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モーツァルト:交響曲第25番 K183

オットー・クレンペラー指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1951年1月18日 録音



Mozart:交響曲第25番「第1楽章」

Mozart:交響曲第25番「第2楽章」

Mozart:交響曲第25番「第3楽章」

Mozart:交響曲第25番「第4楽章」


ト短調は宿命の調性?

モーツァルトは交響曲を何曲作曲したか?
 ナンバーは41番「ジュピター」までですから当然41曲となるわけですが、事情はそれほど簡単ではありません。なぜなら、交響曲という形式が発展途上の時期だっただけに、どこで線を引くのかが難しいのです。ディベルティメントやセレナードと題されていても、交響曲とどこか違うのか判然としないものもあります。逆に、交響曲といってもディベルティメントの範疇に放り込まれて不自然でない曲もたくさんあります。

 それなら、多楽章形式の管弦楽曲はみんな交響曲の範疇に入れてしまえとばかり、60曲をこえる作品を交響曲と認定して全集を作ったボグウッドみたいな人もいます。そういえば、この全集がリリースされたときは「これぞモーツァルトの交響曲全集の決定盤!」と多くの評論家先生達は天まで持ち上げたものですが、今はこの録音に言及する人はほとんどいません。
 評論家先生の言う新譜の決定盤はそのほとんどがこういう運命をたどります。
 これでは評論家というのはレコード会社の広報担当とほとんど同義語です。

 閑話休題。
 さて、それほどたくさんある交響曲の中で短調の曲はわずか二つしかありません。そしてともに、ト短調です。
 一つは有名な40番、そしてもう一つがこの25番です。この二つを区別するために25番の方を「小ト短調」などと言ったりします。
 40番がモーツァルト晩年の傑作の一つだとすれば、25番は青年モーツァルトの最高傑作の一つです。音楽的に素晴らしいのは言うまでもないことですが、10代の若者にしか書けないだろうなと思わせられるところに一番の魅力があります。(ちなみに、17歳の時にわずか二日で書き上げた作品だと言われています。)

 この作品は同時代に書かれた多くの交響曲の中では全く孤立した存在です。
 当時のコンサートは貴族の社交の場ですから、その様な社交の場にふさわしい明るく、軽快で爽快さのある曲が好まれていました。この思い詰めたような悲劇的感情の表出はその様なコンサートには全く不向きなだけにいったい何の目的で作曲されたのかといぶかしくなります。
 ただ、24番と25番はセットで作曲されたことは知られており、その性格は対照的なだけに、この作品をモーツァルト個人の悲劇的体験に結びつけるような解釈には疑問があります。
 特にト短調という調性に思い入れを持って聞く習慣が日本には古くからあるためかf(^^;;、とりわけそこに若きモーツァルトの内面に渦巻く芸術的危機などを想像してしまう傾向がありました。それらはあまりにも19世紀ロマン派的なバイアスがかかりすぎた見方だといわねばなりません。

 それよりは、ユング君はここに新しい表現形式を手に入れて、その可能性を窮め尽くそうと無邪気にこの短調という表現形式にじゃれついている姿を感じます。
 冒頭のシンコペーションで奏される弦楽器のユニゾンを聴くだけで、それは今までの明るいギャラントな雰囲気とは全く異なるものである事はすぐに分かります。そしてそれ以後に展開されるのは、社交の場を華やかに彩る「添え物としての音楽」ではなく、純粋な音による「悲劇的ドラマの展開」であることもすぐに了解できます。
 それはバッハのマタイなどに聞ける悲劇的で真摯な人間的感情の追求を行った音楽との類似性を感じさせられます。
 バッハは音楽と言葉を伴った形式でドラマを展開しましたが、それと同じ事をモーツァルトは音だけで挑戦したのがこの小ト短調のシンフォニーだったのではないでしょうか。

 しかし、ユング君が「無邪気に」と言ったのは、この作品でかくも素晴らしい音によるドラマの展開をさせながら、次の瞬間には何事もなかったかのように、再びもとのギャラントな様式で明るい音楽を書き続けたところが、子どもが新しいおもちゃを与えられて一時は夢中になっても、すぐに元のお気に入りのおもちゃに戻るのと似ているような気がしたからです。
 ただ、モーツァルトがすごいのは、そのちょっとした移り気でかくも素晴らしい作品を生みだしてしまうことです。

 そう考えると、モーツァルトの短調に、特にト短調という調性に特別の重みを見るのはやめた方がいいのかもしれません。それは、時々さわってみたくなるおもちゃであって、彼の本質は長調にあったように思います。そういえば、最近は少しずつ中期のギャラント様式の長調の作品を評価しなおそうという動きもあるようです。
 勿論、だからといってこの25番も含めた一連の短調の作品の評価が下がると言うわけではありませんが、一度19世紀的バイアスのかからない目でこれらの作品を見直してみる必要はあるのかもしれません。


クレンペラーのモーツァルト

モーツァルトの25番というとワルターによるすばらしい録音を思い出しますが(56年のウィーンフィルやNYO)、このクレンペラーによる演奏もそれに負けないほどにすばらしい演奏です。
これ以上はないというほどにギリギリと締め上げたモーツァルトです。愉悦感ななどというものはどこを探しても見つかりません。最初から最後まで、それこそ「真剣勝負」という言葉がぴったりの演奏です。実にクレンペラーらしい演奏だといえます。

この演奏を評価してください。

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