすれば、音の塊となって「渋さ」で勝負しがちなブラームスのシンフォニーだけに、こういう録音は実に新鮮です。ネット上を散見すると、「半世紀前としては充分に鑑賞に耐えるレベル」などと言う書き込みが見えますが、それはあまりにも遠慮気味です。
最新の録音でも、これほどまでに音楽のおいしい部分をこれほどまでにもクリアにすくい上げた仕事はほとんど見ません。
ウィーンフィルが未だにウィーンフィルだった時代を偲ぶ縁としても貴重な録音です。

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