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ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104

ミュンシュ指揮 (Vc)ピアティゴルスキー ボストン交響楽団 1960年2月22日録音



Dvorak:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104 「第1楽章」

Dvorak:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104 「第2楽章」

Dvorak:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104 「第3楽章」


チェロ協奏曲の最高傑作であることは間違いありません。

この作品は今さら言うまでもなく、ドヴォルザークのアメリカ滞在時の作品であり、それはネイティブ・アメリカンズの音楽や黒人霊歌などに特徴的な5音音階の旋律法などによくあらわれています。しかし、それがただの異国趣味にとどまっていないのは、それらのアメリカ的な要素がドヴォルザークの故郷であるボヘミヤの音楽と見事に融合しているからです。
その事に関しては、芥川也寸志が「史上類をみない混血美人」という言葉を贈っているのですが、まさに言い得て妙です。

そして、もう一つ指摘しておく必要があるのは、そう言うアメリカ的要素やボヘミヤ的要素はあくまでも「要素」であり、それらの民謡の旋律をそのまま使うというようなことは決してしていない事です。
この作品の主題がネイティブ・アメリカンズや南部の黒人の歌謡から採られたという俗説が早い時期から囁かれていたのですが、その事はドヴォルザーク自身が友人のオスカール・ネダブルに宛てた手紙の中で明確に否定しています。そしてし、そう言う民謡の旋律をそのまま拝借しなくても、この作品にはアメリカ民謡が持つ哀愁とボヘミヤ民謡が持つスラブ的な情熱が息づいているのです。

それから、もう一つ指摘しておかなければいけないのは、それまでは頑なに2管編成を守ってきたドヴォルザークが、この作品においては控えめながらもチューバなどの低音を補強する金管楽器を追加していることです。
その事によって、この協奏曲には今までにない柔らかくて充実したハーモニーを生み出すことに成功しているのです。


  1. 第1楽章[1.Adagio]:
    ヴァイオリン協奏曲ではかなり自由なスタイルをとっていたのですが、ここでは厳格なソナタ形式を採用しています。
    序奏はなく、冒頭からクラリネットがつぶやくように第1主題を奏します。やがて、ホルンが美しい第2主題を呈示し力を強めた音楽が次第にディミヌエンドすると、独奏チェロが朗々と登場してきます。
    その後、このチェロが第1主題をカデンツァ風に展開したり、第2主題を奏したり、さらにはアルペッジョになったりと多彩な姿で音楽を発展させていきます。
    さらに展開部にはいると、今度は2倍に伸ばされた第1主題を全く異なった表情で歌い、それをカデンツァ風に展開していきます。
    再現部では第2主題が再現されるのですが、独奏チェロもそれをすぐに引き継ぎます。やがて第1主題が総奏で力強くあらわれると独奏チェロはそれを発展させた、短いコーダで音楽は閉じられます。

  2. 第2楽章[2.Adagio ma non troppo]:
    メロディーメーカーとしてのドヴォルザークの資質と歌う楽器としてのチェロの特質が見事に結びついた美しい緩徐楽章です。オーボエとファゴットが牧歌的な旋律(第1主題)を歌い出すと、それをクラリネット、そして独奏チェロが引き継いでいきます。
    中間部では一転してティンパニーを伴う激しい楽想になるのですが、独奏チェロはすぐにほの暗い第2主題を歌い出します。この主題はドヴォルザーク自身の歌曲「一人にして op.82-1 (B.157-1)」によるものです。
    やがて3本のホルンが第1主題を再現すると第3部に入り、独奏チェロがカデンツァ風に主題を変奏して、短いコーダは消えるように静かに終わります。

