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シューマン:交響曲第3番 変ホ長調  「ライン」 作品97

ボールト指揮 ロンドンフィル 1956年8月21日~24日&28,29日録音



Schumann:交響曲第3番 変ホ長調  「ライン」 作品97 「第1楽章」

Schumann:交響曲第3番 変ホ長調  「ライン」 作品97 「第2楽章」

Schumann:交響曲第3番 変ホ長調  「ライン」 作品97 「第3楽章」

Schumann:交響曲第3番 変ホ長調  「ライン」 作品97 「第4楽章」

Schumann:交響曲第3番 変ホ長調  「ライン」 作品97 「第5楽章」


祝典的な雰囲気にあふれた作品です

番号は3番ですが、作曲されたのは4曲の交響曲の中では一番最後に作曲されました。

1850年にシューマンはデュッセルドルフ市の音楽監督に就任し、ドレスデンからライン河畔にあるデュッセルドルフに居を移します。これを契機に作曲されたのがこの第3番の交響曲であるために一般に「ライン交響曲」と呼ばれますが、これはシューマン自身が与えた標題ではありません。
ただ、この作品に漂う民族的な舞曲を思わせる雰囲気がライン地方の雰囲気を彷彿させるという話もあるので(ユング君はその「ライン地方の雰囲気」と言うのがどういうものなのかは分からないのですが・・・)、それほど的はずれの標題ではないようです。

どこか内へ内へ沈み込んでいくようなシューマンの交響曲の中で、この第3番のシンフォニーだけは華やかさをふりまいてくれます。とりわけ最終楽章に響くファンファーレは祝祭的な雰囲気を盛り上げてくれます。それから、この前に置かれている第4楽章は全体の構成から見てみると、「間奏曲」のようなポジションにあることは明らかですが、実際に聞いてみるとこの楽章が一番充実した音楽のように思えます。最後に弦のトレモロにのって第1主題が壮麗な姿で復帰してくるところなどはゾクゾクしてしまいます。

こういう形式はベートーベンが確立した交響曲のお約束からは外れていることは明らかです。ベートーベンの交響曲の継承者はブラームスと言うことになっていて、その間に位置するシューマンは谷間の花みたいな扱いを受けているのですが、こういう作品を聞いてみると、確かに方向性が違うことが納得されます。


「勢い」にあふれたシューマン

評論とはあてにならないものです。そんなことは今さら言うまでもないことなのですが、このボールトの演奏に冠されたキャッチコピーは「中庸の美」だったとのことで、今さらながらそのいい加減さに驚いてしまいます。

さらにすごいのは、
「いかにもイギリス紳士であって、いわゆるドイツ的な腰の強さやロマン的な詩情に不足しがちだが、整った点で評価されてよい」(レコード芸術:1973/6、NN氏・・・3番「ライン」・4番がカップリングされたLPへの批評)
BQクラシックスからの情報。

非常に失礼な物言いになるのですが、この方にとっての「整う」という日本語の意味が私とは大きく異なるようです。もしくは、演奏そのものを全く聞かずに筆を執られたのではないのかと疑ってしまいます。

もっとも、聞くところによると、この時代の評論家先生は忙しくて、「どうせだれも聞かないだろう」と思えるようなマイナーな音源は最初の部分だけを聞いて、あとは周辺情報(指揮者=ボールト、オケ=ロンドンフィル、作品=シューマンの交響曲)をもとに適当に書き飛ばすこともあったそうな・・・。
ただし、たとえば第3番の「ライン」などは、せめて最初の部分だけでも聞いてくれていれば、「ドイツ的な腰の強さやロマン的な詩情に不足しがちだが、整った点で評価されてよい」などという言葉は絶対に出てこなかったとは思いますので、やはり「手抜き」と言われても仕方がないでしょう。

これはどうも、大変な演奏でして、初めて聞いたときは何かの編集ミスではないかと思いました。先に紹介した「BQクラシックス」さんも書いておられますが、これはもう「快速」と言うよりは「暴走」でしょう。あちこちで、オケが指揮についていけなくなっているので、速いテンポにもかかわらず妙な「モタモタ感」があるという不思議なテイストです。
第2楽章もやや早めのテンポで進んでいくのですが、続く第3、4楽想は落ち着いてきて、そして最終楽章は「快速」テンポで締めくくるという、どう考えても「整ってはいない」造形です。
しかし、聞き終わった感想はと言えば、私がこの作品に求めたい「悠然としたスケール感」は乏しくて、いささか小振りな「ライン」に仕上がっているというところでしょうか。
それと比べると、第4番もまた早めのテンポですが、こちらは「常識」の範囲内(常識って何なのよ・・・と、つっこみが入りそうですが^^;)なので、それほど異形な造形という感じはしません。しかし、どこをどうつついても「ロマン的な詩情に不足しがち」などと言う評価は出てこないほどに、濃厚な音楽に仕上がっています。

あとの第1番や第2番はこれらと比べると、この時代の特徴であるザッハリヒカイトな演奏という範疇でくくれる音楽に仕上がっています。どちらかと言えば、早めのテンポでグイグイと突き進んでいくような音楽の作り方はこの時代の一つの特徴と言えるようです。ただし、これを「中庸の美」と言うにはいささか躊躇いを感じざるを得ない「勢い」にあふれています。
第2番についてはHMVのコメント欄で「第2交響曲について、シノーポリが鋭利なメスでシューマンの脳髄に潜む狂気をえぐり出し、バーンスタインは刃渡り1m以上もある大刀でマグロの解体ショーのようなパフォーマンスを披露するのに対し、ボールトはゴム長に前垂れ、そして手には出刃包丁で鯵や鯖を三枚に下ろすが如く一見無造作に料理する。しかし、その結果表出される狂気はより以上に新鮮に映る。」と書かれておられる方がいました。
私はさすがにそこまでの深読みをすることはできませんが、聞き比べてみると、灰汁の強い3番と4番よりは、この1番と2番の方が好ましく聞くことができました。
おそらく、1番と2番に関しては、この録音でこれらの作品と初めての出会いをしても何の問題もありませんが、3番だけは絶対に出会ってはいけない演奏であることだけは確かです。

この録音は全て56年に一気にステレオで録音されています。おそらくは、シューマンの没後100年を記念して行われたプロジェクトでしょうが、未だに広く認知されているとは言い難かったこれらの交響曲を一気に世に知らしめたという功績を考えれば、これもまた後世へとすくい上げていくに値する演奏だと思います。

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