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ビーチャム(Thomas Beecham)|ヘンデル:オラトリオ「メサイア(グーセンス編曲版)」 HWV.56
ヘンデル:オラトリオ「メサイア(グーセンス編曲版)」 HWV.56
ビーチャム指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団&合唱団 (S)ジェニファーヴィヴィアン (Ms)モニカ・シンクレール (T)ジョン・ヴィッカーズ (Bs)ジョルジョ・トッツィ 1959年録音
Handel:オラトリオ「メサイア(グーセンス編曲版)」 HWV.56 「第1部(前半)」
Handel:オラトリオ「メサイア(グーセンス編曲版)」 HWV.56 「第1部(後半)」
Handel:オラトリオ「メサイア(グーセンス編曲版)」 HWV.56 「第2部(前半)」
Handel:オラトリオ「メサイア(グーセンス編曲版)」 HWV.56 「第2部(後半)」
Handel:オラトリオ「メサイア(グーセンス編曲版)」 HWV.56 「第3部(前半)」
Handel:オラトリオ「メサイア(グーセンス編曲版)」 HWV.56 「第3部(後半)」
Handel_Messiah_Chorus_Hallelujah_Beecham_59
年末の裏定番
年末行事の定番と言えばクラシックの世界ではいうまでもなく「第9」ですが、このメサイアは「裏定番」ともいうべき存在です。毎年毎年第9ばっかりではあきるようなぁ!と言う話が出たのかどうかは知りませんが、クリスマスを中心としてアマチュアの合唱団がよく取り上げるようになっています。
このメサイアは「オラトリオ」という音楽形式なのですが、調べてみますと「宗教的道徳的内容の歌詞による叙事的な音楽作品。独唱、合唱、オーケストラなどを使用するが、舞台装置や演技を用いない点でオペラと異なる。」と書かれています。オラトリオとは、教会の祈祷室(オラトリウム)が語源となっているようで、本来は祈祷室などで宗教上の物語をわかりやすく伝えるための音楽作品だったそうです。
メサイアもそのような伝統に則って、次のような宗教的な題材を取り上げています。
第1部 救世主キリストの出現の預言と誕生
第2部 キリストの受難と死、復活
第3部 この世の終焉と最後の審判、永遠の生命
しかし、ヘンデルの時代になるとオラトリオは教会よりは大規模なオペラ劇場で演奏されるようになります。このメサイアなどはもとからその様な大規模劇場での上演を前提として作曲されており、教会で演奏されることはほとんどなかったようです。
つまり、衣に宗教はまとっていても、その実態はエンターテイメントにあったということです。実際、「メサイア」の台本を提供したチャールズ・ジェネンズは無神論者だったと言われています。
ですから、聞いてみれば分かるように、これは限りなく「オペラ」に近づいています。たとえヘンデル自身が自らが書いたハレルヤの合唱に「自分の目の前に天国の一切と、偉大な神を見たような気がする」と語ったとしても、この作品の本質は宗教音楽ではなく劇場音楽であるように想います。(こんな事を書くとクリスマスの時期にこの作品を一生懸命取り上げている教会関係者からお叱りを受けるかな・・・、それにそんな偉そうなことを書きながら楽曲のカテゴリーは宗教音楽に入れているし・・・^^;)
なお、この作品は18世紀にはいると当時のイギリス中産階級に広まった合唱運動の中で圧倒的に支持され、コヴェントガーデン劇場のオラトリオ・シリーズの締めくくりとして必ず演奏されることが習わしとして定着していきます。この風習がやがて日本にも伝わってきたのか、今日ではこのイギリスから遠く離れた極東の島国でも、年末の裏定番の地位を獲得するまでに至っているわけです。
一番始めに聞いてはいけません(^^;
少し前にボールトによるメサイアをアップしたときにこんな事を書きました。
「(ビーチャムによるメサイアを)早速アップしようかと思ったのですが、「いや、待てよ・・・」と思ってしまいました。
どう考えても、あのグーセンス編曲によるビーチャム盤はメサイアを初めて知る上では相応しい録音だとは言えません。それは、決して、つまらないというわけではなくて、あまりにも異形のメサイアであるからというのが理由です。
ビーチャムは、この作品がもともとから祝典的な性格を持った作品であることに着目して、この録音に際しては今までの常識を覆すような派手な演奏にしたいと考えました。そして、そのような演奏にすべく依頼したのが、諸般の事情で(^^;不遇を託っていたグーセンスでした。グーセンスもまた、諸般の事情で結構暇だったので、それこそ持てる力の全てをつぎ込んでド派手なメサイアに仕立て直しました。
そうして出来上がったのが、59年録音のビーチャム盤だったのです。
つまりは、グーセンス編曲によるメサイアは、いくつかの真っ当なメサイアを聞いた後に聞いてみてその面白さがより際だつという性格を持っているのです。」
