Home|
グールド(Glen Gould)|ベートーベン:ピアノソナタ第32番 ハ短調 作品111
ベートーベン:ピアノソナタ第32番 ハ短調 作品111
(P)グールド 1956年録音
Beethoven:ピアノソナタ第32番 ハ短調 作品111 「第1楽章」
Beethoven:ピアノソナタ第32番 ハ短調 作品111 「第2楽章」
時間が不足だったので・・・

最後の最後で二楽章に圧縮されたソナタを書いたのですが、周囲は3楽章についてしきりに説明を求めました。それに対するベートーベンの答えが「時間が不足だったので・・・」だそうです。
もちろんこれはベートーベン一流の冗談であることは明らかです。
変奏曲形式の極限とも言える第2楽章の音楽を聴くとき、そしてその最後の音がはるかな高みへと消えていくのを聞くとき、これに続く音楽などは存在しないことを誰もが納得できるはずです。
ピアノソナタ32番 Op.111 ハ短調
第1楽章
マエストーソーアレグロ・コン・ブリオ・エド・アッパッシオナート ハ短調 4分の4拍子 ソナタ形式
第2楽章
アダージョ・モルト・センプリーチェ・エ・カンタービレ ハ長調 16分の9拍子 変奏曲形式
まさに変奏曲形式の行き着く先を示したような音楽。主題旋律は次第にその姿を漂う霧の中に姿を没していきます。
グールドのベートーベンってこんなに素敵だったんだ!!
ゴルドベルグ変奏曲で衝撃的なデビューを果たした翌年に録音されたのが、このベートーベンの偉大なる後期の3つのソナタです。当然のことながら、「伝統」という垢というか苔というか、そう言う類のものがびっしりとまとわりついた音楽なのですが、そう言う中途半端なものを見事なまでに洗い落としてくれて、さらにピシッと仕立て直して私たちの手元に届けてくれたのがこの録音でした。
1956年の6月の半分ほどを費やして録音されたようなのですが、取り組んだ順番は作品番号とは反対の順番で、32番(作品番号111)のソナタから始められています。
おそらく、グールドは並々ならぬ決意でこの録音に臨んだのだろうと思います。
そうでなければ、この32番のソナタの第1楽章の、このとんでもない表現(速い!)はあり得ません。
当然のことながら、最初は「ギャッ!」と叫びます。
もしも叫ばなかった人がいたら、それはこの録音でこの作品を初めて聞いた人だけでしょう。
一体全体、これは何という演奏でしょうか。
最初は確かに唖然とします。しかし、聞き進んでいくうちに、その早さは決して奇をてらったものではなくて、まさにベートーベン的な音楽の奔流が全てのものを流し去っていくような爽快感に貫かれていくことに気づかされます。
ここでは、どんな細かいパッセージも(そう、装飾音符の一つでさえも)、何一つないがしろにされることはなく、この上もない正確さと丁寧さで音化されています。そして、驚くのは、そう言う奔流の中から何とも言えないファンタスティックな詩情が匂い立ってくることです。
グールドの演奏というと、とかく何か哲学的な蘊蓄で説明をしたがる人がいます。
しかし、この演奏を聴いてみて(グールドのよい聞き手とは言えない私は、恥ずかしながら、この機会のおかげで彼のベートーベンのピアノソナタを初めて聴いたのです)、彼の演奏の素晴らしさを説明するのに、そんな難しい蘊蓄は一切いらないことを確信しました。
簡単に言えば、彼の演奏の特徴は2つです。
1.めっちゃ、ピアノが上手い!!
2.何というファンタスティックな詩情あふれる音楽なんだ!!
これだけです。
これを何と乱暴な、と言われれば確かに乱暴です。
彼と同じほど上手いピアニストは何人かはいます。そして、彼と同じほど雰囲気のある音楽を醸し出すピアニストも他にいないわけではありません。
しかし、彼ほど上手くて詩情あふれる音楽を紡ぎ出せる人となると、・・・リヒテルとか・・・、・・・(^^;、・・・くらいしか思い浮かばなかったりします。(-_~-)
しかし、彼の音楽にはリヒテルなんかとは違う、洗い立てのパリッと感みたいなものがいつも素敵です。そのパリッと感は、きっとカナダというヨーロッパから遠く離れた環境が幸いしているのでしょう。
彼は、それほど苦労しなくても、音楽にまとわりついた苔をふるい落とすことができるのです。
この32番に続く、2つのソナタ、作品番号の110と109はそれほどエキセントリックではありませんが、それでも、どこか(そしてよく言われることですが)シェーンベルグの音楽に結びついていく端緒のようなものを感じさせてくれます。しかし、そんな小難しい理屈を振り回さなくても、この幻想的な音楽に身をひたしていれば、そしてそのファンタジーはヨーロッパ的な湿度から解き放たれた心地よい乾燥のもとでパリッとしているのですから、それだけで聞くものは幸せになれるというものです。
私の中のどこかにあった「グールド=エキセントリック」という誤解をあっさりと流し去ってくれた素晴らしい録音です。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
1777 Rating: 5.4/10 (238 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2026-06-01]