  3. 第3楽章[3.Finale. Allegro moderato]:
    自由なロンド形式で書かれていて、黒人霊歌の旋律とボヘミヤの民族舞曲のリズムが巧みに用いられています。
    低弦楽器の保持音の上でホルンから始まって様々な楽器によってロンド主題が受け継がれていくのですが、それを独奏チェロが完全な形で力強く奏することで登場します。
    やがて、ややテンポを遅めたまどろむような主題や、モデラートによる民謡風の主題などがロンド形式に従って登場します。
    そして、最後に第1主題が心暖まる回想という風情で思い出されるのですが、そこからティンパニーのトレモロによって急激に速度と音量を増して全曲が閉じられます。





ミュンシュ&ボストン響による合わせものを二つ聞きました。



ミュンシュという指揮者は結構わがままな部分が強くて、合わせものはあまり得意ではないというイメージがあったのですが、なかなかどうして、両方ともに立派な演奏を聴かせてくれています。
ただし、その「立派」というのは、ソリストを立てて痒いところに手が届くような行き届いた演奏をしているという意味での「立派さ」ではありません。もっとも、ミュンシュにそのようなものを求める人もいないでしょうし、期待するようなソリストもいないでしょう。

ソロ楽器の伴奏みたいな部分では「つまらんなぁ・・・」という雰囲気で演奏しているのですが、オケが主役になる部分にくると、待ってましたとばかりに力がこもるのです。もちろんミュンシュのことですから、そうやって盛り上がるオケの響きは一筆書きのような勢いに満ちていて、今時こんな風に勢いだけでオケを引っ張るような指揮者は絶滅しています。
しかし、チマチマとした精緻さばかり求めるような音楽ばかりを聞かされていると、こういう「荒っぽさ」も魅力に思えてきます。

当然のことながら、ソリストにとってはいささか迷惑な部分もあるのですが、取りあえずちゃんと合わせましたよ!と言うようなオケよりはやり甲斐はあるでしょう。

シェリングのヴァイオリンは一言で言えば「ノーブル」!!
ともすれば下品になってしまいがちなチャイコフスキーなのですが、決して曲線的になることなく男性的で凛とした佇まいを崩しません。甘くてロマンティックなものを求める人には向きませんが、辛口指向の人にはもってこいの演奏です。
また、シェリング主体で録音したような雰囲気が強くて、ヴァイオリンの響きが大きめで前に出てくるような雰囲気のサウンドデザインです。よって、ミュンシュにとっては不満でしょうが、オケは「伴奏」という位置づけの録音のように聞こえます。

それに対して、ドヴォルザークのチェロ協奏曲では、実際のコンサートで聞こえるようなバランスで録音されています。そのために、一番最初にチェロが入ってくる部分はおとなしく聞こえてしまって、なんだかつまらない感じがしてしまいます。もしかしたら、この部分を聞いただけで「つまらん」と思ってストップボタンを押してしまう人がいるかもしれません。(それって、私のことだったりして^^;)
しかし、そこで諦めずに聞き続けると、次第にピアティゴルスキーのしみじみとしたチェロの響きが次第に心に染みてきます。
ひと言で言えば、これは「大人の音楽」です。
確かに、出始めの部分でガツーン!と聞き手の耳をとらえるのはソリストとしての芸でしょうが、ピアティゴルスキーはそのような下品なことはしません。
まあ、慌てなさんな、最後まで話をじっくり聞いてくれれば、少しは俺の言いたいことも分かってくれるだろう・・・と言う風情です。そして、その言いたいことも、決して大袈裟な身振りで語られることはないのですが、実に繊細にして細やかな話しぶりです。
そして、それを支えるミュンシュのオケは、基本的にチャイコフスキーの時と変わりません。オケが主役になる部分にくると、実に嬉しそうにガツーンと鳴らしています。
ミュンシュという人は、年を取ってもそう言う子どもみたいな無邪気さを失わなかった人なんだなと感心させられます。
この、大人と子ども組み合わせみたいなドヴォルザーク、意外なほどに面白い音楽に仕上がっています。

両方ともに、今となってはかなり影の薄くなった録音ですが、ともに聞く価値は今の時代になっても失ってはいないように思います

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