ということで、同時期に録音された真っ当なメサイアの代表としてボールト盤を選んで事前にアップしたわけです。
そして、踏むべき手順も整えたと言うことで、ようやくにしてグーセンス編曲によるメサイア、ビーチャム盤をアップしたわけです。
メサイアというのは基本的には宗教音楽の仮面をかぶった祝典音楽、つまりはエンターテイメントの音楽です。こんな風に書くと異論もあるのでしょうが、しかし、この時代のエンターテイメントというのはどのジャンルにおいても「宗教」の仮面をかぶることを余儀なくされました。芸術家が真摯に「人間の問題」と向き合おうとしても、形の上では「宗教的題材」の中に押しとどめなければいけなかったのです。その事は、例えば、ミケランジェロによってシスティーナ礼拝堂に描かれた「最後の審判」等を見ればすぐに納得されるはずです。
そして、このビーチャムとグーセンスによる編曲と録音は、ヘンデルがそんな時代の制約から解き放たれて自由奔放にメサイアを書けたとしたらどんな風になっただろうというコンセプトの元に再構築したメサイアだったと言えます。ですから、そこにはショボイ古楽器などを使うという発想は微塵もなく、モダン楽器の威力をフルに発揮して徹底的に楽しいメサイアを作り上げようというコンセプトに貫かれています。
そして、そのような彼らの「やる気」が最もよく表れているのが第2部の最後を飾るハレルヤコーラスです。メサイアの中で最も有名であり、最も華やかな音楽なのですから、当然といえば当然でしょう。
いやはや、これぞ「驚天動地」のハレルヤコーラスです。
ビーチャム盤のハレルヤコーラスを
聞いてみる(^^v
ここには聞くものの心を優しくしてくれるようなボールト盤の上品さはかけらもありません。それは、例えてみれば、バブル絶頂期のジュリアナ東京を思わせるような猥雑さと不思議な熱気、そしてやけくそ気味のパワーを感じさせる音楽です。
この猥雑さを耐えられない人には「願い下げ」の音楽となるでしょう。しかし、その猥雑さを「楽しめる」人は、きっとそれなりに全曲を楽しめることだと思います。
ですから、メサイアを一度は聞いてみたいと思う人は、この録音を最初に聞いては絶対にいけません。
そんなことをすると、メサイアという作品のみならず、ヘンデルという偉大な作曲に対する大いなる誤解を招いてしまいます。
しかし、いくつかのメサイアを経験した後にこれを聴いてみれば、クラシック音楽というジャンルの奥の深さと闇の深さを感じ取ることができると思います。
ただ、個人的な感想を最後に言わせていただければ、リクエストがあったのでひさしぶりに聞いてみたのですが、おそらく私の人生においてもう一度聴き直すことはおそらくないだろうと思います。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
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- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
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よせられたコメント
2013-02-08:ろば
- 点数は1点です。
昔、フルトヴェングラーやトスカニーニなどの巨匠を特集したビデオを買ってそこではじめてビーチャムを知って好きになったことがあります。
で、いろいろディスクを買いましたけど、このグーセンス編曲のメサイアでビーチャム熱が冷めたのを改めて思い出しました。
そのあといろいろメサイアを聴きましたが、自分にはクレンペラーのものがベストです。
とにかくゴテゴテの装飾がどうにも受け付けられない。
自分とは相性が悪いディスクです。
2013-07-25:emanon
- これぞ最上のエンターティメントだ!
「ハレルヤ・コーラス」におけるシンバルの炸裂は大爆笑で、癖になりそう!
2017-11-09:benetianfish
- このグーセンス版のメサイアと言い、ハミルトン・ハーティ版の水上の音楽と言い、たまには何も考えずに楽しめる、ハリウッドのアクション映画(最近は重いのばかりで、こんな軽い娯楽映画は無くなりましたが...)みたいなクラシック音楽を聴いても、罰は当たりませんよねっ(笑)。
2021-06-10:コタロー
- 私はこの演奏を聴いて、今は亡き山本直純氏を思い出しました。昭和50年代頃だったと思うのですが、日曜日の午後に「オーケストラがやって来た」というテレビ番組がありました。ここでは、山本直純氏が実際にオケを指揮しながら、様々なクラシック音楽を面白く料理して楽しませてくれました。このグーセンスによる編曲も発想は同じところにあるのではないでしょうか。とりわけ、金管楽器と打楽器を強化することで、この曲の持つエンターテインメント性を極限まで引き出したものだといえます。その意味で、こんな奇抜な「メサイア」の演奏は二度と現れないでしょうね。
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