バルトーク:子供のために Sz.42(Bartok:For Children, Sz.42)
(P)ジェルジ・シャーンドル:1951年1951年9月12日録音(Gyorgy Sandor: Recorded on September 12, 1951)
[2026-05-30]

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調, Op.19(Prokofiev:Violin Concerto No.1 in D major, Op.19)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニッ音]1956年2月27日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos New York Philharmonic Recorded on February 27, 1956)
[2026-05-28]

ルーセル:フルート三重奏曲 ヘ長調 Op.40(Roussel:Trio for Flute, Viola and Cello in F major, Op.40)
(Cello)エティエンヌ・パスキエ (Vn)ピエール・パスキエ (Fl)ジャン・ピエール・ランパル 1954年発行(Pierre Pasquier:(Cello)Etienne Pasquier (Fl)Jean-Pierre Rampal Published in 1954)
[2026-05-26]

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ト短調 Op.63(Prokofiev:Violin Concerto No.2 in G minor, Op.63)
(Vn)ダヴィド・オイストラフ:アルチェオ・ガリエラ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1958年5月14日&19日録音(David Oistrakh:(Con)Alceo Galliera The Philharmonia Orchestra Recorded on May 14&19, 1958)
[2026-05-23]

ベートーベン:スイスの歌による6つの変奏曲 WoO 64(Beethoven:6 Variations on a Swiss Song, WoO 64)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)
[2026-05-21]

レスピーギ:イル・トラモント(Respighi:"Il Tramonto" Poem For Quartet And Voice)
バリリ四重奏団:(S)セーナ・ユリナッチ 1954年録音(Barylli Quartet:(S)Sena Jurinac Recorded on 1954)
[2026-05-18]

バルトーク:アレグロ・バルバロ Sz.49(Bartok:Allegro barbaro, Sz.49)
(P)ジェルジ・シャーンドル:1951年1951年9月12日録音(Gyorgy Sandor: Recorded on September 12, 1951)
[2026-05-16]

ケルビーニ:歌劇「アナクレオン」序曲(Cherubini:Anacreon Overture)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:コンセール・ラムルー管弦楽団 1961年1月録音(Igor Markevitch:Concerts Lamoureux Recorded on January, 1961)
[2026-05-14]

リスト:ピアノ協奏曲第2番 イ長調, S.125(Liszt:Piano Concerto No.2 in A major S.125)
(P)レナード・ペナリオ:ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン交響楽団 1963年3月12日~18日録音(Leonard Pennario:(Con)Rene Leibowit London Symphony Orchestra Recorded on March 12-18, 1963)
[2026-05-12]

イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調, Op.27-3(Eugene Ysaye:6 Sonatas for Solo Violin, Op.27-3)
(Vn)マイケル・レビン:1959年1月1日録音(Michael Rabin:Recorded on January 1, 1959)